記事

日本の農業の敵は?

TPPをめぐる議論が再び若干ながら盛り上がってきている。安倍首相は今のところ態度を明確にさせていない。しかし、いつも言うように自由貿易によって利益を手にするのは消費者である。より安い価格でモノを手に入れることが出来れば、あるいはより多様な商品を容易に手に入れることが出来れば消費者にとってはプラスである。

当然ながら、今まで関税や非関税障壁に守れていた供給者からすればこれは不利益である。しかし、当然ながら供給する側よりも消費者のほうが多いのだから供給者を守る理屈はない。これが全うな考え方だろう。もちろん、これに関する反論は農業の分野では食糧安全保障が・・・だとか安価な輸入品で日本の農業は崩壊するなどという議論がある。

だが、それは本当に正しいのだろうか?TPPに反対する農協は農家の総意を代表しているように言われるが、本当にまじめに農業をやっている経営者の中ではTPPやむなしやむしろ賛成と言う意見も多いという。また、実際に農協の利益の源泉が週末しか農業をやらない兼業農家であることは有名だ。兼業農家のほとんどは専業農家よりも収入が高く趣味で農業をやっている人たちにもかかわらず、農協の必死のTPP反対運動は高齢化が進む貧しい農家の人々の声だという誤解も多いようだ。

さて、今日紹介するのはTPP反対は農業のためではなく農協のためにすぎないと喝破する一冊である。


リンク先を見る 画像を見る
農協の陰謀~「TPP反対」に隠された巨大組織の思惑 (宝島社新書) 画像を見る

本書は農水省出身で農協に関しても詳しい山下氏が書かれた一冊だ。農協と言う組織がいかに政治力を発揮してきたかが読めばよくわかる。

また、氏はTPPをやっても日本の農業は必ずしも諸外国に劣後するほど弱くないと説く。また作付面積が問題だという意見に対してはたとえばオーストラリアと米国の作付面積は20倍程度差があり豪州のほうが大きいがアメリカの農業に競争力がないわけではないと説く。そして、自由貿易を進めて関税を撤廃していくことで日本の高級な農産物はもっともっと海外に販路を開拓できるしそうすれば輸出量の増加を通して国内の生産量を増加できると説く。(参考記事→日本の農業は弱いのか)


もちろん、一番問題は反対する農協だが、彼らは農作物の価格が下がることで販売手数料が減ることを懸念しているという。たとえば、TPPを行い同時に専業農家に作付面積に応じた直接支払いで一定の所得を補償すればよいと説く。そして、このような全うな政策に反対する農協の論理の矛盾を農協の歴史を紐解きながら厳しく突いていくのが本書である。

利権団体のやり口の恐ろしさがよく分かる一冊であるとともに、(全面的に賛成はできないが)あるべき全うな農業政策が分かる一冊である。ぜひ皆さんにも読んでもらいたい。

あわせて読みたい

「農業」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    GACKT お金と違い時間は戻らない

    かさこ

  2. 2

    支持率-12ポイント 菅政権の過ち

    舛添要一

  3. 3

    感染ゼロを求めない日本は理想的

    中村ゆきつぐ

  4. 4

    EUで感染再拡大 自由移動の悲劇

    木村正人

  5. 5

    日本が何度沖縄を踏みにじったか

    Chikirin

  6. 6

    瀬戸大也イバラの道 海外で驚き

    WEDGE Infinity

  7. 7

    ウォール街の期待はバイデン勝利

    WEDGE Infinity

  8. 8

    公明・山口氏の的確な都構想演説

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  9. 9

    自民に必要な中曽根氏の外交感覚

    山内康一

  10. 10

    甘利氏の傲慢対応 菅自民を危惧

    郷原信郎

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。