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自費出版支援サイト「Blurb」のアイデアがすごい

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2005年に米国カリフォルニア州サンフランシスコに誕生した「Blurb」は自費で1冊からでも本が作れるeコマース・サイトだ。利用者は米国だけに留まらず、世界60カ国に存在し、日本からの注文に対応する。

顧客の潜在的なニーズにこたえる豊富なアイディアを次々と形にして、開設後2年で同サイトの収益は3,000万ドル(1ドル=90円換算で約27億円)に達した。2010年には、「Inc. 500 List of Fastest Growing Companies(最も速く成長している企業500)」の47位にランクインした。

以下では、自費出版を可能にするサイトが多数ある中で、国境を越えて幅広いユーザーからの支持を得ているBlurbのアイデアをいくつか探ってみよう。

自費出版の手順はシンプルな3ステップ

まず、Blurbでの自費出版の手順をざっと紹介しておこう。

  1. 本を作成するためのフリー・ソフトウェアが3つ用意されているので、そのうちから、自分が作りたい本のタイプに最も適したソフトウェアを選んでダウンロードする。

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    「Bookify」は、自分が管理しているFacebookやInstagramのページからの写真を使って、短時間で写真集を作成できる。

    「BookSmart」は、レイアウトやデザインをカスタマイズでき、本の大きさ、カバーと紙の種類も選択できる。

    「Professional」は、細部まで徹底的にこだわりたい人向け。デスクトップ・パブリッシング用のソフトウェアAdobe InDesignで作ったデータをそのままインポートできる。

  3. ダウンロードしたソフトウェアを使って本を作成・編集する。

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    ソフトウェアは直感的に操作が理解でき、使いやすいという評判だ。

    Blurb Tips and Tutorials(Blurbsのヒントとチュートリアル)」のページやブログに説明の動画や記事も用意されている。不明な点があれば、掲示板で質問もできる。

  5. 本の編集が終わったら「Order Book(本を注文)」ボタンをクリックして、発注プロセスに進む。

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    価格は本の大きさ、種類(ハードカバーまたはソフトウェアカバー)、紙の質、ページ数などによって異なる。

    最安は「ポケットサイズ(13×20cm)」「表紙も中身も白黒の2色刷り」「ソフトカバー」「20ページ以下」を選んだ場合で、1冊3.95ドル(約360円)で仕上がる。

    発注すると、Blurbが印刷と製本を行い、ほとんどの地域では、7~11日で完成した本が届く。

メインの利用目的は「写真集」作り

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日本のかつての自費出版ブームは、自叙伝や文芸集を作りたいという人たちが主に支えていたが、Blurbの場合、メインの利用目的は「写真集」作りだ。赤ちゃんの成長を写した写真や結婚式や旅行先で撮った写真を1冊の本にまとめたいという利用が目立つ。

家庭の味を子供たちに伝えるために、料理の写真を載せたレシピ本を作るという利用者も少なくない。

また、デザイナーがこれまでの実績を顧客に見せるために自分の作品をまとめて本にするといった、ビジネスのプロモーション目的の写真集も数多く作られている。

これはBlurbが「質の高い写真集を自費出版で作成できるECサイト」というコンセプトから誕生したことを反映している。

「写真」に情熱をもつ創業者

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Blurbのコンセプトを作り上げたBlurbの創業者Eileen Gittins(以下ギッテンズ、上の写真)氏は、最初の就職先はKodak社以外考えられなかったというほど、子供の頃から写真に傾倒していた。Kodak社勤務時代は、社員価格で手に入るフィルムを使って、余暇に写真をとりまくったという。

その後、ソフトウェア会社の開発部部長や2つのスタートアップのCEOを経験したが、ITバブル崩壊後の2003年に仕事を離れ、手に入った時間で、再び写真に取り組みはじめた。

まず、知り合いの起業家たちを撮影させてもらい、最初のフォトエッセイを完成させる。モデルになってくれた人たちにお礼として作品をシェアしたかったが、ウェブサイトにコンテンツをアップして「このページを見てね」では、「プレゼント」にならない。

そこで自費出版のECサイトの1つに注文して印刷・製本してもらったのだが、完成した本を開いて、写真の色の酷さにがっかりする。

この体験がもとでBlurbを起業したため、注文する人の立場に立って、書店に並んでいるプロが作った写真集と比べて遜色のない本に仕上がるように、質には最初から徹底してこだわった

その姿勢が「写真集を作るならBlurb」という評価につながり、Blurbの短期間での成長を可能にしたのだ。

「ソーシャルメディアにしまった写真をフォトブックに」が人気

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個人的にも膝を打ったのは、ソーシャルメディアと連携したフォトブック販売だ。

Blurbが実施したアンケートで「Facebookユーザーの55%はFacebookのページを遡って、古い写真を見ることはまずしない」という結果が出た。

「ふだん見なくても、想い出につながる大事な写真もあるはず。もらって嬉しかったコメントと一緒に、お気に入りの写真を一冊の本にまとめておけば、いつでも手に取ってその時の想い出を楽しめる」とギッテンズ氏は考え、Facebookページからフォトブックを作成できるサービスを2011年に導入した。

このサービスは話題を集め、すぐに人気になった。一度Facebookから本を作った人は、一定期間が経過すると、Blurbに戻って来て次の一冊を作ることが多いため、リピート顧客の獲得効果もある。

ちなみに、人気の写真共有型SNSアプリInstagramからでもフォトブックを作成できる。

顧客がつくった本のコピーをオン・デマンド印刷で販売も

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一般の自費出版系ECサイトでは、完成した本を顧客のもとに届けた時点でその取引は完了するが、Blurbでは、その後顧客が望めばBlurbのサイトでその本のコピーを販売することもできる。

顧客が自分の利益をいくらにするかを自分で設定し、Blurbはその本の通常の料金に「顧客の利益分」を上乗せして、サイトの「Bookstore」のコーナーに掲載するという仕組みだ。

例えば、1冊50ドルで本を作成した後、自分の利益を「1冊5ドル」と設定して、その本を売ることに決めたとする。Blurbはその本を「価格55ドル」としてサイトに掲載し、注文が入るとデジタル・コンテンツから印刷して、本に仕上げて注文者のもとに届け、その本を作成した顧客には5ドルを支払う。

注文が入ってから印刷して顧客に届ける「プリント・オン・デマンド」を利用したビジネスは増えてきたが、Blurbの場合、「自費出版」と「プリント・オン・デマンド」を組み合わせたところがユニークだ。

Bookstoreのページには、様々なジャンルの作品が販売されていて、「ベストセラー」コーナーもある。ほとんどの作品はプレビュー機能で、すべてまたは一部のページを確認できる。

Blurb内でのベストセラーになっているネパールの情景を写した以下の写真集『Nepal 2012 maria magdalena kwiatkiewicz』は、87.95ドル(約7900円)で販売されている。

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また、販売の対象を不特定多数ではなく、特定の人に限定することもできる。

例えば、グループで旅行に行ったときに撮影した写真をまとめて、Blurbで写真集を作り、その旅行に参加した人たちに知らせ、購入したい人にだけ買ってもらうといった利用が可能だ。

斜陽産業に、アイデアを

昔から長く存在する業界は、昔からのビジネスモデルを引きずって、なかなか大きな方向転換ができず、新しい市場にフィットさせることができず「斜陽産業」という不名誉な名前をつけられる。

出版業界も斜陽と呼ばれて久しい。

しかし、Blurbに斜陽の雰囲気は無い。デジタル媒体の普及と顧客のニーズの変化を捉え、新しい出版ビジネスのアイデアを創りだした同社のイメージはむしろ先進的だ。

ジリ貧の「斜陽」ビジネスモデルをどうにか改善するか、Blurbのようにアイデアで既存モデルを果敢に破壊するか。難しい選択だが、僕は後者を応援したい。

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