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- 2013年02月05日 00:00
公務員の退職手当問題 駆け込みはどっちか?
最近、「公務員の駆け込み退職」のことが話題になっている。
たとえば、「埼玉県で教職員が120人駆け込み退職」(産経新聞)といったふうだ。
これは、国家公務員の退職手当の引下げに合わせ、埼玉県はじめいくつかの県(佐賀県もそうです。)が国と同じように年度内に退職手当の引下げを実施することとしたところ、「引下げ前に辞めた場合と引下げ後に辞めた場合とで退職金に大きな違いがでる」ということで3月末日の退職を繰り上げて年度内に辞める人たちが出てきた、ということだ。
佐賀県も国と同じ1月1日に引下げを実施したので、たとえば教育委員会では140人中36人の人が繰り上げ退職を選んだ。県として、できるだけ残ってほしいという要請はしたが、生活もあること。そう無理を言うことはできなかった。
ただ、避けなければならなかったのが、早めに辞める先生が出ることで、たとえば3学期から担任の先生が変わる、といったことだ。
埼玉県と佐賀県が大きく違うのはそこだった。佐賀県は、健康上の理由で退職された一人を除いて、すべて1月からその教員を臨時任用して、3月末までは担任として、あるいは教科の先生として、最後まで仕事をしてもらうこととしている。おかげで、学校現場では混乱なくスムーズな運営ができていると聞いている。
あくまでも平均だが12月末と3月末では150万円くらい退職手当に差が出る。これだけ違うのであれば心が揺れるのもわかる。そういう中、多くの職員たちが残ってくれたことに感謝したい。
もちろん、早期退職を選んだ人もそれなりに理由があったのだと思う。
僕が言いたいことは三つだ。
一つ。佐賀県もそうだし埼玉県もなのだが、今回のような問題が起きたのは、国と合わせて1月1日あるいは年度内に引下げを実施した自治体だ。新年度、たとえば4月1日からこの引下げを実施する自治体ではこのような問題は起きない、ということだ。
もう一つ。国家公務員の退職手当を引き下げる法案が成立したのは、平成24年11月16日。これは解散の日だ。よりによって解散の日に成立させる法案だろうか。
公務員の退職手当のあり方について、これまでのままでいいと言っているのではない。「いつ成立させれば、どういう影響がどの辺に出る」ということも考慮に入れて制度設計なり法案提出をすべきだったのではないか、ということだ。何か、衆議院議員選挙の際に「国・地方あわせて公務員退職金をカットしました」と言いたいがためにあわてて成立させたのではないか、という気さえしてしまう。こちらのほうがよほど「駆け込み」ではないだろうか。
さらに一つ。今回は自治体における「駆け込み退職」が話題になっているが、では本家本元の国は何人そういう人がいるのか。
答えは「不明」。国はこの情報を出していない。
国の情報開示の仕方については、ほかにも言いたいことがある。たとえば、地方は人件費の総額を予算でも決算でも公表しているのに、国は予算ベースしか公表していないのだ。しかも、それによれば国家公務員のほうが地方公務員よりも一人あたりの人件費が高い。それなのに「地方公務員のほうが給料が高いから下げろ」といったやり方は納得できない。さらに、「職員給与のカットを前提に、その分地方交付税を減らす」という。こういうのって、ほんとにいいんだろうか。地方交付税っていうのは地方固有の財源だというのに、だ。
ただ、こういうことは地方公務員を長くやってきた自分だから、感じるのだろうか。自分のほうが世間からずれているのだろうか。
そう思って、民間企業のトップを経験したある知事に、今回のことをどう思っているのか尋ねてみた。
「ありえませんね」。彼は言い切った。
「従業員の給与を自分で決められない経営者は、そもそも経営者として問題です。っていうか、自分たちの給与を決定する権限のない経営者に従業員、ついていきますか?」
さらに彼は言葉を継いだ。
「民間企業なら公取に訴えますね。優越的地位の濫用だって。」
僕が感じていることはあながち的外れでもなさそうだった。
たとえば、「埼玉県で教職員が120人駆け込み退職」(産経新聞)といったふうだ。
これは、国家公務員の退職手当の引下げに合わせ、埼玉県はじめいくつかの県(佐賀県もそうです。)が国と同じように年度内に退職手当の引下げを実施することとしたところ、「引下げ前に辞めた場合と引下げ後に辞めた場合とで退職金に大きな違いがでる」ということで3月末日の退職を繰り上げて年度内に辞める人たちが出てきた、ということだ。
佐賀県も国と同じ1月1日に引下げを実施したので、たとえば教育委員会では140人中36人の人が繰り上げ退職を選んだ。県として、できるだけ残ってほしいという要請はしたが、生活もあること。そう無理を言うことはできなかった。
ただ、避けなければならなかったのが、早めに辞める先生が出ることで、たとえば3学期から担任の先生が変わる、といったことだ。
埼玉県と佐賀県が大きく違うのはそこだった。佐賀県は、健康上の理由で退職された一人を除いて、すべて1月からその教員を臨時任用して、3月末までは担任として、あるいは教科の先生として、最後まで仕事をしてもらうこととしている。おかげで、学校現場では混乱なくスムーズな運営ができていると聞いている。
あくまでも平均だが12月末と3月末では150万円くらい退職手当に差が出る。これだけ違うのであれば心が揺れるのもわかる。そういう中、多くの職員たちが残ってくれたことに感謝したい。
もちろん、早期退職を選んだ人もそれなりに理由があったのだと思う。
僕が言いたいことは三つだ。
一つ。佐賀県もそうだし埼玉県もなのだが、今回のような問題が起きたのは、国と合わせて1月1日あるいは年度内に引下げを実施した自治体だ。新年度、たとえば4月1日からこの引下げを実施する自治体ではこのような問題は起きない、ということだ。
もう一つ。国家公務員の退職手当を引き下げる法案が成立したのは、平成24年11月16日。これは解散の日だ。よりによって解散の日に成立させる法案だろうか。
公務員の退職手当のあり方について、これまでのままでいいと言っているのではない。「いつ成立させれば、どういう影響がどの辺に出る」ということも考慮に入れて制度設計なり法案提出をすべきだったのではないか、ということだ。何か、衆議院議員選挙の際に「国・地方あわせて公務員退職金をカットしました」と言いたいがためにあわてて成立させたのではないか、という気さえしてしまう。こちらのほうがよほど「駆け込み」ではないだろうか。
さらに一つ。今回は自治体における「駆け込み退職」が話題になっているが、では本家本元の国は何人そういう人がいるのか。
答えは「不明」。国はこの情報を出していない。
国の情報開示の仕方については、ほかにも言いたいことがある。たとえば、地方は人件費の総額を予算でも決算でも公表しているのに、国は予算ベースしか公表していないのだ。しかも、それによれば国家公務員のほうが地方公務員よりも一人あたりの人件費が高い。それなのに「地方公務員のほうが給料が高いから下げろ」といったやり方は納得できない。さらに、「職員給与のカットを前提に、その分地方交付税を減らす」という。こういうのって、ほんとにいいんだろうか。地方交付税っていうのは地方固有の財源だというのに、だ。
ただ、こういうことは地方公務員を長くやってきた自分だから、感じるのだろうか。自分のほうが世間からずれているのだろうか。
そう思って、民間企業のトップを経験したある知事に、今回のことをどう思っているのか尋ねてみた。
「ありえませんね」。彼は言い切った。
「従業員の給与を自分で決められない経営者は、そもそも経営者として問題です。っていうか、自分たちの給与を決定する権限のない経営者に従業員、ついていきますか?」
さらに彼は言葉を継いだ。
「民間企業なら公取に訴えますね。優越的地位の濫用だって。」
僕が感じていることはあながち的外れでもなさそうだった。