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吹っ切れた尾身会長、かすむ菅首相

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首相会見に臨む尾身会長(右) 2021年7月30日 会見:Photo by Issei Kato – Pool/Getty Images

安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

Japan In-depth 編集部(内橋優斗)

【まとめ】

・尾身会長、積極的にネットメディアに出演、若者へのメッセージを発信。

・国会の委員会でバッハ会長再来日を批判するなど、歯に衣着せぬ物言い連発。

・菅総理は国民に納得感のある対策を自分の言葉で発信すべきではないか。

新型コロナウイルス感染症対策分科会尾身茂会長の発言が国民の気持ちを代弁していると感じることが多くなってきた。

今から10日程前の8月17日のこと、聞き覚えのある独特な声が聞こえてくるので何かと思ったら、なんと田村淳氏が司会しているインターネットテレビ「ABEMA Prime」に尾身会長が出演しているではないか。

政治のメッセージが国民に届いていないという認識を示していた尾身会長。こうしてネット番組に出るくらいだから、ご本人は相当な危機感をお持ちなのだろう。筆者に言わせればテレビを見てるのは主に高齢者層なのだから、若者に声が届かないのは当たり前なのだが。。。

番組冒頭尾身会長は、「若い人になかなかメッセージが伝わらないというのが去年の後半ぐらいから、いろんな人から聞いたり、自分もそう思って、ぜひこういう機会があれば、若い、これからの時代を担っていく人たちと、いろんな対話、意見交換ができればいいなと思いました」と述べた。

また、新聞・テレビが連日報道しているにもかかわらず、国民と危機感が共有できない理由について問われると、「もちろん言い方、発信の仕方が下手で改善すべきところがあったと思うが、同時に、どう言っても伝わらないということも何度もあった」としたうえで、「ジャーナリズムにもそれぞれ価値観がある」、「我々の思いとしてはここを伝えたい、しかし相手は我々と同じようには思っていないということがある。そういう部分が非常に難しいと感じた」と述べた。正直な気持ちだろう。

一方、国民への発信は政治家がすべきだとの考えも強調した。尾身会長は、「危機の状況において一番大切で、おそらく一般市民が求めているのは、私の言葉ではなく選ばれた政治家の発信だ。その言葉と行動によって、人々の協力がより得られるかどうかが重要だと思う」と述べた。国民と政府が危機感を共有できないのは、政治家の発信に問題があるとの指摘だ。

また、尾身会長は「去年の秋ごろから何度も『国と自治体のリーダーが一体感をもって市民の心に届くような発信をしていただきたい』と申し上げてきた」とも述べた。確かに、都や首都圏3県の長が政府に物申す場面はかなりあった。一体感は正直感じられない。その辺にも尾身会長の不満があるのだろう。

そうした尾身会長のフラストレーションや隔靴掻痒の思いは、至る所で見ることができる。8月25日の衆議院厚生労働委員会。新型コロナウイルスの子どもへの感染が増える中、尾身会長は、学校が再開されれば感染が拡大し、さらに医療がひっ迫するおそれがあるとして、自治体の判断で、新学期の開始時期の延期も検討すべきだという考えを示した。

尾身会長は、現在の感染状況について「新規感染者の数と医療の逼迫を少し分けて考えた方がいいと思いますけども、今、東京はお盆とか4連休が終わったこともあって、感染拡大のスピードは鈍化しています。ただし、下がる傾向は、まだ全く見えていないので、いつピークアウトするかということはまだ時期尚早だと思います。その上で、医療への逼迫、重症者の数というのは、私はしばらく大変な状況は続くと思います」と指摘した。

その上で、子どもへの感染が増加していることを踏まえ「今感染拡大のスピードは鈍化していると思いますが、また新たに学校が始まってきます。このことで、一度感染スピードが鈍化してもまた感染の拡大があって、さらに医療の逼迫ということもあり得るので、十分注意して効果的で納得のある対策を打っていく必要がある」と述べ、自治体の判断で、新学期の開始時期の延期も検討すべきだという考えを示した。

また、医療の深刻なひっ迫を招いた原因を問われたのに対し「政府の方でさらに改善していただければいいなと思うのは2つあったと思います。それは一つは、感染対策と経済活動と非常に両立が難しいですけど、時々、一定方向にメッセージが集中すればいいんですけど、それが矛盾したメッセージになったということが一つあります。もう一つは、状況の分析です。これについて私ども専門家の分析よりは、時々やや楽観的な状況分析をされたのではないかというのが、これは、危機感というのは、政府は非常に共有していたと思いますけど、そういうところが多少あった。改善すべき点はその2点があったと感じております」とも指摘した。きわめて直截な指摘だ。

さらに、尾身会長は、再来日したIOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長について「人々にテレワークを要請している中、バッハ会長のあいさつが必要ならば、なぜオンラインでできないのか。バッハ会長はなぜわざわざ来るのか。銀座も一回行ったんでしょ』と一般庶民としてそう思う」と厳しい口調で述べた。これについては「よくぞ言ってくれた」といった反応がネット上で見られた。尾身会長がリミッターを外した瞬間だった。

▲写真 IOCバッハ会長 東京2020パラリンピックの初日アルジェリアと中国の女子車いすバスケットボールグループBの試合観戦(2021年8月25日) 出典:Photo by Carmen Mandato/Getty Images

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