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医療用大麻の攻防|米大麻合法化州法をめぐって4

コロラド州、ワシントン州で一部施行された大麻合法化州法に対して、米連邦がはたしてどんな対抗策に出るのか、その行方を見守っている人たちにとって気になるのがカリフォルニアで進行している医療用大麻をめぐる攻防です。2011年10月、米連邦がカリフォルニア州内の収益追求型の医療用大麻供給所に対して、重点的な取り締まりを行うと発表して以来、州内では、連邦司法省の要請に従って閉鎖する供給所が相次ぎ、また閉鎖要請に応じない供給所に対する強制捜査や関係者の逮捕も報じられています。(下記参照①)

その一人、サンディエゴで2店の医療用大麻供給所を運営する男性に対して、1月24日、サンディエゴ連邦地裁は、100か月(8年4か月)の拘禁刑と犯罪収益の没収を言い渡しました。被告人は、1000キログラムを超える大麻の供給、薬物関連施設の運営、マネーロンダリングなどで起訴されていました。

米麻薬取締局(DEA)は、報道発表で、この事件を「カリフォルニア南部地域における重要案件」として取り上げていますが、この記事を通じて連邦は、取り締まりの対象は医療用大麻制度ではなく、この制度に乗じて営利を企む商業主義的な経営者であると強調しているようです。(下記参照②)
DEAサンディエゴ支局の取締官の発言には、「金儲けが目的であるなら、医療用大麻を隠れ蓑にした、麻薬の密売に他ならない」「重病人を支援するための州法を利用して、高品質大麻を娯楽用に販売し、何百万ドルも稼いだ密売人だ」といった言葉が並んでいるのは、医療用大麻州法の趣旨を尊重しながらも、営利的な販売行為は容認しないという、連邦のメッセージなのでしょう。
判決メモによると、この被告人には、カナダ産の高品質大麻の密売にかかわった経歴があり、当時の主要な大麻の入手相手が2008年に逮捕された後、医療用大麻の取り扱いに転身したとされています。通信傍受などによって明らかになったのは、被告人が、非営利組織であるはずの医療用大麻供給所を利用して、大麻を大量に販売し、多額の収益を得ていた事実です。2か所の供給所は、1日平均5千ドルから7千ドル(約45万円から64万円)の大麻を販売していました。供給所の1店では1,732人の会員が登録されていましたが、その大半は18歳から22歳の若年者でした。

しかし、カリフォルニア州で展開されている医療用大麻供給所に対する取り締まりで、連邦法違反に問われている被告人は、このケースだけに限りません。1月14日付のニューヨークタイムズの記事「カリフォルニアでは大麻をめぐって連邦と州の対決」が取り上げているのは、カリフォルニア東部で医療用大麻供給所を経営していた34歳の男性です。
彼は、大量の大麻栽培で起訴され、現在は10万ドルの保釈保証金を支払って保釈されているといいます。
彼は、2009年に供給所を設立し、75人の従業員を雇用し、会計士や弁護士を顧問にし、800万ドルの年商をあげていました。もちろん前科などなく、大学を出て様々な業種で働いた後、起業した男性です。
ニューヨークタイムズの記事は、カリフォルニア州法にのっとってビジネスを展開し、連邦法によって起訴されたこの男性の上に、米国の大麻政策の大きな矛盾を描き出しています。(下記参照③)

さてさて、大麻政策をめぐって混乱が続く米国。大麻合法化州法によって、本格的な大麻販売が開始された日には、はたしてどんな衝突が起きることになるのでしょうか。今のところ、まだ着地点は見えていません。

[参照]
①米連邦による閉鎖命令に関する過去記事
医療用大麻供給所に連邦が閉鎖命令|米国の大麻政策(2011/10/09)
http://33765910.at.webry.info/201110/article_8.html
②DEA>San Diego Man is Sentenced to 100 Months for Running Marijuana Dispensary and Money Laundering(January 24, 2013)
http://www.justice.gov/dea/divisions/sd/2013/sd012413.shtml
③NewYork Times>In California, It’s U.S. vs. State Over Marijuana(January 14, 2013)
http://www.nytimes.com/2013/01/14/us/14pot.html?pagewanted=all&_r=0

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