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東京五輪の関係者が「殺人的暑さでもアスリートなら大丈夫」と考えてしまう根本原因

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「これはテニスではなく、暑さの我慢比べ大会だ」

連日のメダルラッシュで日本の快進撃が止まらない。海外のアスリートやメディアから「日本のおもてなし」への称賛も止まらない。しかし、その一方で、「殺人的な暑さ」へのクレームも止まらない。

ラトビアのティナ・グラウディナは、東京2020オリンピックのビーチバレーボール女子準決勝、オーストラリア対ラトビア戦(東京・潮風公園)のタイムアウト中にベンチに座り、氷の入った袋でクールダウンしている=2021年8月5日
ラトビアのティナ・グラウディナは、東京2020オリンピックのビーチバレーボール女子準決勝、オーストラリア対ラトビア戦(東京・潮風公園)のタイムアウト中にベンチに座り、氷の入った袋でクールダウンしている=2021年8月5日 - 写真=SPUTNIK/時事通信フォト

まず、連日30度を超す猛暑の中で競技をさせられるアスリートたちから、「殺す気か?」「夕方や早朝にずらしてほしい」と大会運営に怒りや不満の声が上がっている。

「被害者」もでている。7月28日、テニス女子シングル準々決勝に勝ち進んでいたスペイン人のパウラ・バドサ選手が熱中症で途中棄権した。メダルのチャンスもあった代表選手がつぶされて母国メディアも怒りがおさまらない。スペイン紙「エル・ムンド」は他国の代表選手に以下のように、世界的に人気のゾンビTVドラマをネタにして痛烈な皮肉をさせている。

「僕たちはテニスをしているのではない。誰が最後まで倒れずに耐えられるか我慢比べをしている。まるで、『ウォーキング・デッド』のようだ」

日本の夏がスポーツに不向きであることは自明だった

そんな「我慢比べ五輪」に対しては、「嘘つき」批判も寄せられ始めている。例えば、アメリカの「Yahoo! Sports」には、「日本のオリンピック組織は天候について嘘をついた。そして今アスリートが代償を払っている」というコラムが掲載されている。

2013年、日本の五輪招致委員会は立候補ファイルの中で、「この時期の天候は晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」と記しており、それが「虚偽申告」だというのだ。

当時の招致活動に関わった人たちや組織委員会には「他に開催都市として手を挙げていたマドリードやイスタンブールも気候的にそれほど変わらない」「過去の五輪と比較しても東京だけが暑いだけではない」と反論するが、「五輪欲しさ」に日本側が話を盛ったという事実を覆すことはできない。

1964年の東京五輪が、10月10日に開会式が行われ、小中学校の運動会が春や秋に開催されていることからもわかるように、日本でスポーツを行う理想的な環境が「夏ではない」ということは誰でも知っている。

なぜ組織委は「殺人的暑さ」を放置してきたのか

実はそれは外国人の間でも有名だ。観光庁が2019年11月に公表した「訪日外国人旅行者の夏の暑さに関する意識調査」によれば、日本を訪れた外国人の89%が、東京の夏は蒸し暑いと回答し、その中の8割以上がこの暑さについて、「日本にやってくる前から知っていた」と答えている。

スクランブル交差点
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SeanPavonePhoto

だから、招致を勝ち取った段階で国内外のスポーツメディアから、「東京五輪はアスリートにとって最も過酷に大会になる」という指摘が相次いでいたのだ。

では、なぜ7年以上前から大炎上することがわかりきっていた「殺人的暑さ」を、組織委員会は放置してきてしまったのか。多くのスポーツ関係者やメディアから危険性が指摘されていたにもかかわらず、効果的な対策を打ち出すことができなかったのか。

個人的には、組織委員会や日本のアマチュアスポーツ団体の感覚が、国際社会のそれと大きくズレてしまっている、という問題が大きいと思っている。

その感覚とは一言でいうと、「スポーツとは暑い最中にやる過酷なもので、アスリートは暑さに耐えて当然」という昭和のスポ根的精神論だ。

日本のスポーツ関係者は“スポ根脳”に支配されている

建前としては「アスリートファースト」とか「いい環境でパフォーマンスをしてほしい」というようなことを言っているが、根っこに「スポ根」があるので、どうしても「暑さくらいで騒ぐなよ」という本音がある。だから、「暑さ対策」にそこまで力が入らない。それを象徴するのが、コート上が50度を超えるとかねてから言われていたテニスを真っ昼間に開催したことだ。本当にアスリートファーストならば、7年以上も時間があったのだから、IOCや有力スポンサーである米テレビ局と交渉して、せめて競技を涼しい時間に変更すべきだったのにそれをやっていない。

根本的なシステムを見直すという発想にならず、「水分をよくとる」など個人に負荷をかけていくことを暑さ対策の柱にしたり、「頭にかぶる傘」「うち水」というマンガみたいなアイデアが次々飛び出すのは、「個人の気合と根性」で問題を解決しようとする“スポ根脳”の典型的な発想だ。

「この状況下でアスリートのためにどうにか大会開催までこぎつけてくれた人々にワケのわからない因縁をつけるな」と不愉快になる方も多いだろうが、組織委員会のみならず、日本のスポーツ関係者が“スポ根脳”に支配されてしまっているというのは、五輪と入れ替わる形で開催される「国民的スポーツイベント」が雄弁に語っている。

そう、夏の甲子園だ。

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