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安全ではないが安心

 さてオリンピックも、無事と言っていいのか分かりませんが終わりを迎えました。メダル獲得数に関しては体育会系社会の面目躍如と言ったところですが、新型コロナウィルスの感染拡大が大幅に増加する中では、単純に浮かれているだけでいいのか行政や組織委に問われるべきものはあるように思いますね。

 一言で総括するのであれば「安心・安心」のオリンピックとなるでしょうか。安全性は着々と損なわれていく一方、世間の警戒感はすっかり薄れ、マスクの着用を別にすれば行動様式は「コロナ前」への回帰が進んでいるわけです。ついに日本も欧米クラスの感染拡大が目前に迫っている様子ですが、「安全」との意識もまた広まっていると言えます。

 総じて「安心」と「安全」は反比例するものなのかも知れません。安全であればあるほど不安は高まり、安全でなくなるほど警戒を解く、そんな人も少なくないのではないでしょうか。加えて「安心」と「安全」が一致しないときは、専ら「安心」の方が幅をきかせているところもあるはずです。

 顕著だったのは2011年の原発事故の際で、こと放射線量に関しては健康被害を確認できる水準になかった一方、危険であると信じる人は多く行政もそれに阿る状態が今も続いています。これは「安心」を全てに優先させた結果と言えますが、逆に居住禁止などの極めて強力な私権の制限は躊躇なく行われ現在も是正に至らないわけで、こちらは「安全」を無視した判断としか言えません。

参考、5年後の現実

 原発事故の際に起こったような放射線量の微々たる増加による影響は「小さすぎて測定できない」のが実態ですが、これを「何が起こるか分からない→どんなことでも起こりうる」へとミスリーディングさせようとする人は少なくないわけです。一方で住民を強制退去させようものなら甚大な影響を免れられませんが、こういう明白な被害については当たり前のようにスルーする人が多いのではないでしょうか。

 世の中を飛び交う風聞を聞くと、今や新型コロナウィルスよりもワクチン接種の副反応の方が重篤であるように認識されているとすら思えてきます。感染症による発熱ではなくワクチン接種の副反応に備えて解熱剤を買い求める人々もいれば、コロナへの感染には無警戒だがワクチン接種には抵抗する人もいる、リスクと警戒感は比例よりも反比例に近いようです。

 昨今は廃れつつありますが、蒟蒻ゼリーによる窒息事故が頻繁に話題になる時代もありました。もっとも蒟蒻ゼリーによる窒息よりも、餅を喉に詰まらせて死ぬ人の方がずっと多かったわけです。しかし餅を喉に詰まらせた程度で社会問題なったり、市販される餅の規格に制限が課されるようなことはありません。蒟蒻ゼリーよりも餅の方がずっと危険ですが――危険性と警戒感は比例しないのです。

 そしてアルコールやニコチンは、大麻よりも強い依存性があります。しかし大麻の禁止が長らく当然視されている一方、酒やタバコに関しては僅かばかりの増税がある程度で、普通に社会に受け入れられています。この辺も、危険性に応じた禁止からはほど遠く、むしろ反比例の方が当てはまる状況です。

「コロナはエボラとエイズを混ぜた人工ウイルス」タマホーム社長の社内向け動画(週刊文春)

「コロナになったら死ぬんじゃないか」とかですね、不安になっていると思います。そういう時どうすればいいか。秘密の言葉を、こっそりと教えたいと思います。それは「大丈夫、大丈夫」ということです。「大丈夫、大丈夫」。心の中とか、自分に向かって、家族に向かって、『大丈夫、大丈夫。大丈夫、大丈夫。大丈夫、大丈夫』と言うと、本当に大丈夫になってきます

 上記の引用はタマホームの社長の言葉ですが、世間との距離はどうなのでしょうか。感染症の危機が迫っている反面、安心して社会活動を続けている人もまた増えているわけです。その人の頭の中では本当に大丈夫になってしまっている、それが現状なのかも知れません。

 私自身は、「安心」については各自でどうにかすべきものであって行政などの権力は「安全」一本に注力して欲しいと思っています。しかし票につながる、支持率上昇に結びつくのは安全よりも安心の方、国民が安心している限り手ぬるい対応しか行われず、日本での感染症の封じ込めには長い月日を要することが必至です。

 計画経済が破綻したことからも明らかなように、政府が「十分な量」を確保したと思っていても、それが市井に行き渡るには相応の余剰を必要とするものです。そして余剰がないのであれば、無駄を生じさせないために国民の行動を統制する必要があります。しかるにワクチン接種は任意とばかり強調され、計画通りに進められない自治体も少なくありません。

 例えば裁判員制度では、国民は出頭する場所と日程を指定され、正当な理由なく辞退すれば罰されます。ワクチン接種に関しても、これと同じぐらいの扱いで良かったのではないでしょうか。少なくとも2011年に躊躇なく進められた居住禁止のような高度の私権制限に比べれば、国や自治体が指定してワクチンを受けさせていく程度のことは屁でもないはずです。しかし国民は、小さなリスクを過大視して大きなリスクはスルーする、政治家もそれに同調してしまうようです。

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