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新型コロナの(インフルエンザ並みへの)分類変更は検討に値するのか? - 田中辰雄/計量経済学

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(1)分類枠の問題

新型コロナ対策に行き詰まり感があるなか、対策の一つとして、コロナの分類を2類から5類に変更するという案がある。【注1】感染症は5段階に分類されており、2類というのはSARS、MERS、あるいは結核といった致死性の高い感染症が含まれ、入院と隔離が義務付けられる。5類は致死性の低いインフルエンザなどの枠で入院は必須ではない。

新型コロナは現在は2類に分類されているため、隔離ができる大病院でしか扱うことができず、これが医療に大きな負担をかけている。ワクチンの普及により新型コロナの死亡率は急激に低下しつつあるので、新型コロナをインフルエンザ並みの5類に下げ、普通の病院でも診られるようにすれば、医療の負担は軽減するというわけである。

たしかに、インフルエンザは毎年のように百万人単位で流行するが、それで医療崩壊することはない。医療崩壊しないのなら緊急事態宣言の必要性は薄れる。そもそもインフルエンザと同じなら、極端に恐れる必要はなく、生活を正常化させる道も開けてくる。こんなうまい話はないように思える。

しかし、この話は本当であろうか。コロナに関する医療情報は極端に振れやすく、怪しいことも多い。ある医療従事者が注目に値する発言をした場合、それが例外的な一握りの人の暴論なのか、それとも一定の支持のある検討に値する見解なのかは、専門外の人にはわからない。では、どうするか。暴論なのかどうか確かめるには、多くの専門家、すなわち多くの医療従事者の意見を聞けばよい。今回これをアンケート調査のかたちで試みたので報告する。

結論から述べると、2類から5類に分類変更するという案は、ごく一部の人の暴論ではない。多数派ではないものの、医療従事者のかなりの部分の支持を集めている案である。賛成派は3割、反対派は3割強で、反対派がやや多いものの、賛否はほぼ拮抗する。暴論がこれだけの支持を集めることはない。あれほどまでに怖さを喧伝されてきた新型コロナをインフルエンザ並みの扱いにするというのは、あまりに急激な方針転換で有り、信じられないかもしれない。しかし、この調査から見ると、分類変更は医療従事者に一定の支持があり、検討に値する案の一つのようである。

(2)分類枠変更への賛否

調査対象者は調査会社Surveroid社のモニター登録者のうち、職業分類が医療業にあたる人1764人である。サンプル収集の際には「新型コロナに関するアンケート」で募集をかけた。医療業と言っても、病院の事務職員など、医療従事者とは言えない人も入っている可能性がある。そこで、「医者」、「看護師」、「その他医療従事者」の三つのどれかに当てはまるかどうかを尋ねて、どれかにあてはまる人だけに絞った。

これによって500人が除かれ、さらに矛盾回答をしていた4人を除いて、1260人が対象者となる。内訳は、医者が64人、看護師が417人、その他医療従事者が779人である。その他医療従事者には、検査技師や薬剤師等が含まれると思われる。調査時点は2021年8月10日である。

彼らに対し、まず、2類から5類への分類変更に賛成か反対かを尋ねた。図1がその結果である。賛成が32.7%、反対が37.5%であった。驚くべきことに賛否は拮抗する。言い換えると、反対者と同じくらいの賛成者がいる。これだけ賛成する人がいれば、分類変更は極端な人の暴論ではなく、一定の支持を得た検討に値する案と見てよいであろう。

図1 インフルエンザ並みへの分類変更への賛否


医者、看護師、その他医療従事者に分けたらどうなるだろうか。図2がそれである。医者の場合、分類変更に慎重な人が増え、賛否を明らかにした人の中で、2対1の比率で賛成派は少数派になる。しかしそれでも半分は賛成である。看護師では賛成が3割で反対が4割程度、そしてその他医療従事者の場合は賛否がほぼ拮抗する。全体として分類変更は多数意見ではないものの、多数意見に迫る程度には存在している。

図2 分類変更への賛否(職務別)


インフルエンザ並みへの変更に賛成する人がかなりいるとしても、それはその医療従事者が新型コロナの実態をよく知らないからということはないだろうか。医療従事者と言っても新型コロナの患者に接していない人も多い。また、医療と言っても範囲は広く、感染症にまったく関わらない人もいるだろう。さらに感染が深刻で緊急事態宣言下にある都市部とそうではない地方では感じ方が異なるかもしれない。そこで回答者をコロナへの関わりの度合いで分けて見た。図3がその結果である。

図3の左は職場でコロナ患者を扱っていると答えた人178人に限った時、中央は感染症の専門家あるいは感染症患者をみたことがあると答えた91人に限った時、そして右は緊急事態宣言下にある東京、神奈川、千葉、埼玉、そして大阪の居住者427人に限った場合である。多少、値は変わるが大勢は変わらないことがわかる。2類から5類への分類変更に一定の支持があるのは、コロナへの関わり度合いに関わらず観察される頑健な結果である。

図3 分類変更への賛否(コロナへの関わり度別)


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