- 2021年08月20日 11:49
「湧き上がる危機感がある」総裁選一番乗り 高市早苗衆議院議員
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安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(油井彩姫)
「編集長が聞く!」
【まとめ】
・高市早苗元総務相が自民党総裁選立候補に一番乗りした。
・「日本経済強靱化計画」と「令和の省庁再編」を打ち出す。
・他の候補者含め、緊急事態宣言明けに向け政局は一気に流動化へ。
新型コロナウイルス感染症の拡大が止まらない。緊急事態宣言が再度延長が決まるなど、事態が好転する気配はない。各メディアの内閣支持率は軒並み30%を割り込む勢いで、菅首相がいつ解散総選挙に打って出るのかが永田町最大の関心事となっている。
現時点で総裁選出馬を明言しているのは元総務大臣の高市早苗衆議院議員のみだ。出馬を決心された理由などを聞いた。
■なぜ「いの一番」に出馬表明?
まず高市氏は、「基本的には私は、国民の皆様の代わりに本会議場で国会議員にとって最も重い首班指名の1票を菅義偉総理に投じたので、任期中は全力で支えたいと思っている」としたうえで、「今、沸き上がるような危機感が私の中にあり、今すぐ手をつけなければ間に合わないと思っている政策がたくさんあるので、総裁選が実施されるようになったら、菅総裁の胸を借りてしっかりと政策論争させていただきたい」と述べた。「たくさんの問題意識を国民の皆様にも党員の皆様にもお伝えしたい。それをできれば実行したい。そんな思いで手を挙げた」。
自民党総裁の任期満了は9月30日に迫っているが、出馬を宣言する議員がまだ出ていないことについて。
「それは理由がある」と高市氏。「私も含めて衆議院議員はまだ次の選挙の公認を頂いてない。そんな中で執行部の方々は菅総理続投を明言されているので、今なかなか総裁選挙について発言するというのは困難な状況」だと分析、「膠着状態を打破してみたかった」と、立候補の決意を語り、「失うものがないので」と微笑んだ。
新型コロナについて
菅首相の支持率が低迷している背景には、明らかに新型コロナウイルス感染症拡大への対応の混乱がある。具体的にどのような問題があり、どのような対策をとっていけばいいのか、聞いた。
・ワクチン開発
日本でも、国内の大学と企業で共同研究開発をしていたが、接種開始時期に間に合わなかった。高市氏は、「国内で充分な数が調達できないのは残念なこと」と述べつつ、「医薬品開発のための研究予算が、アメリカは日本の22倍もありますので、太刀打ちできなかった。これから相当力を入れていかなければならない」と述べ、ワクチンを含む医薬品開発の研究費を増やす必要があるとの認識を示した。
・治療薬
また、現在、新型コロナウイルスの感染者に対する治療薬の確保をどうするかについても議論になっているが、高市氏は、抗体カクテル療法や、抗ウイルス薬「レムデシビル」などが国産でないことを問題視し、「海外で作っているので、調達量が読めないという問題が一点ある。もう一点は、処方できる医療機関が限られていることだ」と述べた。
現時点で、これらの治療薬は、感染症対応をしていてベッドのある病院に限られ、患者の家を訪問する医者や、一般的な開業医は治療薬の処方もできない。また、総合病院であっても感染症対応をしていない病院ではできない、と言う問題がある。ようやく厚生労働省の通知で宿泊療養施設で医師が滞在している場合はできるということになった。
こうした状況について高市氏は、「肝心なのは供給量が果たして足りるかどうかということ」とし、供給量を確保できるのであれば、「国と地方公共団体が全力をあげてホテルなど借り上げる。その場合ホテルの営業利益の損失分や風評被害は補償するべきだ」と提案した。
・パルスオキシメーター
患者の入院・ホテル療養・自宅療養を、保健所が判断する基準が血中酸素濃度。しかし、「パルスオキシメーターは全部のご家庭にあるわけではない」と高市氏は指摘。「地方創生臨時交付金で全部買い上げて各ご家庭に一つ、国産のものを配れば良い」と述べた。
・検疫体制
2016年、当時総務大臣だった高市氏は、行政評価局で検疫体制の調査を命じた。2016年は、日本の観光立国政策で、訪日外国人旅行客が急激に増えていたタイミングであり、あと4年で東京オリンピック・パラリンピックが開催されるタイミングだった。さらに、WHOがエボラ出血熱やMERS等の感染症の勧告を発していた。
高市氏は、感染症対策が今後重要になると考え、調査したところ、脆弱な点がいくつも見つかったという。
「一つは、海外から入ってきた人がどの国を経由してきたかということまではチェックしなかったということ。それから、搬送体制。つまり、感染している方にどこで待機してもらうか。当時は宿泊療養するホテルの確保も出来ていなかったし、感染症指定病院の感染拡大防止策も不十分だった」と述べた。
その後、後任の総務大臣が、閣議の場で厚生労働大臣に勧告を行った。勧告を行うと、半年後にフォローアップ、さらにその1年半後に、再フォローアップをする仕組みだが、半年後のフォローアップ時点では、厚生労働省が保健所や検疫所に通知を出したという報告に留まったという。
しかし、勧告から1年半後にはエボラ出血熱が流行し、厚労省はその対応に追われているうちに、翌年から新型コロナウイルス禍になってしまったことを高市氏は振り返り、感染症に対する「備えがものすごく大事だ」と繰り返し強調した。

・ワクチン問題が菅内閣への不満の原因
菅内閣のワクチン対策について高市氏は、「一生懸命やっているが、リスクの最小化、備えができていなかった」と述べ、感染拡大初期に、マスクや医療用ガウン、人工呼吸器の不足を招いたことを指摘した。
そのうえで、「アメリカは国防生産法があり、設備投資費用を政府が出すなどして、人工呼吸器やワクチンの増産に臨機応変に対応しているが、日本ではできない。緊急時に必需品を調達するために協力してくれた企業に対し、しっかり設備投資費用などを支援できるルールや枠組みを作っておくとか、もしくは海外の生産拠点に国内回帰してもらえるのであれば、税制措置で応援するとか、考えておかねばならない」と述べた。
・「日本経済強靱化計画」の中身
高市氏は、総裁選出馬に向けて、「日本経済強靱化計画」を打ち出している。その中の柱は、「危機管理投資」と「成長投資」だ。
高市氏は、「医療も創薬も必需品の国内生産体制も危機管理だ」と述べたうえで、「もっと心配してるのはこの夏も散々な目に遭っている自然災害だ」とした。
現在、西日本を中心に大雨が続いており、土砂災害や川の氾濫、浸水による被害が拡大してる。
高市氏は、「年々災害が激甚化している。気象庁や環境省が、55年後から79年後にかけて、風速70メートルの台風が来るとか、一時間100ミリの集中豪雨が来るとか予測している。風速70メートルに耐えられる土木建築技術は確立されていない。かなりの気候変動に耐えうる建築土木の技術の開発には、すぐに着手しなければいけない」とした。
また、特に浸水や土砂災害の危険が非常に大きいと思われるエリアには病院や高齢者施設を新たに設置することは止めるなど、都市計画全体として見直していく必要がある、と述べた。
そのうえで高市氏は、自然環境が有する多様な機能を積極的に活用して、防災・減災に活かす、いわゆる「グリーンインフラ」技術も注目されている、とし、「農地だけでなく河川流域全体や都市全体、まちづくり全体を生態系と防災減災の立場から設計し直していくべき」だと述べた。
また、こうした技術モデルは、海外に「インフラとして輸出できる」との考え方を示した。



