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アフガンのタリバン政権と中国

バイデン大統領(右)・ガニ大統領(中央) ホワイトハウスにて(2021年6月25日) 
出典:Photo by Pete Marovich-Pool/Getty Images

澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)

【まとめ】

・アフガン、ガニ政権が崩壊しタリバン政権が復活。

・バイデン大統領は、米軍の撤退を予定通り実行するだろう。

・中国はアフガンに接近、しかし、米ソと同じ轍を踏む可能性も。

今年(2021年)4月15日、「バイデン大統領」は9月11日までに、アフガンから米軍を撤退させると宣言した。そして、在留米軍の撤収後、タリバン勢力が一気に勢力を盛り返した(ちなみに、パキスタンがタリバンを育てたと言っても過言ではない。パキスタンの首都イスラマバードの神学校で、一部のタリバンは学んでいる)。

8月15日、首都カブールのガニ政権が崩壊して、タリバンが実権を掌握した(1996年にタリバン政権は誕生している。だが、2001年の「9・11」後、米軍と有志連合の攻撃<アフガニスタン戦争>を受け、いったん瓦解した)。

この状況下、「バイデン大統領」は、国内外からの批判を受け、米軍のアフガンからの撤退を先延ばしする意向を示した。だが、いずれにせよ、近く米軍の同国からの完全撤退は予定通り行われるだろう。タリバン政権は欣喜雀躍しているに違いない。

さて、なぜガニ大統領を首班とする反タリバン勢力(いわゆる「北部同盟」)政権は、いとも簡単に崩壊したのか。中東情勢に詳しい登利谷正人氏はNHKのインタビューに対し、次のように答えている。

「崩壊した政権は反タリバンの軍閥が寄り集まる形で成立したもので、汚職や腐敗がはびこり、多額の援助が入っても一部の人たちが独占するような状態というのが続いていた。さらに内部の権力闘争も続いていた」ので、政権が機能不全に陥ったと考えられる。

他方、「タリバンとは何者か?なぜ復活したのか?アフガン政権崩壊の裏で何が起きたのか」(『Buzz Feed Japan』)は、以下のように分析した。

タリバンは「(1)保守的で厳格なイスラム解釈(を行い)、(2)もめ事があれば長老とイスラム法学者が協議して物事を決める、(かつ)伝統的かつ家父長制的で男性優位なパシュトゥン人農村社会の秩序と価値観を維持している」。

無論、タリバンの思想は日本や欧米をはじめとする現代的な価値観、例えば、1)個人の意思の尊重、2)信教の自由、3)男女平等とは、相容れないだろう。けれども、タリバンは、アフガンの一般民衆には受け入れられているのかもしれない。

実は、故・中村哲医師は2001年、以下のように語っていた(〈再録〉『日経ビジネス』<故・中村哲医師が語ったアフガン「恐怖政治は虚、真の支援を」>2019年12月4日付)。

「タリバンは訳が分からない狂信的集団のように言われますが、我々がアフガン国内に入ってみると全然違う。恐怖政治も言論統制もしていない。田舎を基盤とする政権で、いろいろな布告も今まであった慣習を明文化したという感じ。少なくとも農民・貧民層にはほとんど違和感はないようです」

ところで、中国はタリバンに対して如何なるアプローチを取っているのか。

アフガンが大混乱に陥る直前の7月28日、王毅・中国外相は、天津市でタリバンの幹部と会談し、アフガニスタン和平などについて意見交換を行った。中国外務省の発表によると、同外相はタリバンについて「アフガンの和平、和解、復興プロセスで、重要な役割を発揮することが見込まれる」と述べたという。

▲画像 アフガニスタン国家安全保障担当補佐官モヒブ・ハムダラー氏(左) 中国外相・王毅氏(右)(2019年1月10日) 出典:Photo by Andy Wong-Pool/Getty Images

また、今月8月19日、王毅外相は、ラーブ英外相とアフガニスタン情勢について電話会談した際、国際社会はタリバン政権に対し「圧力よりも支援を」と強調している。

翌20日、タリバンの報道官は、CCTVの取材を受け、中国について「偉大な隣国だ」とした上で、「同国はアフガニスタンの平和と和解のため建設的な役割を果たしてきた」と評価した。

中国共産党としては、タリバン政権と友好な関係を構築したいのではないか。周知の如く、新疆ウイグル自治区では、ウイグル人収容所があり、タリバンはイスラム教スンニ派である。場合によっては、タリバンが中国国内の一部のスンニ派ウイグル人と手を結び、テロによって習近平政権を脅かさないとも限らない。

また、アフガンには大量の資源(主に銅とリチウムで、一説には3兆米ドルにのぼるという)が眠る。中国共産党は、何とかアフガンの資源を手中に収めたいだろう。同時に、中東(例えば、トルクメニスタン等)と中国を結ぶアフガンの石油・天然ガスパイプライン敷設も重要課題である。北京は、是非とも、そのパイプラインを稼働させたいのではないだろうか。

更に、習近平政権としては「一帯一路」構想を実現する上で、アフガンの安定は不可欠である。もし、アフガン情勢が混迷化すると、同構想は頓挫するかもしれない。

一方、タリバン政権としても、今後、米国やEU等からの支援を得づらいので、中国との友好関係を深めたいのではないか。特に、アフガンではケシの栽培が行われている。世界のアヘンの9割はアフガン産と言われるが、そのアヘンを主に中国が買い取っているという。

ただし、よく知られているように、部族国家のアフガンでは、歴史的に、大国の英国、(旧)ソ連、米国が泥沼に嵌まっている。ひょっとすると、中国も同じ轍を踏む可能性がないとは言い切れまい。

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