記事

「湧き上がる危機感がある」総裁選一番乗り 高市早苗衆議院議員

2/2

■リスクマネジメントが進まないわけ

高市氏が指摘するリスクはこれまでも指摘されてきた。しかし、その対応は必ずしも十分ではない。官邸も各省庁もやるべきことは分かっているのに、ここまで来てしまったことは、日本の行政機構のシステミックな問題なのではないか。

そう指摘すると高市氏は、「やるべきことがわかってるとも思えない」としたうえで、「確かにシステミックな問題だ。(行政機構が)縦割りであるということに限界がある。ただ内閣官房と内閣府があるのだから、リスクを先取りして対応していく指示は出せる」と述べた。

■日本が直面する危機

デジタル化に伴う電力不足への対応

次に高市氏は、「デジタル化への対応の遅れ」について懸念を示した。すなわち、「消費電力の急増に対する備えができてない」という問題だ。

文部科学省所管の国立研究開発法人は、デジタル関係だけで2030年、残り9年で今の消費電力の30倍、2050年には4000倍になるという予測を出しているという。

「あらゆるデジタル機器、部品も含めて、省電力化の研究開発というのはものすごく急がねばならない」と述べた。「特に経済安全保障上、データセンターの国内回帰を求める声が高まっている。データセンターはとても電力を使う。その立地地域は一体どうやってその消費電力を賄うのか、処方箋が見えない」と問題点を挙げた。

また、今後あらゆる産業に活用が見込まれるAIも、電力消費量も大きいことから、安定的な電力供給体制の確立と省電力化の研究に一早く着手し、投資を増やす必要がある、と述べた。

そして、電力の分野では、現実的に近いゴールとして、「小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)」と、「核融合炉」を挙げた。

「核融合炉」は、京都大学のスタートアップの「京都フュージョニアリング」が実用化の研究をしている。こうした国内の企業に積極的に投資すべきとの考え方を示した。

また次世代コンピューター「量子コンピューター」も、「国産するべきで、重要な危機管理投資であり成長投資だ」とした。

■令和の省庁再編

こうした成長戦略を進めることが出来ない理由として縦割り行政を挙げた高市氏は、省庁再編に意欲を示す。

令和の省庁再編をしたい」と述べる高市氏に具体的にどう再編するのか聞いた。

・環境エネルギー省

「エネルギー基本計画」の素案が先に経済産業省から示されたが、自民党内で議連まで作ってその必要性を訴えてきた「原子力発電所のリプレースや新増設」については一切触れられなかった。

今後、電源構成を決めていくのは資源エネルギー庁だが、再生可能エネルギー関連予算に至っては総務省にも、農林水産省にも、環境省にも、経済産業省にもあるし、金融庁も噛んでいる、と高市氏は指摘。

環境エネルギー省で環境とエネルギーを一元化してやるべきだ」と述べた。

情報通信省

高市氏は、もう一つの省庁再編構想として、「情報通信省」とその外郭として「サイバーセキュリティー庁」の設置を挙げた。

情報通信分野の振興や技術開発関係は現在、経済産業省、総務省、文部科学省がバラバラにやっている。それを一つにまとめる構想だ。

背景には、近年サイバー攻撃が激増する中、警察庁は来年にサイバーセキュリティ局を作ろうとしているが、一方、防衛省は自衛隊の中だけを守っている、といった縦割りがある。

高市氏は、民間の事業インフラや、電力会社の変電所が攻撃されてブラックアウトが起きた場合や、航空機や自動車がハッキングされた場合などを想定、「誰が分析をしてそれに対応するのか」と指摘。「サイバー空間上で反撃しなくてはいけない事態になっても、そのような権限は法的には誰にもない」と問題点を挙げた。

「サイバーセキュリティー庁」で、「情報収集や分析ができ、場合によってはアメリカがやっているように相手を特定して経済制裁を与えるなど一括して責任を持ってやる体制を整えないといけない」と述べた。

また、「セキュリティの高い製品・サービスを海外に展開できれば、危機管理投資が成長投資になる。後のメンテナンスや現地での人材育成までやれば、相当強みのある産業になる」と述べた。

安全保障

安全保障政策について高市氏は、近年の中国の軍拡に強い懸念を示した。

「中国は衛星を破壊する能力を持った。日本を無力化するのは簡単なことだ。日米の衛星を破壊して、海底ケーブルを切断すれば通信は途絶える。サイバー攻撃で変電所を攻撃すれば、ブラックアウトが起き、自衛隊は通信もできず、装備も一切使えなくなる。そこに極超音速のミサイルが飛んできたらどうなるか」と懸念を示し、「いかに先に相手国の基地を無力化するか、それを早くやった方が勝つ戦争になる」と述べた。

その上で、「ゲームチェンジャーになるのは、衛星、電磁波、サイバー攻撃、それから無人機」だと述べた。

また、「中国の極超音速ミサイルは日本の技術で作られている」ことを挙げ、スクラムジェットエンジンや耐熱素材など戦略的な研究を行っている日本の学術機関が、中国の国防七大学の技術者を研究員として迎え入れていることを問題視し、これは「間接的に日本が中国人民解放軍の兵器を強力化することに貢献していることになってしまっている」と述べた。

こうしたことを防ぐために高市氏は、「経済安全保障包括法」の整備を提唱した。すなわち、海外から入ってくる研究者を安易に受け入れずスクリーニングをするもの。人民解放軍関係者や中国共産党員ではないか、どういう領域の研究者かを、ビザを発給する時にスクリーニングをかけたり情報機関に照会をすることを可能にする法律だ。

また、今は、特許を取ると公開されてしまい、海外の軍に使われていると言う問題がある。高市氏は、特定の分野の特許は公開しない「秘密特許」にすべきだとした。

「危機管理投資も、リスクの最小化というのが私の最大のテーマで、それはうまくいけばそれは成長投資にもなる。早いうちに手をつけたい」と意欲を示した。

■総裁選

最後に総裁選出馬に必要な、推薦人20人の確保の見通しについて聞いた。

高市氏は、「8月26日に選挙管理委員会が、総裁選をやるかやらないか、やるとしたらいつか、などが決まる。それが決まらないうちから挨拶に回ったり動くというのは、選管の委員の先生方に対して失礼なこと。それはしてはいけないと思っている」と述べた。

「ただ、月刊誌に記事が出てしまった日に何人か推薦人になるからね、とメールを下さった先生方はいらっしゃった。何人かは言えないが、まだ衆議院の公認が出ていない中で、メールをくださったのは嬉しかった」と述べた。

無投票でという話も出ているが、それでは党勢も上がらないばかりか、自民党に対する有権者も批判を強めるだろう。自民党はもう少し危機感を持つべきではないかと指摘した。

高市氏は、「(危機感は)みんな持っている。嫌という程持っている」と述べたうえで「持ってはいるが、現在のところ執行部の方々が菅総理続投を明言している中で、衆議院議員はまだ誰一人公認をいただいていないので、総裁選をやれとか、私がやると手を挙げるというのは、なかなかしんどい。だから私のように失うものも何にもない議員が、気合を入れて流れを変えてやろうという気になった。あちこちからお叱りは多分あるんだろうと思うが」と述べた。

緊急事態宣言が9月12日まで延長されたが、オリンピック後の感染拡大の数字が出てくるのはこれからだ。後1カ月弱で菅政権が望みを託すワクチン接種がどれくらい進むのか、それで果たして感染拡大にストップがかかるか、予断を許さない中、9月中の衆院解散は難しくなったとの見方が強まり、自民党総裁選日程は「9月17日告示、29日投開票」の線が濃くなっている。

総裁選には安倍前首相がポスト菅の候補として名前を挙げた茂木敏充外相や加藤勝信官房長官、下村博文政調会長、岸田前政調会長に加え、岸河野太郎規制改革担当相や石破茂元幹事長、野田聖子幹事長代行らの名前も取り沙汰される。

8月22日投開票の横浜市長選挙の結果も気になる。菅首相が解散権を発動するタイミングが果たしてあるのかどうか、緊急事態宣言明けに向け、政局は一気に緊迫化してきた。

(このインタビューは、2021年8月16日に行われたものです。)

あわせて読みたい

「自民党総裁選」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    韓国で増えるコロナ新規感染者 日本との違いはワクチンか

    ニッセイ基礎研究所

    11月27日 09:38

  2. 2

    なぜ日本は苦しむのか? 目立つ「日本ダメダメ論」

    ヒロ

    11月26日 12:15

  3. 3

    フジテレビの希望退職募集は地上波の「終わりの始まり」

    内藤忍

    11月26日 11:37

  4. 4

    小池都知事が木下富美子氏の選挙応援を振り返り「どうして教えてくれなかったの、と」

    BLOGOS しらべる部

    11月26日 16:25

  5. 5

    ο(オミクロン)株は第6波になる可能性

    中村ゆきつぐ

    11月27日 09:39

  6. 6

    〝大分断〟のアメリカ社会に苦悩するホワイトハウス 党派間の対立ぶりは異常事態

    WEDGE Infinity

    11月26日 16:13

  7. 7

    小池都知事が10月22日以来の定例会見で辞任説を一蹴「いい加減なこと言うなよと」

    BLOGOS編集部

    11月26日 15:24

  8. 8

    危機感のかけらもない立民代表選 連合に依存する候補者らのお気楽さ

    田中龍作

    11月26日 09:56

  9. 9

    オウム集団の"三女派"とは?麻原三女が弁護士の指摘に反論「日本語の定義外れている」

    松本麗華

    11月26日 11:15

  10. 10

    ひさしぶりの良作なのにかわいそう…NHKが朝ドラ存続のために今すぐやるべきこと

    PRESIDENT Online

    11月27日 11:53

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。