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コロナ禍の死別の悲しみは吐き出すことが癒しになる-「賢人論。」第144回(後編)内藤いづみ氏

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新型コロナウイルス感染症の拡大は、さまざまな悲劇や苦悩を世界中にもたらした。中でも、大きな悲しみを背負ったのが、家族や友人を新型コロナで亡くした人ではないだろうか。会話をすることも顔を見ることも許されないまま、お別れをしなければいけなかった人は、どのようにその悲しみを癒やすことができるのか。在宅ホスピス医の草分け的存在として、多くの患者さんの最期に立ち会ってきた内藤いづみ氏にお話をお聞きした。

取材・文/みんなの介護 撮影/中西裕人

新型コロナへの感染は、二重三重の苦しみに

みんなの介護 新型コロナの感染が原因で亡くなられ、別れを告げられなかった人は多くいます。その悲しみを癒すためには、どんなことが必要ですか?

内藤 しばらく悲しみは癒やせないと思います。そんな簡単なことではありません。あまりにもショックだと思いますし、プロセスをまったく見ないでお骨になって帰ってくると、信じられない気持ちでいっぱいになるでしょう。

実は私も親しい方を新型コロナで失いましたが、家族の悲しみはとても深いものです。何をしてあげたらいいかというと、会えないならテレビ電話でもいいですし、手紙や電話でもいいので、家族にコンタクトを取り続けることです。

別れというのは、とても大事なことですので、悲しみを吐き出させてあげることが必要です。新型コロナで家族を失った人は、嫌がらせやいじめを受けることもあるため、そのことをオープンに話せない人もたくさんいます。それはその人にとって、二重三重の苦しみだと思います。悲しいということも言えないので、新型コロナで亡くなったことを話せる間柄であるのであれば、話を聞くことで相手を癒やすことができます。一回だけではなく、何度もお聞きすることが大切です。

みんなの介護 最期の時間を輝かしいものにするために、元気なうちからどのような生き方をすることが大切ですか?

内藤 自分を飾り立てず、本音で付き合える人をつくっておくことだと思います。そして、「1日1日」という考え方を大切にして、日記を書きましょう。できれば、私は良いこと日記がおすすめです。「今日はこんな良いことがあった」というのを5つ書いて、みんなに感謝をすることです。

このことは、亡くなる直前にいろいろと反省するのではなく、後悔を短いスパンで消化していく練習にもなります。自分を見つめて本音を伝えることに日々取り組み、後悔を先送りしないようにすることが、とても大切です。

認知症の人は、死への葛藤の少なさが救いになることがある

みんなの介護 以前、「穏やかに恐怖なく旅立てる方の多くは認知症がある方」と語られていました。これはどのような考えですか?

内藤 認知症がある場合は、私たちと同じような葛藤が少ないので、付き添う人の気持ちが楽だと思います。そして、それはある意味、救いになるなと感じたことがあります。

あるがんの末期の患者さんは、いろいろなものが落ち着いて、延命されていました。だんだん認知症が出てきたのですが、コミュニケーションは取れます。私が定期的に往診すると、「先生、私の病気何かな?」って聞くんです。娘さんに、「言っちゃう?」と聞くと、「言っても5分で忘れちゃうから、言ってください」と言われます。そして患者さんに「大きい病院で検査して、がんだったんだよ」と伝えると、「先生冗談きついね」と笑うんです。「こんなに太って、末期がんなわけないじゃん」って。それを本気で言っていらっしゃる。

そのような感性は、ある意味神様からのプレゼントだなと思います。認知症ではなくても、きちんとみんなに別れを言って、穏やかに亡くなる人も多いですが、そのような方々の苦悩は消えません。「もっと長生きしたかった」とかですね。私たちは、そのような思いを隠さず言ってくれる関係を築けるかどうかを大切にしています。

最近、一番困ったのは「安楽死したい」という相談でした。私のところに相談に来られたときはがんの末期で、余命1ヵ月ぐらいの患者さんでした。本人は重症だということがわかっていて、お子さんたちは全員ご存知でした。ある日、その方が「先生、薬を多くして私を早く死なせてください」と言ったんです。モルヒネを使っていましたらからね。しかし、「モルヒネは安楽死させる薬じゃなくて、体の痛みを緩和する薬だから、そういう使い方はできないし、しないよ」と伝えました。

その患者さんは、「私が命を永らえると、家族に迷惑がかかる。今は体も苦しくなくて平和なので、もう死んでしまった方がいいと思います」ということを、冷静に言うのです。

そこで私は、「そのお気持ちは受け止めますが、私がさじ加減を調整して、あなたの命を縮めるということはしません。なぜならあなたは苦しんでいないでしょう?」と聞きました。

すると、「楽ですよ。ご飯も食べられるし、夫の顔や家族の顏も見られて幸せです」と話すんです。ですので、少し厳しいのですが、「これから先長くないから、家族に甘えて」と伝えました。それから本人は、安楽死したいということは言わなくなりました。

そして、「やっぱりこの世は素晴らしい」と語るのです。「家族と会うことも素晴らしいし、死にたくない」と続けて言いました。死にたいという人の気持ちはくるくる変わりますが、そういう気持ちになっていただけて良かったと思います。

みんなの介護 治すための医療と在宅緩和ケアの連携の可能性について、感じていることはありますか?

内藤 在宅で私たちのケアを受けると、病院との縁が切れると思ってしまう方がいます。しかし、そうではありません。状況にもよりますが、その人の病気の進展の仕方によっては、病院の助けが必要ということもあります。さらに、患者さんの命の可能性を延ばすこともできます。そうすると、なるべく短い入院でやってもらおうということを相談して動きます。積極的に働きかけをすると、いろいろな軌道修正が必要になってきます。そんなときに病院が助けてくれて、家で快適に過ごす時間が延ばせるなら、協力してもらうこともあります。

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