記事

「病床があるはずなのにコロナ患者が入院できない」政府が見落としている医療体制の問題点

1/2

新型コロナウイルス拡大で、病院への救急搬送を断られるケースが増えているという。だが、この患者の「たらい回し」は、コロナ禍以前から起きていた。一橋大学経済学研究科の高久玲音准教授は「救急患者を受け入れるキャパシティがないにもかかわらず、診療報酬欲しさに急性期医療に手を出す病院が多いのも原因の一つだ」という――。

救急車 ※写真はイメージです - iStock.com/4X-image

コロナで入院するには相当な幸運が必要

新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。その結果、医療機能は逼迫しており、コロナに感染した際に入院できるのは既に相当な幸運が必要だと言われている。東京都によると、都内では「自宅療養」は2万2226人、「調整中」は1万2349人となっている(8月18日時点)。

医療現場での混乱も続いているが、第1波の頃とは明らかに異なる点がある。多くの病院の経営は順調なのだ。

突然の流行で混乱を極めた第1波では政府のコロナ対策補助金が整備されておらず、病院は軒並みかつてない減収を記録した。未知の感染症に対する医療従事者の英雄的な奮闘にもかかわらず、ボーナスを削減せざるを得ない病院も多かった。

その後、コロナ対応のための補助金が整備され、2020年度全体でも黒字の病院が増えている。全国自治体病院協議会の調査では6割の自治体病院が黒字となっており、少ない患者数にもかかわらず、例年より黒字病院が増えていることが報告されている。

通常の医療ができなくても「儲かる」からくり

筆者がとりまとめた東京都の病院を対象とした経営状況調査でも、赤字の病院はあるものの、コロナ患者の受け入れが期待されている都内の急性期病院は2020年度全体で億単位の黒字だ。多くの通常医療がキャンセルされた中での黒字は、病院に対する補助金がいかに潤沢だったかを示している。

コロナ患者の受け入れが少ない、もしくは受け入れていない病院は通常医療の縮小の結果赤字が続いているが、受け入れが可能な病院が金銭的理由で受け入れを増やせないという状況ではない。なお、急性期病院とは、急性疾患または重症患者の治療を24時間体制で行う病院のことを指し、救急患者の受け入れなどもそうした病院が担う重要な機能となっている。

黒字のカギは政府が設けた空床確保料にある。コロナ患者を診るためには、他の患者と隔離するために多くの空床を事前に準備する必要がある。空床を確保するには通常の患者の診療を停止する必要があり、そうした機会損失を補塡(ほてん)する補助金が設けられた。

政府はコロナ患者を診る体制が盤石であることを示すために、急ピッチで病床の確保を進めていた。そのため、かなり潤沢な空床確保料を設定しており、その結果として多くの通常医療がキャンセルされた上に病院の経営難が緩和された。

具体的には、ICU(集中治療室)では1床当たり30万1000円/日、HCU(高度治療室)では21万1000円/日、それ以外の病床では5万2000円/日が支給される。

この空床確保料には問題も多く、例えば、もともと稼働率の低い病院が、患者のいない病床をコロナ患者のための「空床」として申請して儲けているケースもある。

救急処置室 ※写真はイメージです - iStock.com/Akiromaru

救急患者のたらい回しが増えたワケ

多額の補助金は配られたが、残念ながら医療提供体制は改善されていない。典型的な例は、搬送困難事例の増加だ。

感染が拡大するにつれて、都市部の救急搬送機能は麻痺状態に陥っており、数多くの搬送困難事例も報告されている。日本における「救急搬送困難事案」には決まった定義があり、それは「医療機関への受け入れ照会回数4回以上」かつ「現場滞在時間30分以上」というものだ。言い換えれば、3つ以上の病院に受け入れを断られて初めて「救急搬送困難事案」となる。

どのような患者が受け入れを断られているのかというと、まず「コロナ疑い」の患者の搬送が困難になっているようだ。自宅療養中に症状が悪化した患者でも搬送段階ではPCR検査の結果が出ておらず、陽性が確定していない場合がある。そうした患者は通常の患者と同じように、コロナ対応していない病院も含めて搬送先が選定される。当然、「もしもコロナだったら……」と考える病院は受け入れを断ることになる。

一方、陽性が確定している患者の受け入れはいわゆる「重点医療機関」を中心に担われている。重点医療機関とは、新型コロナウイルス感染症患者あるいは疑い患者用の病床確保を行っている病院のことで、確保しているすべての病床で中等症の患者を積極的に受け入れることが期待されている。重点医療機関は空床確保料をもらっていることもあり、基本的にコロナ患者の受け入れを断らないことが想定されているが、実際には「直前まで診ていた一般診療の患者のベッドをすぐに開けられない」等の理由で断るケースもある。

あわせて読みたい

「医療」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    「ユニクロ=格好いい」ブランドに 英国ファッション業界で広がる人気

    小林恭子

    09月28日 11:51

  2. 2

    【店アプリ】かっぱ寿司を救いたい!マクドナルドなどの外食チェーンならどうしたか?

    後藤文俊

    09月28日 11:41

  3. 3

    オンライン授業でレポートの精度が向上 大学准教授が推測する背景とは

    BLOGOS編集部

    09月28日 11:06

  4. 4

    中国との戦略的競争を急激に進める米 新総理総裁はどう対応すべきか

    長島昭久

    09月28日 14:44

  5. 5

    麻生太郎氏が恐れる「河野家への大政奉還」 総裁選後に麻生派空中分解も

    NEWSポストセブン

    09月28日 09:09

  6. 6

    東スポが 1週間限定の〝超ゲリラ採用〟 社員は「就職して大丈夫なのか?」と自虐的

    BLOGOS しらべる部

    09月28日 17:19

  7. 7

    小室圭さん 結婚決定で開き直り?会見拒否で眞子さま単独釈明の現実味

    女性自身

    09月28日 09:22

  8. 8

    免停無免許当て逃げ・居座り都議へ二度目の辞職勧告決議(怒)

    上田令子(東京都議会議員江戸川区選出)

    09月28日 18:19

  9. 9

    iPhone12 ProMaxからiPhone13 ProMaxに買い替えた結果

    永江一石

    09月27日 14:35

  10. 10

    まだゼロコロナを目指す?行動制限の緩和に消極的な知事らに医師が苦言

    中村ゆきつぐ

    09月28日 08:14

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。