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変化を迎え撃つ解決策はさまざまな意見の中にこそ見つかる - 「賢人論。」第146回(中編)石井遼介氏

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株式会社ZENTech取締役の石井遼介氏による著書『心理的安全性のつくりかた』で描かれる「心理的安全性」を構成する4つの因子の中に、「新奇歓迎」という考え方がある。これは、「異能、どんと来い」と、一人ひとりの個性の輝きを見つけて承認するという考え方だ。「人と違うこと」に対する恐れや「違う価値観」に対する苦手意識を持つ人でもできる「新奇歓迎」の実践について、石井氏に秘訣を伺った。

取材・文/みんなの介護

一人ひとりに違いがあるからこそ良いアイデアが生まれる

みんなの介護 異なる意見を受け入れ難い体質の職場で、その価値観を刷新するために大切なことは何ですか?

石井 メンバー全員が同じ意見で、同じことしかできないのであれば「チーム」で仕事をする必要はないわけですよね。それは、同じことができる人がたくさんいるだけであって、チームワークではなく、ソロワークの集合であり、せっかくチームに既にあったかもしれない多様性が有効活用されていないわけです。

これまではそれでも回っていた部分はあるかもしれません。しかし、コロナ禍でも私たちが直面したように、変化が激しい時代を私たちは生きています。みんなが同じように考えるのではなく、「私はこう思う」という意見を積み重ねていくことを通じて、変化に応じられるようになります。そういった面では、想定外のトラブルがたくさん起きるような介護の現場でこそ、さまざまな意見が出される「心理的安全」な環境をつくることが大切なのではないでしょうか。

本来みんな人と違う部分を持っていると認識したうえで、それがきちんと出し合える組織・チームだということを、まずはそこにいるメンバーに知っていただくことが大事です。

みんなの介護 「部下から意見を言われることにプライドが許さない」と感じる管理職の方は、どのように考えるのが良いでしょうか?

石井 そういう人は、ついつい「私vs部下」のような考え方になってしまっています。それを、「目標vs私たち」、あるいは「問題vs私たち」と考えると、部下が反抗しているのではなくて、問題に対する別の見方や解決方法・アイデアを出してくれていることに気づけます。

自分の意見・Aさんの意見・Bさん・Cさん・Dさん…と、様々な意見がある中で「どれが一番良いか」とか、「これとこれを組み合わせると、もっと良い解決策になりそうだ」といった視点で、俯瞰的に考えていただくと良いと思います。

また、「自分の意見も、自分から見えている景色で提案する、数ある意見のうちの一つ」くらいの感覚でいると、「なぜこの部下は私に反抗するんだろう」と思わなくて済むと思います。

繰り返しになりますが、私たちが意見を闘わせているのではなく、問題解決のためや、目標に向かうために意見を出し合っているという観点を持っていただくのが大事です。

また、メンバーの言い方もあると思います。例えば、「部長が言っていることは違うと思います」といった言い方をされると、部長も「なんだ?」と敵対的に身構えてしまいます。

しかし、「その問題を解決するためには、こういう考え方はできませんか?」とか、「私が見ている利用者さんのケースでは、こういうことが起きたんです」などと、それぞれの人が持っている観点を提示する形で会議を進めると良いと思います。

ほかには、「正解はない」という前提を持っておくのも役に立ちます。もちろん、法律で決まっているため、法律が正解であるような領域もあります。しかし「利用者さんにとって良いか」は、実際には正解がない、あるいは個々の利用者さんによって異なるわけです。

多くの利用者さんに喜んでもらえるサービスであっても、それに当てはまらない方もいます。そういった方へのサービスは、正解がない前提で、「より良いものは何だろう?」という問いかけから始めると「私の意見が否定された」と捉えなくて済むと思います。

今やるべきことに集中すると「他人がどう思うか」から自由になれる

みんなの介護 なるほど。閉鎖的な人間関係の中での「派閥」に悩む方に対してはどう思われますか?

石井 派閥はない方が良いですが、「派閥をなくしましょう」というのは、一般的に難しいです。そのため、個人ができることとしては、「人がどう思っているかを気にすることは、意味がないと心底知る」ことが大事ですね。

もっと言うと、あまり「心の中のこと」を気にしても仕方がありません。相手の心の中のことが正確にわかったとしても、それを変える方法はあまりないからです。例えば、いま皆さんがわたしに「やる気を出せ!」と、心の中のことを指示されたら、すぐに従えるでしょうか?「やる気を出すぞ!」と決めて、やる気が出たら苦労はしないのではないでしょうか。

それよりも「役に立つ行動がお互いに取れているか」に焦点を当てた方が良いとお伝えしています。

例えば「あの人やる気があるのかな?」と思うような相手がいたとします。けれども、「あの人」が「実際にやる気がない」としても、必要な仕事を高いクオリティでやり切ってくれれば、別に何の問題もないわけです。

「Aさんにはこの仕事とあの仕事を、ここまでやってほしいと思っています」と真正面から投げかけてみた方が、「やる気の出し方」について悩むよりも役立つことが多いです。すると「その仕事も私に求められていたんですね、知りませんでした」という話で済むこともあります。または、「やらないといけないと思っていたんですけど、やり方を誰も教えてくれなくて…」という反応が返ってくることもあるでしょう。

人がどう思っているか、やる気の有無など「心の中のこと」は、「対処してもどうにもならない」と軽く捉えていただくことが大切です。

「利用者さんのために何か良い連携はできないか」ということにフォーカスをして考えると、「あの人は私のことを嫌いかもしれないけど、それは別として、今日はこのことを引き継ぎのときに伝えておかないと」と、やるべきことの方に意識が向きます。そして気がつくと、好かれているか嫌われているかということが、あまり気にならなくなっています。

仮に「あの人が私のことを好きになってくれないかな」と思っても、他人の心の中のことを変えるのは困難です。それならば、自分ができる行動の方にフォーカスをした方が良いはずです。例えば、「最近どう?大丈夫」と自分から聞いてみるのも、できる行動の1つでしょう。

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