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ワシントンポストの記者総タレント化計画

ニューヨークタイムズと並び称される名門大手紙ワシントンポスト(WaPo)で最近、立て続けに気になる人事が発表されました。

まず、8月4日に「Next Generation」という社内横断的なタスクフォースの創設を発表、翌5日には社内ビデオチームのエグゼクティブ・プロデューサーのミッシェル・ジャコーニ(Michelle Jaconi)さんを新設される News Talent Strategy and Developmentのヘッドに指名したと公表しました。

前者は、若くて多様なデジタル版購読者を増やすために紙の新聞、自社サイト以外でどう働きかけていくか、、後者はポストの記者と新しいメディアプラットフォームのマッチングをどう進めるかというもの。

早い話が、日本の新聞同様、紙の読者やデジタル購読者の高齢化が進む中、FacebookなどのSNS、Podcastなどのオーディオプラットフォーム、その他、若者に人気のサイトにWaPoの存在をいかに印象付けていくかという取り組みを二重に進めるということのよう。

その成功例として知られるのが、ジャコーニさんが手がけたショートムービーサイトTikTokのポストのアカウント。主演は、やや保守系サイトとされるIndependent Journal Reviewで、かっての部下だったデイブ・ジャーゲンソン(Dave Jorgenson)さんとその同僚で、若者向けのユーモアや皮肉を込めた15秒以下のクリップです。ただし、日本人で若者でもない当方にはあまり面白みが伝わりませんが、2019年5月の立ち上げから2年余りでフォロワー98万人、「いいね」4140万回という人気ぶりです。そのページの一部をコピペします。


大体が、1万から5万程度の「いいね」ですが、最近だと、東京五輪で時差の関係で早朝に放映された競技の結果を聞いて、米国が負けたと知って、また寝室に戻ったというたわいのないクリップには20万回以上もいいねが付きました。また、昨年の大統領選関係では、民主党候補に名乗りをあげていたアンドリュー・ヤン氏が、「インタビュー続きで疲れたよ」と言って喉を潤し、それでもまだ支持率3%にネクタイを叩きつけるクリップには28万ものいいねが付きました。

で、ここには記事は一本もないのですが、中段の<Read more here>の下にあるURLをクリックするとその日のメインニュースに飛ぶのです。気が向いたらWaPoを読んでね、ってことかな。

ジャーゲンソンさんは一年ほど前のInsiderの記事でこう言っています。

「彼らがポストにネガティブなイメージを抱いていて、TikTokを見たらちょっと違ったな、と思われるように少しづつなってるのを証明してるかな。安っぽい言い方だが、プラットフォーム上の人々は未来だから」

TikTokのユーザーは世界で5億人で、その4割は20歳以下だそうですから、このWaPoのTikTokに食い込んだ戦略は大当たりと言えるのでしょう。

ジャコーニさんが手掛けたのはこのほかにLibby Casey記者によるビデオシリーズ「How to be a journalist」、4年前にWaPoに加わったMary Beth Albrightさんの「Secret Table」シリーズなどがあります。ともにYouTubeに転載されていて、Albrightさんのビデオには30万アクセスに達したものもあります。若者の目に触れる機会が増えています。Casey記者がホストを務めたフロイドさん殺害事件裁判のYouTube中継では240万アクセスがあったとAxiosが伝えています

「これらに”味をしめて”」かどうかは知りませんが、WaPoの首脳陣は、どうやら、自社のジャーナリストらを、できる限りSNSなどに露出する”タレント”にして、WaPoを若者に売り込もうという考えのようです。

今年2月28日に編集局長を降りたマーティ・バロン編集主幹は6年前、カリフォルニア大リバーサイド校で新聞の未来について熱弁を振るいました。その一部については当ブログ「新聞社はテクノロジー企業になるしかない」で紹介しましたが、今につながる含蓄のあることを語っていました。

「私たちは住み慣れた家を離れ、別の土地に移動している。新たな場所の隣人は若く、機敏で私たちの不安を気にかけず、別の言葉を話す。彼らは、我々がどこから来たか、以前、何をしていたかに興味がなく、軽蔑さえする。我々は移民だ。彼らは先住民だ。彼らにこの土地のことを学ばねばならない」

そしてジャコーニさんは言います。「私たちが本当に素晴らしいと思うのは、この本社ビルに様々な専門知識や才能のある人がいるということだ」

バロン編集主幹の思いは徐々にWaPo全体に浸透してきたということでしょう。

(なお、バロン氏退任前日にCasey記者がインタビューしたビデオもアップされています。そこでは「報道は魂と勇気だ」と語っています)

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