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バイデン氏のアフガン撤退 「敗北」は米政権の過小評価が招いたワナ

アフガン撤退を巡りバイデン政権は危機に直面(写真/共同通信社)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、アフガニスタンからの米軍撤退を巡り批判が噴出しているバイデン米大統領について。

【写真】右手の拳を上げ力強く演説するバイデン米大統領

 * * *
「タリバンが勝利」というニュースを見た時、一瞬、何かの悪い冗談かと思った。一度は政権崩壊した反政府組織タリバンが、アフガニスタンのガニ政権を倒して首都カブールを掌握、勝利宣言するほどの勢力になっていたとは知らなかったからだ。

 その名前をよく見聞きしたのは2000年前後のこと。「真のイスラム国家を樹立する」という目的で結成され、イスラム教の教えに極端に厳格で、女性の権利を制限している組織だ。2001年には、偶像崇拝禁止の規定に反しているとして世界的な仏教遺跡・バーミヤンの大仏を爆破し、アメリカ同時多発テロでは国際テロ組織アルカイダの首謀者オサマ・ビンラディンの引き渡しを拒否、世界中から批判を浴びた。だがその後、米軍を中心とした有志連合がアフガニスタンを空爆したことで組織は崩壊。それから20年が過ぎた。

 日本にいれば、アフガニスタンは地理的にも心理的にも遠い国ではないだろうか。自分から調べなければ逐一、情勢を知ることもない。テロを起こしたアルカイダも、一時は世界中を震撼させたイスラム教過激派組織イスラム国も、ほとんど報じられなくなり、世間的にも中東への関心は薄くなっていた。だから、アメリカが支援していたアフガニスタンで、タリバンが再び台頭するなど予想もしなかったのだ。

 バイデン米大統領は4月、同時多発テロから20年の節目を迎える9月11日までにアフガンからの撤退を表明、7月にはこの期限を前倒した。長い戦いで出費がかさみ、死傷者は増加。その間にトランプ政権で国は分断され、コロナ渦で疲弊する一方で中国は力を増しつつある。米国民の多くが撤退を支持し、バイデン政権もタリバンが全土を支配する可能性は低く、アフガニスタン政府が国を守れると思っていたという。

 だが、今月に入ってからタリバンは次々と州都を制圧し、わずか10日あまりで、首都カブールを制圧した。撤退する時が最も危険だと戦争体験者から聞いたことがあるが、タリバン側は絶好の機会とばかりに勢いを増したのだ。ガニ大統領は「流血の事態を避けるため」と戦うことなく国外へ逃亡、政府軍も戦おうとしなかった。

 様々なメディアが、ガニ大統領の指導力が疑問視されていたことや、実際には内政が麻痺していたことなどを伝えた。だが、バイデン政権はこれらを過小評価し、本当は危険な状態で大きな問題をはらんでいたにも関わらず、アフガニスタン政権の実態を自分たちに都合よく解釈したのだ。心理学の視点で見れば、「正常性バイアス」の罠にはまったと言える。

 アメリカが受けた衝撃と世論への影響は想像以上に大きかった。タリバンの勝利は、バイデン政権の“敗北”と言われるほどの影響を与えることとなった。ありえないと思っていたことが起きると、その衝撃は強く、影響は大きくなる。こうした事象を「ブラックスワン理論」という。

 バイデン大統領は8月16日の演説で、撤退について「正しい決断だった」と述べたが、アフガニスタンから避難しようと動き出す米軍機にしがみつき振り落とされていく人々の姿や、米軍の輸送機にすし詰め状態で座るアフガニスタン人々の姿はショッキングな光景だった。人種や人権など多様性を重んじるバイデン政権にとって、今回の一件が与える今後の影響は決して小さくないだろう。

 メディアは、バイデン政権よりタリバンの言動について詳しく報じ始めた。アフガニスタンはこれからどんな国になっていくのだろう。

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