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東芝前社長の保身がもたらしたものは、昭和的なれ合い官民関係の終焉か

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大企業と官庁のなれ合いにメス入れた東芝問題

「物言う株主(アクティビスト)」からの実質的な退陣要求に対する車谷社長(当時)の保身に端を発した東芝問題は、所轄官庁である経済産業省をも巻き込んで、日本を代表する企業と官庁のコンプライアンスおよびガバナンス・クライシス問題に発展しつつあります。

この新たな展開は、第三者委員会の調査報告に基づくものであり、その信ぴょう性はかなり高いと思われます。

BLOGOS編集部

今回の問題は改正外為法の下での官庁の行き過ぎた対応と言うことにとどまらず、株主利益を棄損する昭和来の大企業と官庁の親密を通り越したなれ合い関係に、物言う株主や海外資本が敢然とメスを入れた事象として大変注目されます。

東芝は物言う株主からの株主総会の決議に不正があったとの指摘を否定していましたが、第三者委員会の調査が株主提案による臨時総会で可決され、今般の調査報告に至っています。

委員会が明らかにした東芝を巡る問題対応は、昨年6月の東芝の株主総会における株主提案(新たな経営布陣を提案し、実質的に車谷体制を退けようとしたもの)を否決するために、経産省を通じて株主提案主であるエフィッシモ・キャピタルマネジメントに提案の取り下げ圧力をかけたり、海外株主である米ハーバード大学基金運用ファンドに同省元参与を通じて議決権行使を控えるよう要請した、と言うものです。

昭和的な「天下り」が株主の反感を買う大きな要因

経産省は今回の報告を受けて「外国株主へ働きかけをした事実はない」としながらも、「国の重要な技術や産業に関心を持つのは当たり前」として、監督官庁と東芝との距離の近さを認めつつ弁明する発言をしています。

そもそも昨年5月に施行された改正外為法については、海外の投資家筋から外資排除につながるのではないかとの懸念も指摘されてもいたわけで、我が国の株式市場の信用失墜と海外マネーの流入激減への懸念を払しょくするためにも、ことの顛末について当事者から十分な説明が必要でしょう。

まずは何より、ことの発端である東芝の真摯な内部調査と善後策の提示が、大きなポイントとなるでしょう。

この調査報告を受け6月25日に開催された東芝の株主総会では、永山治取締役会議長と小林伸行監査委員会委員の再任が否決されました(小林委員以外の監査委員会メンバー2名は既に退任済み)。

取締役会を取り仕切るべき立場の永山氏および、監査の立場にありながら今回のガバナンス不全を見過ごしてきた監査委員の責任について、物言う株主以外の株主も含め厳しい判断を下した結果といえます。

総会決定を受けた当日の東芝株の値動きは、朝のマイナス圏の動きからプラス圏での動きに転じており、市場もこの株主判断を好感していることがうかがわれました。

官庁とその所轄下にある大手企業との近しすぎる関係は、至って日本的かつ昭和的な事象であるといえます。

これまでも、東芝のような政商的な企業以外でも官庁との関係が深くなりがちな免許業務や規制業務を扱う業界では、表に情報が出るケースは少ないですが、企業から裏筋でのヘルプ申し出により所轄官庁がその企業に資するような対応をして、結果的に株主利益に反する裏支援をおこなってきたと言う事象は枚挙にいとまがないといえます。

その大きな要因を作り出すベースとなってきたのが「天下り」であり、古くから経常的に天下りポストを用意する大企業サイドの姿勢にも大きな問題があると考えます。

物言う株主、海外資本が”なれ合い”に冷や水を浴びせる形に

昭和の、まだ経営に国際的常識など斟酌する余地もなく、かつ企業経営においてガバナンスなどと言う概念も存在してなかった時代においては、それも黙認されてきた我が国の官庁と大企業の関係であったわけですが、今は違います。

今回の東芝の件は、「物言う株主」「海外資本」と言う昭和には存在しなかった、企業の所有者としての利益を明確に主張する株主たちに声を上げられ、真のグローバルスタンドを思い知らされると言う形で、昭和由来の大企業とそれを擁護する官庁に冷や水を浴びせた、と言うことになるのではないでしょうか。

共同通信社

免許制度や業務規制の下で官庁と企業の関係が深くかつ歴史的に「天下り」文化のある代表的業界としてまっ先に思いつくのは、通信業界や銀行界です。通信業界の監督官庁である総務省とべったりな存在といえば、何をおいてもNTTグループでしょう。

同社は元々が国営の電電公社であり、国とは正真正銘の親子関係にありました。現状も国が筆頭株主であり、民営化によって血は薄まったとはいえ親子関係は変わらずと言っていいでしょう。

NTTグループに対する国の要請による株主利益に反する行為といえば、菅首相肝いりの携帯料金の官製値下げがその最たるものであると言えます。

いくつかのフェーズを経た値下げ要請は常に、まずNTTグループのドコモに対しておこなわれ、同社が受け入れ態勢を表明することで他キャリアを追随させると言う流れは国とドコモの出来レースのなせる業に他なりません。

利用者にとっては恩恵のある政策かもしれませんが、管轄下の民間企業の利益を削るよう国が強い働きかけをすると言う行為そのものは、株主利益に反する国の不当介入とも受け取れます。

料金値下げ前に、NTTドコモを上場廃止した裏側には、株主を親会社一社にすることで、株主からの批判を免れるためであったとも思えるところです。

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