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抗体医薬品の開発を後押ししたいのはわかるけど。

 先日、このようなニュースを見かけました。

リンク先を見る抗体医薬品開発へ新拠点整備 経産省、13年度予算案に26億円計上 - SankeiBiz(サンケイビズ)リンク先を見る
抗体医薬品開発へ新拠点整備 ...

ヒトの免疫機能を活用した「抗体医薬品」の開発を後押しするため、経済産業省は製薬会社や機器メーカー、大学などを集めた新拠点を整備する計画を進めている。がん細胞など標的となる病原体に直接作用することから、副作用が少ないとされる最先端の薬だが、海外メーカーの製品が大半を占めているのが現状。経産省は産官学の連携効果を生かし、5年以内をめどに新薬開発の技術確立を目指す。


ただ、国内メーカーの参入は遅れており、経産省は製造技術の向上を図るため、新拠点の整備を計画。2013年度政府予算案に26億円を計上した。


抗体は、体外からの異物を認識する働きをもつタンパク質です。抗体は、タンパク質の構造(の一部)を認識して、強く結合する性質を持っています。抗体が、標的タンパク質と結合することにより、標的タンパク質の機能を止めることができます。また、抗体によって、特定のタンパク質を持つがん細胞のみを選択的に攻撃する(正常な細胞には影響を与えない)ことも可能です。

この記事に書かれている通り、抗体医薬品は海外メーカーによるものが主流です。その原因が「抗体の製造能力の差によるもの」と経済産業省は考えたらしく、その状況を改善するために大学との連携を高めるということです。

個人的には、このやり方には疑問を感じます。国内メーカーでも、優れた抗体産生技術を持つメーカーはあるからです。

協和発酵キリン_研究開発_抗体技術リンク先を見る

よくわかる抗体医薬品|バイオのはなし|中外製薬リンク先を見る

国産の抗体医薬品が少ない理由は、日本の企業の抗体医薬の作成能力の低さ、ではありません。「日本の大手製薬会社が、抗体医薬に取り組む姿勢が乏しかった」ということが理由です、これは、「抗体医薬の可能性を読めなかった企業が多かった」ということでもあります。

今、日本が抗体医薬品の世界で、世界より前に進もうとするなら、必要なのは以下の項目です。

・抗体のターゲットとなるタンパク質(抗原)の発見。そのためには、病気の原因となるタンパク質(遺伝子)の発見が必要

・抗体の効果を高めるために、抗体をチューンナップするための方法論の研究

これらは、世界各国の基礎研究者がしのぎを削っている領域です。この領域にお金をかけることが、将来の医薬品開発に必要なシードを得るために必須であることを、皆知っているからです。

経済産業省が掲げている「抗体産生能力の向上」も大事ではあります。ただ、上記の施策でできるのは、「今でも手に入るレベルの抗体医薬品をより効率的に作れる」環境です。その環境が、企業にとってどれだけ魅力的なのか、医薬品産業を産業の主流にしたいというのが国の目標にとってふさわしいものなのか。

薬を作る立場からすると、疑問かつ歯がゆいものを感じます。

薬作りにおいては、国(大学などの研究機関)と製薬会社が、それぞれ得意な分野で能力をフルに発揮することが必要です。

大学が得意なのは、薬を作るための種(病気の原因となる遺伝子やタンパク質の解明、薬を使いやすくするための基礎技術の開発)を見つけることです。一方、製薬会社が得意なのは、その種を成長させ、実際に患者さんや医療現場で使えるものにすることです。

アメリカではNIH(アメリカ国立衛生研究所)という国の機関が、基礎研究分野(病気の原因の解明や薬剤開発に必要な技術など、薬作りの元となる研究)において、活発な研究活動および他の基礎研究機関への資金援助を行なっています。これらの基礎研究活動から、薬を作るための種(シード)がうまれ、それがベンチャー企業や大手製薬企業によって医薬品へと育てられていきます。

もちろん、日本でもこのような動きはあります。ただし、医薬品開発の世界に特化しては、このような役割分担がきちんとできていないように思えます。外から見ていると、文部科学省、厚生労働省、経済産業省のどこが何を仕切っているかさえ、よくわからないところがあります。

誰が旗を振って、いろんな機関・役所を束ねるのか。誰かが、早いこと決めないといけないとおもいます。

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