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【読書感想】どうしても頑張れない人たち~ケーキの切れない非行少年たち2

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どうしても頑張れない人たち~ケーキの切れない非行少年たち2 (新潮新書)
作者:宮口 幸治
新潮社
Amazon

Kindle版もあります。

どうしても頑張れない人たち~ケーキの切れない非行少年たち2 (新潮新書)
作者:宮口 幸治
新潮社
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「頑張る人を応援します」。世間ではそんなメッセージがよく流されるが、実は「どうしても頑張れない人たち」が一定数存在していることは、あまり知られていない。彼らはサボっているわけではない。頑張れないがゆえに、切実に支援を必要としているのだ。大ベストセラー『ケーキの切れない非行少年たち』に続き、困っている人たちを適切な支援につなげるための知識とメソッドを、児童精神科医が説く。

 著者が以前上梓した、『ケーキの切れない非行少年たち』という本には、「こんな少年たちがいるのか!」という驚きというより、「存在を認識してはいたものの、積極的に理解しようとしていなかった」ことが言語化され、目の前に突きつけられた、と感じたんですよね。

fujipon.hatenadiary.com

 しかし一番ショックだったのが、

・簡単な足し算や引き算ができない
・漢字が読めない
・簡単な図形を写せない
・短い文章すら復唱できない

 といった少年が大勢いたことでした。見る力、聞く力、見えないものを想像する力がとても弱く、そのせいで勉強が苦手というだけでなく、話を聞き間違えたり、周りの状況が読めなくて対人関係で失敗したり、イジメに遭ったりしていたのです。そして、それが非行の原因にもなっていることを知ったのです。

 この『ケーキの切れない非行少年たち2』で、著者は、そういう少年たちの存在を踏まえて、「周囲は、社会はどう接していけば良いのか?」を模索しています。
 そして、この「頑張れない子どもたち」への向き合いかたというのは、特別なものではなくて、一般的な親子関係にも応用できるものなのです。
 「こういう『自分の子どもへの接し方や言葉のかけ方っていうのは、『自分は子どもと良い関係を築けている』つもりの人ほど、読んでおくべきではないか」と僕は思ったんですよ。
 親って、自分が子どものときには、親にされてイヤだったことを、自分の子どもにもやってしまいがちなものですし。

 今の世の中って、(少なくともネット上や公の場での見解としては)「頑張らなくていいよ」って言われがちですよね。
 でも、日常生活や仕事の場では、周囲の人たちはそんなに「寛容」ではない。自分自身に面倒なことが降りかかったり、負担が増す状況でも他者に「頑張らなくていい」と言うのは難しい、というのが実感です。

fujipon.hatenablog.com

 著者は「支援が必要な人」について、こう述べています。

 では、本当に支援が必要な人たちとは、どんな人たちなのでしょうか。ずばり申し上げますと、私たちがあまり支援したくないと感じる人たちなのです。

 そういう人たちは、頑張れないために、なかなか物事を達成することができません。そのため自信がもてず”また叱られた””自分なんて駄目だ”とネガティブな思考、被害的な思考に陥っていることもあります。彼らは魅力的に見えるでしょうか。子どもの場合はもっと分かりやすいでしょう。被害的になっていると、友だちから親切に声をかけられても”またバカにしやがって”と手が出たりすることもあります。

 また大人に対しても”こんな何もできない自分でも見捨てないだろうか”との不安から、色んな不適切な行動を展開し、”試し行動”を仕掛けてきます。これらは大人にとってたいてい問題行動に映ります。嘘をつく、お金の持ち出しがある、暴言、暴力、万引き、夜間徘徊などです。こういった行動を繰り返す子どもたちを真から理解し支援しているプロの支援者も大勢おられますが、普通はやはり”厄介な子ども”に映るのではないでしょうか。

 では、概してどういった人たちが頑張れないのでしょうか。真っ先に挙げられるのは、『ケーキの切れない非行少年たち』にも書かせて頂いた、認知機能の弱さを持った人たちです。見る、聞く、想像するといった力が弱いため、いくら頑張っても入ってくる情報に歪みが生じてしまい、結果が不適切な方向に向いてしまうのです。

そうしているうちにいくら頑張ってもうまくいかず、失敗を繰り返し、次第にやっても無駄だと感じるようになり、頑張れなくなるのです。知的障害児では、失敗経験を繰り返すことで、成功への期待感を低下させ、もっと上手くできる方法はないかといった工夫を次第にしなくなってしまうという国内外の研究報告(田中道治ら)もあります。

 「本当に支援が必要なのは、私たちが、あまり支援したくないと感じる人たち」か……確かにそうなんですよね。
 自分から積極的に苦境を訴え、支援を求められる、あるいは、支援してくれるシステムがあることを知っている人たちは、サポートしてもらうことができる。
 しかしながら、自分が置かれている状況をうまく説明できない、うまく人に頼ることができない人たちは、支援の対象から外れてしまいがちなのです。
 原因が「認知機能の低下」にあったとしても、凶悪な少年犯罪をおかしてしまった子を「支援」することに抵抗感があるのも理解できます。僕だって、「まず被害者を何とかしてあげろよ」って思うから。

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