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結婚式場のキャンセル問題は意外と難しい

このコロナ渦で結婚式を行うことは結構、厳しいと思います。自分たちや親族はともかくそれ以外の参列者にはかなり厳しい「ご招待」になってしまいます。

 キャンセル料の支払義務があるのか、不可抗力として支払義務はないのか。
 式場側が提訴するというのはなかなかのものです。背景にはこれで取りっぱぐれては死活問題となるから、ということだそうです。

コロナで結婚式キャンセル、式場から訴えられた新郎新婦が反訴「全額209万請求は許せない」」(弁護士ドットコム)

コロナで結婚式中止、訴訟に 運営会社が見積金請求―夫婦は申込金返還で反訴・東京地裁」(時事通信2021年8月26日)

 普通は理不尽なキャンセルをされても泣き寝入りが多かったのではないかと思います。企業イメージに関わるからです。
 2020年に栃木県で大量予約、無断キャンセルをした事件がありましたが、そのような悪質なものは当然に刑事責任も負ってもらうべき場合です。

予約のすっぽかしの問題もさることながら、人間観に漂う違和感 3軒も予約しておくような男には要注意!

 最初からキャンセルが想定されているわけでなく、しかし、種々の事情でキャンセルとなった場合、挙式当日を基準にしてキャンセル料が定められているのが普通です。
 当日は100%です。
 これはその日には食材やら人材やら既に準備していてそれだけのコストがかかっていることや、その予約が入っていたことによって他の予約はとれず、当日に他のことで振り替えることも不可能になるからです。

 他方で不可抗力であればどちらの責任でもありませんから、式場側はキャンセル料を請求することはできません。

 ではコロナ渦の場合は不可抗力なのでしょうか。

 本事案では2020年6月が挙式の予定となっていました。
 4月7日に緊急事態宣言となり、そのままでは通常通りの開催が危うくなります。
 2020年の場合、国指導でかなりの行事などが取りやめになりました。裁判所もとにかく一律に期日を取り消していました。司法権まで右に倣えの異様な状況でした。

 国はキャンセル料を徴収しないようにとの指導もあり、業界側も大半はそれを受け入れていました。
 式場側は、当日、無断キャンセルされたというのが請求の理由になっていますが、4月7日以降、当事者間でどのようなやり取りがあったのかが重要になってきます。

2021年8月21日撮影

 参列者が限定されていて、遠方地から移動してくる人たちが少なければ、できなくもないという状況もありました。

 ただ、いずれにしても飲酒を伴う食事がその時間帯、ずっと続くという従来のイメージではそのまま実行することはクラスター発生の危険を考えれば不可能だったとは思います。
 4月7日の時点であれば、現実的にどのような式であれば実施することが可能だったのかということを検討することが必要でした。

 上記時事通信の記事によれば、このようなやり取りだったようです(確定ではありません)。

「夫婦は不可抗力による契約解消を同社に打診したが、同社は「キャンセル料の支払いがないと解約できない」と返答した。」

 当事者間で協議が持てなかったようです。この点については当事者間で事実関係に争いがあるようですが、いずれにしても従前のイメージでの挙式の実施は現実味がなくっていたと言えます。
 人数限定、飲酒の提供は自粛などの感染防止対策は不可欠です。

 キャンセル料の支払いがなければ解約ができないというのも疑問符です。本来、委託した側に挙式の必要がなくなれば契約は解除でき、しかし、その場合に業者側に損害があれば賠償する義務がある、それを通常は違約金という形で規定されています。

 従って、式場側の69万円の違約金が正当か否かは別途争うべきでその支払がないから当日まで引っ張ったというのであれば問題があります。
 また、式場側がコロナ渦に対応したものではなく、漫然と従前通りのものを想定していたとしたら、落ち度とも考えられます。その点で100%のキャンセル料の請求には疑問符がつきます。

 他方で予約時点である2020年2月はまだコロナ感染拡大があまり国民の間でも危機感を共有される前段階でした。3月になると感染拡大のため日本全体が動き出しましたが、それまでは自粛レベルでした。
 この時期に式場を予約したことが落ち度と言えるのかどうか、なかなか微妙な状況です。

 本来であれば当時の安倍政権はさっさと指導的立場を発揮して封じ込めに乗り出すべきだったのに、結局、傍観していただけでした。3月に学校を休校にするという愚策しか実施せず、その後の感染拡大を招いたのは安倍政権による人災でもありました。アベノマスクという最低・最悪のことしかしなかったのが安倍政権であったため、そうした風潮も相まって国民の間の自粛ムードは今ひとつのところがありました。
 4月に入ると誰もがこのままではまずいという雰囲気がようやく緊急事態宣言となりました。

 そうしたことを考えても、結局のところ、消費者にそのまま全額負担の責任を取らせるというのは非現実的です(もちろん当日までのやり取りが何よりも重要です。4月7日から6月の挙式まで打ち合わせもなく、キャンセルの申出もなかった、だから当日を迎えて100%払えというのはいくら何でも不合理、不自然な主張になります)。

 そして緊急事態宣言下あるいはコロナ渦の元で従来型の挙式自体が不可能になってきたという現実を踏まえる必要があります。

 この式場が今回、勝訴判決を得たとしても一時的な繋ぎにしかなり得ないだろうし、潜在的に顧客に対してもマイナスの発信にしかならなかったことは明らかでしょう。
 挙式当日に向けて当事者間でどのようなやり取りがあったのかが不明なため、当訴訟の適否そのものは不明ですが、あまり一般的ではないのも確かです。

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