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【東京五輪総括シリーズ③】 変質した平和の祭典をどう立て直すか -×産業化・巨大化・横暴なIOC 〇ジェンダー平等・パリに期待する-21.8.26

<ここまで巨大にする必要はない>

 肥大化した五輪が問題視され、大会延期に伴い式典の簡素化も検討されたが、史上最多の33競技339種目と肥大化が進んだ。招致決定から8年の歳月をかけ、関係予算3兆円、直接的予算でも1兆6,440億円もかかっている。

 日本は野球で金メダルを取った。しかし、私は個人的には野球は五輪種目に必要ないと思う。なぜならば、選手たちにはいつも力を発揮して技量を見てもらう場が与えられているからである。つまり、プロ化してあちこちで競技が行われている種目は除いていいのではないかと考える。ゴルフ、テニス、バスケットボール、ボクシング等も必要あるまい。五輪だけは4年に1回しか国民の注目を浴びない地道なスポーツの祭典でよいのではないか。

ただ、プロレスはあるが一般のレスリングはないので・・・と、議論すればきりがない面もある。また、逆に東京が初採用した都市型スポーツのスケートボードやサーフィン、スポーツクライミング等は若者中心にストリーミング(スマートフォンと高速通信の普及で、データを受信しながら音楽や映像を再生する)の視聴や動画投稿が増えた。若者が気軽に楽しむ、学校の部活も強化合宿もないという新しいタイプのスポーツは、TV放映権に依存する商業主義に堕落した五輪を改革する風穴を開けるきっかけになるかもしれない。

<IOCの横暴さは受忍の限度を超えている>

 今回の五輪で、財政負担を開催地に押し付け、コロナ等の様々なリスクも負担しない、身勝手なIOCの振舞いが、日本国民にも世界にも明らかになった。大会の延期に伴う追加経費や減少したチケット収入の補償は、日本と都が負うことになる。ジョージアの柔道選手が観光目的で選手村から外出し、参加資格証を奪われているのに、バッハ会長は何回も訪日し、平然と銀ブラするなど我が物顔で振る舞い、あまりに傍若無人であり、日本人の常識ではとても受け入れられない。25日の厚労委員会閉会中審査で尾身茂分科会会長が、国民にテレワークをお願いするなか、なぜオンライン挨拶にしないのか、と痛烈に批判したのは日本人の気持ちを代弁している。

IOCは恒例の大会組織委員長への功労賞だけでなく、菅首相と小池都知事にも賞を贈るというが、JOCは嫌味の返礼として今回の教訓をしっかりと報告書としてIOCに突きつけるべきである。五輪憲章でIOCは「国際的な非政府の非営利団体」というが、一方的な契約で暴利をむさぼるわけのわからない存在である。今回の反省を活かさなければ、もう開催地(国)に手を挙げる都市は減る一方だろう。中くらいの都市ではとても負担できない。目ざといIOCはそれに気付いたのであろう、32年をブリスベン大会と先手を打って決めている。

<ジェンダー平等が進み、女性の参画が増え、性的マイノリティへの認知が進んだ>

 女性の参加が48.8%となり、史上最高だという。新体操など女子しか五輪種目になっていないものもあるが、男性から女性に性転換したトランスジェンダーの選手が参加したのも初めての大会として注目を浴びた。男女混合の団体戦も多くなり、男子団体、女子団体を一本化して競技種目を減らす効果もあった。今後はさらに工夫されていくだろう。

 それから、どこにもこうした記事は見受けられなかったが、東京五輪は主催地の小池東京都知事、橋本聖子大会組織委員長、丸川珠代オリパラ担当相と3人とも女性となった。五輪旗は小池知事から女性のイダルゴ・パリ市長に手渡された。まさに女性が全面に出た大会であり、女性の参画を象徴していたのである。

<薄れゆく国威発揚の五輪>

 日本のマスメディアは、例えば原発の賛否にみられるとおり、露骨にその「主張」を全面に出すようになった。それが五輪報道にもみられ、読売はいつも他紙よりも派手に日本の金メダルを報じた。中止を社説に書いた朝日は、コロナ関連に多くの紙面を割き、その他も朝日と同様に国威発揚的論調は少なかった。

 厳密に過去の五輪報道とは比較していないが、日本のメダルの数がいくつだとかの報道も少なく、各国別メダル数の表も後半になってやっと登場したぐらいだった。そのかわり最近ではすっかり定番となった世界各国と日本の都道府県別のコロナ感染者数、死亡者数の表のほうが目についた。まさに、今日の世相を反映していた。表彰式では相変わらず金メダル獲得者の国歌が流れたが、国家を背負って勝ったという雰囲気がそれほど感じられなかったのは私だけではあるまい。

スケートボード決勝で、世界ランク1位の岡本碧優選手が大技に失敗して4位とメダルに届かず涙を浮かべていたが、そこに他の選手が駆け寄り担ぎ上げて健闘をたたえた。この祝福には国家など全く存在しない、新たな若者のスポーツが誕生していたのだ。

<「多様性と調和」のスローガンだけは実現しつつある>

選手の構成も明らかに多様化した。その意味では、うつろに響いた他のスローガンと異なり、「多様性と調和」のスローガンだけは輝いた。日本も聖火最終ランナーに大坂なおみ選手、旗手に八村塁選手と開会式から変わりつつあることを強調した。そうした中で最も象徴的なのは、男子マラソンで内戦下のソマリアを離れた難民で、オランダとベルギーから出場した2人が、お互いに励まし合って銀・銅メダルを獲得したことだろう。2人は受け入れてくれた現国籍の地ばかりでなく、出身国の栄誉も担っていた。

 もともと五輪は平和の祭典である。戦争せずにスポーツで競うということになっている。だから国が根底にあるが、今後、国の位置づけがどうなっていくかを見守りたい。

<心に残る五輪となるのかが疑問>

 コロナ禍の東京五輪で日本のメダルは金27、銀14、銅17と全部で58個といずれも過去最高のメダル獲得を記録した。しかし、50年後の記憶にどれだけ残っているか気になるところである。菅首相は党首討論で、1964年の東京五輪の思い出をとうとうと語った。質問時間潰しの卑劣な行為である。「東洋の魔女」「アベベ」「ヘーシンク」が登場した。全く同じ齢の私にも鮮烈な印象が残っている。

 今回の東京五輪で、皆がこれと同等の心が踊らされる場面があっただろうか。国民の多くが1964年と同じようには熱狂することはなかったのではなかろうか。また五輪関係による経済効果は競技場の建設等はいいとして、無観客で観光や飲食業界はズタズタであり、野村総研によると1300億円縮小し、1兆6771億円だという。また、チケット収入900億円は消え、インバウンドもなく国民や都民の負担が増すだけである。 

<パリへの期待>

 3年後は100年振りのパリ五輪である。私が1991年から3年間勤務した地である。日本人と同様にお祭り好きなフランス人は、観光名所でパリを一望できるトロカデロ広場の特設会場に多くの人が集まり、東京の閉会式に合わせて、次回パリ大会への引継ぎを歓迎した。

パリは約50人の職員を東京大会組織委に送り込んでいる。フランスもパリも五輪を待ち望んでいることが手にとるようにわかる。もう既にベルサイユ宮殿やエッフェル塔まで競技場にするとかいうプランもあるという。フランスは、厳しい規制や日本国民の反対論もあったものの成功した、と評価している。粋なフランスは、いろいろと工夫をして見せ場の多い五輪にしてくれることだろう。

3年後はコロナが終息していることを願わずにいられない。その時は私も機会を見てパリに赴き、東京五輪のコンペンセーション(補償?)で是非ひとつの競技ぐらいは生で見てみたいと思っている。

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