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お笑い芸人が「ゴミ清掃員」をして見つけた、働き方の「新解釈」とは?

滝沢秀一さん画像
滝沢秀和さん

コロナ禍では日本の労働事情が大きな変化を求められている。改めて自分の仕事や働き方に向き合うことになったという人も多いだろう。

西堀亮さんとのお笑いコンビ「マシンガンズ」で活動するかたわら、ゴミ清掃員として働く滝沢秀一さんに、コロナ禍ででの働き方の変化や現在の仕事への向き合い方を振り返ってもらった。(取材・文:伊藤 綾)

ゲームで遊ぶのも、仕事になるとつらい

SNSやYouTube「たきざわゴミ研究所」で発信する、ゴミ清掃・収集中の体験談で人気を博し、食品ロス問題などの提言もしてきた滝沢さん。今年6月には、労働観をまとめたエッセイ『ゴミ清掃芸人の働き方解釈』(インターナショナル新書)を出版した。

「若手の頃からいろんなバイトで食い繋いできたんですが、そもそも芸人として食べていきたい気持ちが第一にあるので、基本的にはずっとイヤイヤ働いてきました。9年前に妻が妊娠し、出産費用や定収入を得るためにゴミ清掃員として働き始めても、本業はお笑いという意識が強くて、最初の3年ほどはずっと嫌でした。でも、そうやって働くことの意味を長年考え続けてきた結果、『働くこと』は、もう避けては通れない、僕の大きな表現テーマみたいになっちゃっています」

コロナ禍は、お笑い芸人の仕事にも、ゴミ清掃人の仕事にも、大きな変化をもたらした。たとえば、ただでさえゴミの量が増える春の引っ越しシーズン。2020年は、外出自粛や片付けブームのせいで、例年の2倍近いゴミが集積所に出されたという。

大量のゴミの山と格闘するはめになった滝沢さん。「あまりの重労働と新型コロナウイルスのストレスで、『ロボットになりたい』と本気で願った」と振り返る。滝沢さんがたどり着いたのは、自分の働き方を自分で解釈するという境地だ。

「例えば普段遊んでいるゲームでも、それが仕事になったら、多くの人は苦痛に感じると思うんです。やりたい時に自由にやれるから楽しいので、『1万円やるから明日までにここまでクリアしておけ』って感じだと楽しめない。でも、これを逆にしたらどうでしょう? 働き方を解釈し直せば、今よりもラクにやりがいを持って働けるようになるかもしれない。今年6月に出した本は、過去の僕みたいにイヤイヤ働いている人たちに向けて、ヒントになればと思って書きました」

「ゴミ清掃員にはいい人が多い」

滝沢さん画像

「ゴミ清掃員って少し特殊な給与体系で、能力給がなくて年齢や職歴にかかわらず、同じ給料だから、どういう態度で働くかは結局、本人の気持ち次第なんです」

ゴミ清掃員の働き方は、結局、気持ち次第。滝沢さんがたどり着いた解釈へのヒントは、ここにあったようだ。一方で世の中には、「働く人の善意の気持ち」を悪用するような会社もある。「やりがい搾取」という言葉まであるぐらいだ。気持ちを前向きに持ち続けても、そんな罠にはまってしまったら残念だ。

「今回の本では"セレンディピティ"という偶然によるポジティブな価値を見出していくことの大切さを強調しています。しかし、それはバランスの問題です。『そこにセレンディピティがあるから!』と言ってブラック企業にしがみつき、心身を病んだら元も子もない。『会社が守るのは法律であって社員ではない』と僕は思っているし、究極的には会社員だって自分の身は自分で守らなきゃいけない。ただ、どうせその仕事を続けるなら、つまらないと思いながら働くよりも、楽しく働くほうがいい。僕はそのことに気づくのに3年かかりました」

話をゴミ清掃員の働き方に戻そう。そもそも給料が変わらない職場で一定のモチベーションを保っているのは、なぜだろうか。

「若手時代に居酒屋のバイトをしていましたが、店長も含めて全員が義務的に働いているような職場で、あまり良い職場とは言えなかったです。そのときと比べて今の職場が良いなと思うのは、それぞれの仕事の能力的なことは置いておいて、みんなが一生懸命、協力して働くことです。それは、頑張ってゴミを早く片付ければ早く帰れるから(笑)」

「居酒屋が悪い、ゴミ清掃が良いという意味ではありません。その職場が、共通の目標に向かって意見を出し合いながら、工夫を積み重ねていける職場かどうかという点がポイントだと思いますね」

確かに「作業を早く終わらせる」という共通の目的があると、みんな自然と協力的になるかもしれない。自分だけ楽をしようと仕事の流れを悪くしたら、結局自分も帰るのが遅くなるからだ。

滝沢さんによると「ゴミ清掃員にはいい人が多い」そうだ。実際、職場環境や人間関係など居心地が良くなければ、9年も働き続けられないだろう。

「規則がわりと厳しいので、ルールを守る人しか残れないという側面もあります。前日の夜に酒飲まないとか、法定速度を守ろうとか、基本的なことですけど。むちゃくちゃな人は、だんだん肩身が狭くなっていって、続かないんです。あと、私も含めて他の仕事で頑張ってきたけど、何かしら経営などで失敗したり、なかなかそれ一本で食えなかったりする人がやはり多くて。他人の痛みや苦労がわかる人生経験を積んだ人が多いのも、あるかもしれないです(笑)」

しぶとく生き延びることを考える

新著『ゴミ清掃芸人の働き方解釈』と

最近は声優やYouTuberとして活動しているゴミ清掃員もいるらしい。

「ひと昔前は職人的なイメージで、その道一本で極めていくことが美徳だった気がしますが、今の時代はリスク分散することが大切なのかなと」

「僕も芸能の仕事をしたり、ゴミ清掃したり、小説を書いたり、いろいろやっています。いまはゴミ清掃員として人前で話したりすることが増えていて、もはや芸人が副業みたいな状態ですが(笑)。いろんな人に知ってもらえたので芸人としても良い影響があったと思います。今の世の中、何がウケるかわからない。マーケティングのプロだって百発百中ではないし、手当たり次第に飛び込むほうが僕は楽しいんじゃないかなと思っています」

当初イメージしていたものとは違う形かもしれない。でも、現在の滝沢さんの活躍ぶりは芸人としての成功だけを追い求め続けていたら、あり得なかったかもしれない。

「芸人でもアイドルでもわりとキッパリ引退して活動やめる人も多いんですが、僕の場合はとにかく片足だけでも突っ込んで、子供が生まれても芸人を続けられる状況をつくろうと考えてはいましたね。子供を理由に芸人やめるのは嫌だったんです。続けてさえいれば"いつか当たるかもしれない宝くじを持っている"という解釈もできますから。結局、いろんな偶然で出会った新しい環境に適応しつつ、しぶとく生き延びていける人が一番強いと思っています」

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