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米7月雇用統計:デルタ株感染拡大前、文句なしの好結果に

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RHiNO NEAL/Flickr

Strong Jobs Report By Nearly Every Measure. Question Is, Will It Last?

<本稿のサマリー>

米7月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、1回以上のワクチン接種済み成人人口が8月2日にバイデン政権の目標である70%を超える過程で、市場予想を大きく上回る増加を遂げた。米7月ADP全国雇用者数が大幅鈍化したが、単月で過去最低となった米7月チャレンジャー人員削減予定数が示すように、企業は需要拡大に備え人員確保に動いた格好だ。何より、共和党知事を抱える少なくとも25州で失業保険給付上乗せの早期終了を決定したことで、潜在労働者が社会復帰し雇用増につながったとみられる。平均時給も市場予想を超え、インフレ懸念を再燃させた。

就労者数の増加に加え失業率の低下、労働参加率の改善など好材料がそろった雇用結果を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)が早期のテーパリングに踏み切る余地を残すが、問題はデルタ株の感染拡大の影響だ。7月半ば以降にNY市を始め各州でマスク着用が再度義務化されるなど規制が強化されており、今後、対面サービスを提供する業種などで採用が滞るリスクをはらむ。

今回の結果を受け、米株の主要3指数はNY時間11時30分時点でまちまちで、景気敏感株が押し上げダウやS&P500が上昇しつつ、ナスダックは下落。米債市場は売りで反応(米長期金利は上昇)、ドルは買い戻された。今回のポイントは、以下の通り。

(労働市場にポジティブ)

・NFPは前月比94.3万人増、市場予想を上回り過去2ヵ月分も上方修正
・平均時給は前月比と前年比ともに市場予想超え、さらに前月分が上方修正
・週当たり労働時間は34.8時間、財部門の40.1時間と合わせ前月を上回る
・失業率は5.4%、20年3月以来の低水準
・就業率は58.4%、20年3月以来の水準を回復
・不完全就業率は9.2%、20年3月以来の低水準
・長期失業者の割合は39.3%と年初来で最低、失業期間の中央値なども軒並み改善
・フルタイムが大幅増、パートタイムが減少しており正社員へのシフトを示唆か

(労働市場にネガティブ/ニュートラル)
・サービスの週当たり労働時間は33.7時間、前月の33.8時間から小幅短縮
・経済活動が正常化するなかでも、小売の就労者数は3ヵ月ぶりに減少

米7月雇用統計の詳細は、以下の通り。

米7月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比94.3万人増となり、市場予想の87.0万人増を上回った。前月の93.8万人増(85.0万人増から上方修正)を超え、7ヵ月連続で増加しただけでなく、2020年8月以降で最大の伸びを達成した。8月2日に成人人口における1回以上のワクチン接種率が70%を突破し、経済活動の再開が進む過程で、2ヵ月連続で力強く増加している。

5月分の0.9万人の下方修正(58.3万人増→61.4万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で11.9万人の上方修正となった。4~6月の3ヵ月平均は83.2万人増と、コロナ禍前の2019年平均である16.8万人増を大幅に上回った水準を維持した。

20年5月以降、今回で1,677万人の雇用を取り戻した。ただ、同年3~4月の記録的な減少(2,236万人)を打ち消し同年2月の水準を回復するには、あと570.2万人必要となる。

チャート:コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、あと570.2万人増加する必要あり

(作成:My Big Apple NY)

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比70.3万人増と市場予想の70万人増を上回った。前月の76.9万人増(66.2万人増から上方修正)を含め、7ヵ月連続で増加した。民間サービス業は65.9万人増、前月の72.4万人増(64.2万人増から上方修正)を上回った。

チャート:NFPは7ヵ月連続で増加し、失業率も20年3月以来の水準に低下

(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向は、5~6月に続き政府を含め11業種中9種が増加した。今回最も雇用が増加した業種は2~6月に続き娯楽・宿泊で6ヵ月連続にて全体を支え、NFPの約4割を占めた。2位は前月に続き政府が入り、3位は教育・健康となった。一方で、小売は3ヵ月ぶりに減少した。

(サービスの主な内訳)

―増加した業種

・娯楽/宿泊 38.0万人増、6ヵ月連続で増加<前月は39.4万人増、6ヵ月平均は34.4万人増(そのうち食品サービスは25.3万人増、7ヵ月連続で増加>前月は23.4万人増、6ヵ月平均は22.0万人増)
・政府 24.0万人増、5ヵ月連続で増加>前月は16.9万人増、6ヵ月平均は8.1万人増
・教育/健康 8.7万人増、6ヵ月連続で増加>前月は6.0万人増、6ヵ月平均は6.3万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は4.7万人増、6ヵ月連続で増加>前月は0.7万人増

・専門サービス 6.0万人増、3ヵ月連続で増加<前月は7.5万人増、6ヵ月平均は6.3万人増(そのうち派遣は1.0万人増、2ヵ月連続で増加<前月は3.5万人増、6ヵ月平均は0.5万人減)
・輸送/倉庫 5.0万人増、3ヵ月連続で増加>前月は2.0万人増、6ヵ月平均は1.8万人増
・情報 2.4万人増、8ヵ月連続で増加>前月は0.4万人増、6ヵ月平均は1.2万人増

・金融 2.2万人増、増加に反転>前月は0.1万人減、6ヵ月平均は0.8万人増
・その他サービス 3.9万人増、7ヵ月連続で増加<前月は7.3万人増、6ヵ月平均は3.7万人増
・卸売 0.3万人増、12ヵ月連続で増加<前月は2.7万人増、6ヵ月平均は1.3万人増

―横ばいの業種

・公益 横ばい=前月は横ばい、6ヵ月平均は横ばい

―減少した業種

・小売 0.6万人減、3ヵ月ぶりに減少<前月は7.3万人増、6ヵ月平均は2.7万人増)

財生産業は前月比4.4万人増と、前月の4.5万人増(修正値)をわずかに下回った。業種別をみると、製造業が3ヵ月連続で増加したほか、油価が2018年10月以来の高値を達成する過程で、鉱業・伐採も3ヵ月連続で増加した。過去3ヵ月減少していた建設は、住宅市場の過熱により販売件数が伸び悩みつつあるが、一部の州での失業保険給付上乗せ停止が効いたためか、増加に転じた。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・製造業 2.7万人増、3ヵ月連続で増加<前月は3.9万人増、6ヵ月平均は2.6万人増
・鉱業/伐採 0.6万人増(石油・ガス採掘は700人増)、3ヵ月連続で増加>前月は1.1万人増、6ヵ月平均は0.7万人増
・建設 1.1万人増、4ヵ月ぶりに増加>前月は0.5万人減、6ヵ月平均は0.2万人増

チャート:7月のセクター別増減

(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.4%上昇の30.54ドル(約3,360円)と、市場予想の0.3%を上回った。前月の0.4%(0.3%から上方修正)を含め4ヵ月連続で上昇した。前年比は4.0%上昇し、市場予想の3.8%を超えた。6月の3.7%(3.6%から上方修正)より力強く上昇し、賃上げ圧力の高まりを確認した。

チャート:平均時給は力強く伸び、賃上げ圧力を示唆

(作成:My Big Apple NY)

週当たりの平均労働時間は上方修正された6月に続き34.8時間と、市場予想の34.7時間を超えた。ただし引き続き、需要拡大と人手不足が報じられながら、2006年以来の最長を記録した1月の35時間を4ヵ月連続で下回った。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.1時間と、前月の39.9時間から延びた。新型コロナウイルス感染拡大直前の20年2月以来の水準に並んだ3月の40.2時間(修正値)に届かず。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは33.7時間と、前月の33.8時間を下回りこちらも5ヵ月ぶり低水準。2006年以降で最長を記録した1月の33.9時間からまた一歩遠ざかった。

失業率は5.4%と、市場予想の5.7%を下回り2020年3月以来の低水準となった。前月の5.9%から急低下している。失業者が78.2万人減少しただけでなく、就労者数が104万人増加したため。同時に、6月の失業率を押し上げた自発的離職者数も減少していた。労働統計局によれば、引き続き一時解雇された労働者が「雇用されているが休職中」として扱われるなど正確に反映されていない場合があり、これを考慮すると失業率は5.7%だったという。

チャート:自発的離職者数、7月は減少も、失業者自体が減少したため割合は上昇


チャート:失業者は減少、漸く求人数を上回るトレンドに回帰しつつある


失業者が大幅減となったが、問題は求人数を上回るトレンドに終止符が打てるか否か。コロナ前は有効求人倍率が2倍以上だったが、5月時点では1.6b倍だった。

チャート:有効求人倍率は、改善途上

(作成:My Big Apple NY)

労働参加率は61.7%と、5~6月の61.6%を上回った。ただ、ワクチン普及が進んだ半面、労働参加率は20年6月以降、61.4~61.7%の狭いレンジにとどまり、コロナ感染拡大直前の20年2月の63.4%以下で推移し続けた。

就業率も5~6月の58.0%から58.4%へ大きく上昇した。20年3月以来の高水準だが、コロナ前の61.1%を下回ったままだ。

在宅勤務を行ったとする労働者の割合は13.2%と、前月の14.4%を下回りコロナ禍での最低を更新した。ただし、デルタ株の感染拡大により新規感染者が急増するなか、アルファベットやアマゾン、ウェルズ・ファーゴなどオフィス復帰を計画していた企業が実施を先送りを決定しており、今後上昇する余地を残す。

チャート:在宅勤務を行う労働者の割合

(作成:My Big Apple NY)

コロナ禍が理由で過去4週間に職探しをしなかった労働者は7月に158万人と、コロナ禍以降で最低となった前月から小幅に増加した。

チャート:職探しをしなかった非労働人口は減少トレンド一服も、労働参加率は改善

(作成:My Big Apple NY)

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比1.0%増の1億2,747万人、前月から127万人増加した。一方で、パートタイムは同1.0%減の2,536万人と前月から25万人減少、3ヵ月ぶりに減少した。人手不足の状況を受け、正社員にシフトしたパートタイムの増加を示唆した。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が前月を上回る伸びだったほか、平均労働時間が延びたため、前月比0.6%増と5ヵ月連続で増加した。平均時給は4ヵ月連続で上昇した結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比0.9%増だった。

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