記事

「アメリカにできないことをやってのける」習近平がアフガン統治に前のめりな"ある理由"

1/2

アメリカ軍のアフガニスタン撤退は中国に有利に働いている。中国問題グローバル研究所所長の遠藤誉さんは「アフガニスタンにあったアメリカの傀儡政権は、中国の『一帯一路』を中断するものだった。中国がタリバン政権を支持するのは当然の帰結だろう」という――。

アフガニスタン、中国※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Oleksii Liskonih

タリバンは「傀儡政権を倒して新国家を樹立」と宣言

アフガニスタンのイスラム原理主義・反政府武装集団だったタリバンは8月15日に電撃的な勝利をおさめ、8月19日には「アフガンイスラム首長国」建国を宣言した。

102年前(=1919年)のこの日、アフガニスタンはイギリスの統治から独立を果たしており、その後毎年「独立記念日」として祝賀してきた。この日を選んで建国宣言をしたのは「外国による占領からアフガン人が独立するのだ」というメッセージを込めている。

2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロ(9・11事件)の主犯はイスラム過激主義集団アルカイダのリーダーであるウサマ・ビン・ラディンであるとして、アメリカは当時のタリバンが支配していたアフガニスタンに匿(かくま)っていると言われたビン・ラディンの引き渡しを要求した。

それを拒絶したのでアメリカがアフガニスタンを軍事攻撃してタリバン政府を崩壊させ、アメリカの言う通りに動くアフガニスタン政府を新たに設立させたのである。だから「アメリカという外国」によって統治されていたアフガン傀儡政権を倒して新国家を樹立させるので、独立記念日を選んだというわけである。

中国とロシアがアフガニスタンから撤退しないワケ

「国家」として承認されるには、まだ時間がかかるだろう。しかし、すでに世界は「アメリカの敗北と衰退」および「武力攻撃による他民族国家の支配は失敗に終わる」という事実を認識しつつある。

何よりも米兵や米大使館関係者がアフガン市民を払いのけてカブール空港から退避するさまは、「これまでアメリカに協力してきた同盟国の民を切り捨てる国家」というイメージを与え、アメリカは信用をなくしてしまった。特にタリバンから逃げたいとして飛び立つ飛行機にしがみついて落下し死亡した少年の姿は全世界に衝撃を与え、アメリカの衰退と非情を如実に表す映像として人々の目に焼き付いている。

一方、かつてはアメリカに呼応してアフガニスタンに派兵したNATOなど多くの国の駐アフガニスタン大使館が撤収に向けて慌てたのに対して、中国大使館とロシア大使館だけは微動だにしなかった。タリバンが勝利しても危害を加えられる危険性がないのをあらかじめ知っていたからだ。これはとりもなおさず、中国とロシアがいかにタリバンと水面下でつながっていたかを物語っていると言っていいだろう。

まるでタリバンの代弁者のような中国の王毅外相

中国の王毅外相は、8月16日におけるロシアのラブロフ外相やアメリカのブリンケン国務長官との電話会談をはじめとして、8月18日にはパキスタンのクレシ外相およびトルコのチャブショール外相と、8月19日にはイギリスのラーブ外相と、8月20日にはイタリアのディ・マイオ外相と……という具合に矢継ぎ早に各国の外相と電話会談を行い、アフガニスタン情勢に関して話し合っている。

もちろんタリバン側に立ち、「彼らはテロ活動と完全に縁を断つと約束しているし、安定した政権運営をスタートさせようと積極的に動いているので、応援すべきだ」という方向のメッセージを数多く投げかけている。つまり、「国家」として認め、国交を結びましょうと呼びかけているわけだ。

まるでタリバンの代弁者さながらの王毅外相のこの動きの裏には、いったいどのような中国の事情と狙 いが潜んでいるのだろうか。

「一帯一路」の最後のピースだったアフガニスタン

図表1に示す地図から分かるように、習近平政権が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」をつなぐ上で、アフガニスタンは流れを中断させるアメリカの傀儡政権だった。

アフガニスタン周辺の地図白地図に筆者が現状を書き込んで作成した。(画像提供=遠藤誉)

赤で囲んだ中央アジア5カ国は、1991年12月26日にソ連が崩壊した後、1週間の間に中国が駆け巡って国交を結んだ国々だ。石油パイプラインの提携国であると同時に、ロシアも入れた上海協力機構という安全保障の枠組みの重要構成メンバーでもある。

緑で囲んだ中東の国々は、3月31日のコラム<王毅中東歴訪の狙いは「エネルギー安全保障」と「ドル基軸崩し」>で書いた、王毅外相が歴訪した国々だ。

赤い矢印は「パキスタン回廊」から中東に抜けていく「一帯一路」の流れの一部だが、これまではアフガニスタンだけがつながっていなかった。アフガニスタンから米軍が撤退して中国寄りの政権が出来上がれば、先進諸国のヨーロッパを除いたユーラシア大陸が中国寄りの国々によって占められることが、この地図から明らかだろう。

事実、北に目を向ければ、プーチン大統領が「中露は歴史上かつてなかったほど親密だ」と言っているように、中露は仲が良い。中露に挟まれたモンゴルも親中でいられないはずがない。なんという巨大な経済圏が隙間なく出来上がってしまうことだろう。

あわせて読みたい

「習近平」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    1ヶ月の間にミス相次ぐ 朝日新聞に批判の一方、今後に期待の声

    BLOGOS編集部

    09月16日 18:21

  2. 2

    眞子さま、一時金を辞退しても超高級マンションへ 見えてくる「金主」の存在

    NEWSポストセブン

    09月16日 09:07

  3. 3

    親ガチャ大当たりのはずが…東大女子は教室で震えてた。東大卒たちに聞いた「親ガチャ」のリアル

    キャリコネニュース

    09月16日 06:02

  4. 4

    ガンプラ転売屋とのバトル続く 「Hi-νガンダム」の読み方は?とクイズを出して対抗する店舗も

    キャリコネニュース

    09月16日 12:47

  5. 5

    ファミレスでマスクなしは当たり前?世間の「普通」がわからなくなった日

    田野幸伸

    09月16日 12:15

  6. 6

    立ち位置を変える中国 共産党の本質へアイデンティティの回帰か

    ヒロ

    09月16日 12:06

  7. 7

    適切な言葉遣いは、身を助ける防具にも敵を排除する武器にもなる

    シロクマ(はてなid;p_shirokuma)

    09月16日 22:45

  8. 8

    【会見全文】野田聖子氏が総裁選出馬を表明「他候補者の政策に小さき者、弱き者を奮い立たせるものなかった」

    BLOGOS編集部

    09月16日 18:14

  9. 9

    一部のマスコミは、どうしても河野太郎氏を変人・奇人扱いしたいのかな

    早川忠孝

    09月16日 15:03

  10. 10

    菅首相はもっと評価されていい 仕事師内閣らしい仕事ぶり

    早川忠孝

    09月16日 16:20

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。