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武器輸出三原則のなし崩し的緩和は日本のあり方に重大な禍根を残す

 日本の防衛政策に根本的な変化が起きようとしています。政府は昨日、航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)として導入する最新鋭ステルス戦闘機F35Aライトニング2について、日本企業が製造に参加した場合、紛争当事国などへの兵器輸出を禁じた武器輸出三原則の例外として認める方針を固めました。

 これについて、今日の『産経新聞』は次のように書いています。
 F35の導入予定国には周辺国との軍事的緊張が続くイスラエルが含まれるが、国内防衛産業の維持・育成に不可欠だと判断した。近く官房長官談話の形で「国際紛争の助長回避という原則には抵触しない」と発表する。
……
 政府は野田佳彦政権下の23年、国際紛争回避の原則は維持しつつ、兵器の国際共同開発・生産に参加できるよう三原則を緩和し、第三国への売却も「厳格な管理」を前提に認めた。
 これを受け、日米両政府は両国以外のF35導入国にも日本製部品を提供したり、日本で在日米軍や他国の機体を修理したりすることも想定して調整を進めている。日本がF35部品の製造・修理拠点となれば防衛産業育成につながり、安全保障上の意味も大きい。

 つまり、日本製の部品を提供して生産されるF35のイスラエルなど「第三国への売却」も認めるということであり、「日本がF35部品の製造・修理拠点となれば防衛産業育成につながり、安全保障上の意味も大きい」というわけです。
 これは、実質的な武器輸出であり、三原則のなし崩し的な緩和を意味します。それは、日本のあり方に大きな禍根を残すことになるでしょう。

 第1に、憲法の理念である平和国家としてのあり方の転換に繋がります。9条改憲の下準備の一環だと言っても良いでしょう。
 アメリカを通じてイスラエルに武器技術の提供が為されれば、アラブの人々から日本はどう見られるでしょうか。イスラエルの仲間だとして、敵視される可能性がさらに高まります。
 アルジェリア人質事件における惨劇は、そのようなことを避けるべきだということを、私たちに教えたばかりではありませんか。このような行動の積み重ねが、イスラム武装勢力から狙われる蓋然性を高め、海外で活動する日本人の安全を損なうことになるのだということが分からないのでしょうか。

 第2に、このような形での兵器生産への関与や技術の提供は、武器の拡散に道を開くことになります。そのような拡散を防ぎ、軍備管理・軍縮のために努めることが憲法9条の要請であり、日本のあるべき姿ではないでしょうか。
 中東地域において、イスラム武装勢力が最新兵器で武装しているのは、武器の拡散が広範囲に及んでいるからです。その拡散に、日本も手を貸そうというのでしょうか。
 武器の生産と販売によって利益を得る「死の商人」の仲間となることを拒むことが武器輸出三原則の精神でしょう。そのようにして国際的紛争の芽を摘むこと、紛争を激化させる条件を少しでも減らすことこそ、安全保障に資する道ではないでしょうか。

 第3に、今回の例外措置が「国内防衛産業の維持・育成に不可欠」だとの「判断」から決定されたことも大きな問題です。このようにして軍需産業を育成すれば、やがては平和経済の構造転換がもたらされるかもしれません。
 かつて、アイゼンハワー大統領は退任演説において、軍産複合体の存在を指摘し、それが国家や社会に過剰な影響力を行使して議会・政府の決定に影響を与える危険性を警告しました。軍需産業の育成による戦争準備は、軍需産業のための戦争を引き起こす可能性も高めます。
 武器輸出三原則による武器生産と輸出の自制は、そのような危険性を避けるための知恵でした。先の大戦での多大な犠牲を払って手に入れたその知恵を捨て去ろうというのでしょうか。

 今回の措置に至る道が、民主党の野田政権によって準備されたという事実も重大です。それを引き継ぐ形で、今回の例外措置が実行されようとしているからです。
 この点でも、民主党は犯罪的な役割を演じたと言うべきでしょう。武器の製造と輸出に対する規制を強化するべきだったのに、逆に緩和してしまいました。
 これもまた、政権交代の意味を弱め、平和を求める人々の失望を招く大きな過ちでした。今回の総選挙での懲罰は、このような民主党の間違いに対しても向けられていたのではないでしょうか。

 武器輸出三原則の見直しは、憲法の理念である平和主義の否定であるだけでなく、経済や産業構造、外交や安全保障を含めた日本のあり方全体を揺るがす大きな政策転換を意味します。それは、これからのアジアにおいて日本がどのように生きていくのか、世界において日本はどのような位置を占めるのかという点について、あまりにも無自覚な転換であり、長期的で積極的な視点を欠いた大間違いだと言わなければなりません。

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