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オリンピックと中韓のSNS

決勝で中国と対戦した伊藤美誠選手と水谷隼選手 出典:Photo by Steph Chambers / Getty Images

澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)

【まとめ】

・五輪で中国を破った日本人選手が、SNSで中国人から攻撃を受けている。

・中国共産党は、同党に対する批判以外の中傷はしばしば“野放し”にする。

・「民主化」した韓国の若者は、批判に対し擁護するなど新しい動きも。

今年(2021年)8月8日、コロナ下での東京オリンピックは、無事閉会式を迎えた。7月23日の開会式から17日間にわたり、各競技で熱戦が続いた(野球・ソフトボール・サッカーは同月21日に開始)。そして、様々なドラマを生んでいる。

開催前、東京五輪開催「反対派」が多かった。しかし、連日、日本選手の活躍(金メダル獲得数では、米国、中国に次ぐ第3位)で、「反対派」が“手のひら返し”をしている(『読売オンライン』「五輪開催『よかった』64%…読売世論調査」8月9日付)。改めてスポーツの力をまざまざと見せつけた。

さて、数々のドラマの中で、7月26日、卓球混合ダブルスで水谷隼選手と伊藤美誠選手の勝利を挙げる方が多いのではないか(『朝日新聞デジタル』「五輪、最も印象に残った競技は『卓球』朝日世論調査」8月8日付)。卓球個人戦や団体戦では、依然、中国の壁は高く厚かった。だが、混合ダブルスで日本選手が決勝で中国ペア(許昕・劉詩雯ペア)を撃破し、金メダルを獲得したのである。歴史的快挙と言っても過言ではない。

問題は、この勝利に対してSNSで水谷選手や伊藤選手を攻撃する人達がいた。主に、中国人ネットユーザーである。水谷選手が「ボールに息を吹きかけた」、また伊藤選手が「自らの手で卓球台を拭いた」などの反則行為を行ったという中傷だった(『The Digest』「『ミズタニはボールを吹き、イトウは台を触った』と批判も!? 中国で日本の混合ダブルス金メダルに不満の声【東京五輪】」7月27日付)。

確かに、水谷選手と伊藤選手が審判から警告を受けてもおかしくないシーンがあった。だが、一方、中国選手団は、許昕・劉詩雯ペアが苦戦していると見るや、「加油!(頑張れ!) 」と大声で応援していた。これも、本来ならば警告を受けてもおかしくない行為だろう。自国選手が負けた腹いせに、(自国選手のみならず)相手国の選手も罵倒するのは、いかがなものだろうか。

同28日、体操の個人総合で、橋本大輝選手が最終演技者となった。橋本選手は、演技で得意の鉄棒を残していたのである。同選手は、ほぼ完璧な演技を披露し、中国選手(肖若騰)を抜いて、逆転で金メダルを獲得した。

この時も、中国ネットユーザーは、橋本選手の点数がおかしいと非難した。だが、銀メダルに終わった肖選手が、スポーツマンシップに則り「選手への過度な攻撃はやめてほしい」と中国ネットユーザーに呼びかけた。その行為に対し、体操日本代表の水鳥寿思監督が同選手に感謝の意を述べた(『東方新報』「体操『金』橋本選手への中国からの批判に、中国選手が『攻撃やめて』日本の水鳥監督は『感謝』の2ショット」8月3日付)。

翌29日、国際体操連盟(FIG)は橋本選手の跳馬について詳細な減点項目を公開し、「審査は公正だった」と異例の声明を出した。だが、批判は止まらなかったのである。

周知の如く、中国共産党は、同党に対する批判の書き込みに関して、ネットポリスがすぐに削除する。だが、他国、特に我が国や日本選手への中傷に対して、しばしば“野放し状態”にしている。日本叩きは、中国人ネットユーザーの(同党に対する不満の)“ガス抜き”に最適なのかもしれない。

▲写真 お台場に設置された五輪マーク 出典:Photo by Yuichi Yamazaki/Getty Images

ところで、「民主化」した韓国では、SNS上で中国とは異なる動きが起きている。

これまでの韓国では、オリンピックで韓国選手が活躍することが国威発揚になり、メダル獲得数で日本を上回ることが重視された。また、日韓の試合があると熱狂的に応援したのも、日本に勝つことが韓国民の国民感情を満足させた(『現代ビジネス』「文在寅が『元凶』…五輪『メダル数“敗北”』のウラで韓国が『日本批判』しまくるウラ事情」8月7日付)。実は、今回、韓国勢は金メダル6個、銀メダル4個、銅メダル10個、全体で16位と振るわなかったのである。

だが、韓国「Z世代」は、東京五輪を観戦する際、たとえ自国選手がメダル取れなくても何?という感じである(なお同国では、「X世代」は1960年代後半〜1970年代生まれ。「Y世代」は1980年代〜1990年代半ば生まれ。「Z世代」は1990年代半ば〜2000年代生まれを指す)。そして、非常に頑張った選手にTwitter、Facebook、Instagram等で「いいね!」印をつける(同上)。

例えば、今度のオリンピックで、アーチェリー韓国代表の安山(アン・サン。20歳。日本へ帰化)が、五輪アーチェリーで史上初となる3冠に輝いた。

けれども、安山選手のショートカットの髪型や過去のSNSに書いた表現をめぐり、男性の一部コミュニティー・サイトでは、彼女は「フェミニスト」あるいは「男性嫌悪主義者なのでは」などというバッシングが起きている(『The Sankei News』「アーチェリー『3冠』女性選手に人格攻撃 韓国で騒動」7月30日付)。

しかし、韓国Z世代は、それを自分が攻撃されように感じ、怒り心頭。そして、安山選手を擁護した(同『現代ビジネス』)。この新しい動きは、刮目すべきだろう。

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