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今こそ「平時」から「有事」へ発想転換を

感染拡大のペースこそスローダウンしているものの、昨日の段階でも新規感染者数は19,312人と、引き続き極めて深刻だ。そして、医療崩壊の危機も続いている。

医療崩壊のリスクの中で即時対応が必要なのは、厚労大臣が即刻患者受け入れを法的根拠をもって指示できる一方で全病床の5%前後しかコロナ病床に供していない国立病院や尾身分科会会長が理事長を務めるJCHO等、まだまだ余裕のある公的病院での能力に応じたコロナ患者受け入れ促進に加え、まずは「自宅療養者の急増の解決」であり、それへの対応を含めた「臨時医療施設の設置促進」だ。しかし、政府はいずれにおいても、相変わらず「平時の発想」のままだ。一刻も早く「有事の発想」に全面的に転換しなければ、国民の命を守り切れない。

私は、8月2日の「入院させる必要がある患者以外は、自宅療養を基本とする」という方針は即刻撤回し、保健所が地域医療機関等と、患者などの情報を共有し、確実に一人一人の自宅療養者を医療に繋ぐ、「公衆衛生と地域医療の一体化」を図るべきと主張してきている。

以前から指摘しているように、自宅療養の最大の問題点は、家庭内感染を拡大させながら、患者の症状管理が、医師資格のない保健所職員が電話一本で患者と繋がりながら、臨床医療として総合判断することなく、急変時などに医療に繋ぐタイミングを逸して自宅で死亡しかねない事だ。本来、感染症の基本に従えば、自宅療養は原則無くすのが本筋であり、NZ、豪州、中国などではそうしている。日本も患者数が少なかった昨年からそうしておくべきだった。

まさに、コロナ出現前の従来型感染症を前提とする「平時」の発想のままの「保健所中心主義」が引き起こす悲劇だ。それも、これだけレベルの高い医療人材やインフラがありながら、だ。厚労省通知や大臣発言で、自ら現状を「災害レベルの非常事態」と称するが、年初の状況を踏まえさえすれば、容易に備えが出来ていたはずであり、単に準備を怠ったとしか言いようがない、「人災」ではないか。

ましてや感染力等が強いデルタ株が出現した今、「有事」の発想への切り替えは不可欠だが、現実は一向にそうなっていないまま久しい。私たちは、昨年6月に自民党行革推進本部の「大規模感染症流行時の国家ガバナンス改革」提言の中で、国家の司令塔を明確にし、国の指揮命令系統を確立しつつ、「公衆衛生」と「臨床医療」の有機的一体化を提言した。つまり、保健所が上位、地域臨床医療が下位、の上下関係ではなく、日本全国の保健医療の総力を結集した闘いにより、皆で対処するしか、コロナに勝つ方法はない、ということだった。

そのような中、急増する自宅療養者に関し、総理は8月17日に、「必ず連絡を取れるようにする」と踏み込んだが、どのようにそれを実現するのか、特段の通知はその後発出されておらず、会見では「電話診察等の強化」と「酸素ステーションの体制構築」だけに触れられていただけだ。今回程度の報酬面での手当だけで問題解決になるとは到底思えない。

今回の電話診察を含むオンライン診療の報酬上の対応をみると、コロナ患者のうち自宅待機者をオンラインで診た場合、確かにこの8月16日から「二類感染症患者入院診療加算」という加算が新設され、その点数によって以前のオンライン診療に比べ、2~3倍ほど点数が引き上げられた。

しかし、平均的なクリニック等へのオンライン診療からの収入、との観点から見ると、相変わらず対面診療に比べるとその8割程度にとどまっている。これでは、「対面診療ではなく、オンラインで自宅療養者をドンドン診よう」とのインセンティブは全く利かない。ただでも通信環境整備等の手間が今はかかるオンライン診療を、このやり方では臨床医が積極的にやろう、との気持ちにさせることはない。

相変わらず「平時」からのオンライン診療への医師会等の消極姿勢が「有事」にもそのまま残った形ではないか。今は、一時的措置としてでも、対面診療よりも高い診療報酬をオンラインでのコロナ医療に関して設定し、可能な限りオンライン診療によってかかりつけ医等によって常時健康観察し、自宅療養者の命を救うべきなのに、今回の政府の措置では「有事」の発想に切り替えられないわが国政府の弱点は、何も変わっていない。

臨時医療施設に関しても、これまで後ろ向きだった厚労省までも、急遽設置に前向きに転じたが、相変わらず、地方任せのままだ。しかし、厚労省が感染症危機克服の最終責任を負う限り、臨時医療施設が必要な都道府県が設置に後ろ向きだったり、ペースがスロー過ぎる場合には、政府が自治体に代わってそうした施設を設置できるような「直接執行」の法的手当てをすべきであるところ、厚労大臣の発言を聞いている限り、「国が直接やるわけにはいかない。各自治体にお願いしている」と他人ごとのような発言の繰り返しており、違和感を禁じ得ない。相変わらず「平時」の発想だ。

現役世代でのまん延を阻止する原点は、無症状者への「検査と隔離」が基本だ。しかし、検査にしても、引き続き濃厚接触者への検査や「症状がある場合に限って抗原検査」、「陽性発生の場合には周辺へのPCR検査」が基本であり、何も変わっていない。日本の検査能力もせいぜい一日30万件程度だが、英国ではデルタ株まん延時には、特定の自治体の全人口のPCR検査を推奨するなど、検査を徹底しており、能力としても既に約100万件と聞いており、日本に人口換算すれば、わが国には200万件の能力があってもおかしくない。

事程左様に、全てが「平時」の発想のまま、ワクチンが10月までに均霑すれば、何とかなる、という姿勢に見える。しかし、集団免疫の目安が90~95%との見方が米国等の専門家で広がる中、日本でも、12歳以下の子どもだけでも全人口の1割、ワクチンを打たないと判断する方々も2割程度いるならば、政策的にワクチン接種をいくら進めても全人口の7割程度が上限であることを想定すると、ここは、感染症の基本である、「検査、隔離、治療」が確実に行われる体制を、「有事の構え」として整備を徹底するしか、国民の命を守る方法が無いように思われる。

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