- 2021年07月31日 20:44 (配信日時 07月31日 11:15)
「メダル獲得に感激してコロナ禍など忘れる」菅首相の狙い通りにさせていいのか
1/2日本が連日金メダルを獲得しても忘れてはならないこと
7月23日に開幕した東京オリンピックは連日、日本勢が金メダルを獲得している。
最初の日本の金メダルは、柔道男子60キロ級の高藤直寿(28)だった。前回リオデジャネイロ五輪で銅メダルとなった雪辱を果たした。報道陣のインタビューには「豪快に勝つことはできなかったが、これが僕の柔道」と涙声で語った。これが実に良かった。
柔道男子73キロ級の大野将平(29)も期待通りに五輪連覇の金メダル獲得を達成した。同じ柔道で「きょうだいで金メダル」を目標にがんばった男子66キロ級の阿部一二三(23)と女子52キロ級の詩(21)は、兄と妹そろって見事に金メダルに輝き、夢を実現した。
ソフトボールでは日本がエースの上野由岐子(39)を軸に宿敵アメリカを制して優勝した。卓球新種目の混合ダブルスは水谷隼(32)と伊藤美誠(20)のコンビが勝ち、日本としては初めての卓球オリンピックの金メダル獲得となった。
驚いたのが、新種目のスケートボード女子ストリートでの日本史上最年少の金メダル。記者会見で「(ご褒美は)焼き肉です」と笑顔を見せた中学1年の西矢椛は、13歳10カ月26日での金メダル獲得だった。1992年のバルセロナ五輪の競泳女子200メートル平泳ぎを14歳6日で金メダルを獲得した岩崎恭子を抜いた。
国民を選挙のための票田としか考えていない
日本選手の金メダルの吉報は続き、この沙鴎一歩も原稿を書く手を止めてついテレビのライブ放映に夢中になってしまう。
なるほど、これが菅義偉政権の狙いなのだろう。菅首相はワクチン接種のスピードを上げることで新型コロナを収束に向かわせるとともに、東京オリンピック・パラリンピックを成功させ、その成功をテコに自民党総裁選と衆院総選挙に勝って首相を続投することを目指している。

東京都で新型コロナウイルス感染者が2848人と過去最多を更新し、記者団の質問に答える菅義偉首相=2021年7月27日午後、首相官邸 - 写真=時事通信フォト
首相官邸には「五輪が開幕すれば、国民はメダルの獲得に感激し、新型コロナ禍など忘れてしまう」との声がかなり前からあった。菅政権は国民を選挙のための票田としか考えていない。私たちを馬鹿にするのは止めてほしい。
たとえ東京五輪でメダル獲得が続いても決して忘れてはならない。東京オリンピックの開催中も新型コロナの感染は増え続け、緊急事態宣言下であることに変わりはない。金メダル獲得を喜ぶ声が上る一方で、重症化して苦しむ患者や、軽症で隔離状態となる感染者は多い。なかには運悪く死亡する人もいる。医療の逼迫(ひっぱく)も懸念される。
7月末には感染の75%以上がデルタ株に置き換わる
7月27日の火曜日、東京都は「都内で新たに10歳未満から100歳以上までの男女合わせて2848人が新型コロナに感染している」と発表した。1週間前の火曜日の2倍以上の感染者数に上り、過去最多である。1日に2000人を超えるのは、第3波の今年1月15日以来となる。
感染者のうち65歳以上の高齢者の割合は2%台で、30代以下が7割を占める。40代、50代の入院が増え、インド由来の変異ウイルスの「デルタ株(L452R)」の割合も急速に増加。感染経路は「家庭内」が最も多く、これに「職場内」「会社・施設内」「会食」が続いている。
楽観的に見れば、今後さらにワクチンの接種層が広がり、全体の感染者は減り、重症者や死者も減るとは思う。いわゆる集団免疫の獲得だが、そこまで行きつくにはどれだけ早くても10月以降だろう。ただし、これもウイルスが大きく変異しなければ、という楽観的な仮定である。
国立感染症研究所によると、デルタ株の感染力はイギリスで確認された変異ウイルスの「アルファ株(N501Y)」と比べても1.4倍の感染力があり、このまま感染が広がると、7月末には感染の75%以上がデルタ株に置き換わる。
東京都が4回目の緊急事態宣言に入ったのが、7月12日の月曜日だった。それから2週間となる26日の月曜日は1429人の感染が確認され、1日の感染者数が1000人を超えるのは7日連続となった。
本当に東京五輪を中止しなくていいのだろうか
2848人という過去最多の感染者数を記録したことに、菅総理大臣は首相官邸で記者団に質問されて次のように語った。
「各自治体と連携しながら、強い警戒感を持って、感染防止にあたっていく。重症化リスクを7割減らす新たな治療薬を政府で確保しているので、徹底して使用していくことも確認した」
「改めて国民の皆さんには、不要不急の外出は避けていただき、オリンピック・パラリンピックは、テレビなどで観戦をしてほしい」
「車の制限やテレワークのほか、皆さんのおかげで人流は減少しているので、(東京オリンピックを中止するような)心配はない」
本当に東京五輪を中止・中断しなくていいのだろうか。もはや、「首相を続投したい」とのおのれの欲望を優先するような首相は信用できない。与党議員からは8月24日から始まる東京パラリンピックの中止を求める声が上り、自民党内では「今度の衆院選は菅さんでは負ける。選挙の顔となる党総裁を新たにすえ、新首相のもとで選挙戦を戦うべきだ」との意見も出ている。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kanzilyou
7月28日には都内の感染者が3000人を超え、7月29日には1日の全国の感染者が初めて1万人を超えた。過去最多の感染者数の更新が続いている。
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