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天王寺区広報デザイナー募集で考えたこと

大阪市天王寺区が「広報デザイナー」を募集しているというのが話題になっていたので、見物に行ったらあまりにもあんまりな内容だったので、ざざっとメモしておく。

 【報道発表資料】デザインの力で、行政を変える!!~天王寺区広報デザイナーを募集します~
 1.業務内容

 以下の項目のいずれか、または両方も可。
 ・天王寺区役所が実施する事業のポスター・チラシのデザイン案作成
 ・天王寺区役所が作成するポスター・チラシ・ホームページレイアウトに対してのデザイン面でのアドバイス
 ※ デザイン案の作成・アドバイスについては、区役所での打合せのほか、電子メール・電話・ファックスによるやり取りでも可能です。

 (略)

 5.報酬

 なし
 ただし、天王寺区役所として以下の内容について実施します。
 ・「天王寺区広報デザイナー」について、区ホームページ・広報紙等で紹介します。
 ・広報デザイナーが作成したポスター等にはデザイナー作であることを明記します。
 ・ホームページで事業の周知を行う際に、ポスター等がデザイナー作であることについても同時に周知を行います。
 いろいろ突っ込みたいところですが。「デザイン」と一言でまとめられてしまっているけれど、紙媒体とウェブサイトのそれはまったく別物。ポスターやチラシにしても、DTPのみすればいいのか、ロゴやキャラクターの制作までこなさなければならないのか、その前の段階としての企画から関わる必要があるのか、まったく判然としない。

 Parsleyがサイトをざざっと見る限り、何から何まで手付かずの状態からコンセプトワークをはじめないとダメで、なおかつクライアント(区)サイドがノーアイディアっぽいから、ただ「チラシ案を作りました!」とカンプを見せても、微妙な理由をつけられて却下されそう。めんどくさいなー。まともなデザイナーならば超スジの悪い案件とみなすはず。

 それをさしひいて。コンセプトからのアドバイザー契約を含めて、全ての統括デザインを1年間見るとするならば、最低でも50~80万円ほど貰わないと割が合わない。できれば200万円くらい予算をつけて欲しいところだなー。

 それで、上記のような「業務」を無償で請け負うことが、デザイナーとしての実績になるかといえば、ほぼならないと断言できる。ちゃんとクライアントより請われて仕事をした、という事実が必要なので。

 だから、仮に学生や若手デザイナーが「PRになるから」といって1年間無償で請け負ったとしても、それが次のお仕事に結びつかず、さらに翌年にも区の「業務」を続け、いたずらに年月を重ねるという可能性が高い。

 この場合、「広報デザイナー」なのか「デザインパートナー」という言葉の問題なのではなく、無報酬でもデザインは誰でもやりたいものだ、という認識だというのがあからさますぎて、業界ドン引きというのが現実に近いと思う。行政のメディアのデザインはボランティアで行うものではないし、プロ・アマチュアに限らず採用された成果物に対しては報酬があってしかるべきもの。そういう当然のことをすっとばしているから総ツッコミを受けることになる。

 百歩譲って、学生などに機会を提供したいなら、デザイン専門学校などと提携してプロジェクトを実施すればいい。大阪府立大学にも知識情報システム学科があるのだし。なんで斜め上にいくかなぁ。予算出したくないという思惑が見えすぎだよ。

 というわけで、水谷翔太区長がFacebookで「アマチュアの方々にはPRの機会をご用意させていただき、我々としては自由な観点から行政のデザインのあり方を見つめ直す」とご発言されているのは、デザインのことをご存知ないなと思うし、デザインそれ自体を軽んじていると捉えられても仕方がない。(参照

 個人的に輪をかけてイヤだなぁ、と思ったのは、Facebookのウォールに水谷区長の支援者と思しきひとたちがこぞって擁護のコメントをつけていること。中には「真っ先に非難するのは今まで既得権益の甘い汁を吸ってた人たち」という斜め上の発言をするひとまでいて、思わず頭を抱えてしまった。

 また、この件で「報奨金を出すべき」というコメントをした下谷七香ラフコ代表はブロックされた上、発言を消されてしまったという。(参照

 まぁ、反対意見を消してなかったことにする行政の長のもと、まともなコミュニケーションのデザインができるとはとても思えない、というのが感想になるかな。

 あと、これは私見だけれど。「プロボノ」というのはある程度社会的な地位が認められ、日々の生活に支障がない程度の収入のあるひとが社会貢献の一貫として活動するものであって、まだ稼ぐ力に乏しい学生を無報酬で労働させることではないのでは、と思う。このあたり、「プロボノ」という言葉を使いたがるひとたちは意図的に混同しているように見えて不信感を買っているということを、関係者は認識した方がいいんじゃないかな。

 そんなこんなで。「デザイン」が重要だという認識があるのならば、ちゃんとお金を落として下さいというお話でした。社会貢献も「メシを食う」ことが大前提。というわけで関連書籍。

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