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オリンピックからの学び ~日本政治・日本経済の復活を願って~

【起】

最近、知人たちなどから、オリンピックについての感想を良く聞かれる。

私はアスリート経験があるわけでもなく、告白すれば、どちらかと言えば運動音痴であるわけで、もちろん、聞き手も私にスポーツとしての評価や解説を期待しているわけではない。聞かれるのはオリンピック・パラリンピック開催の是非についてである。

私は、今年の早い段階から、JBpressでの拙稿(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64169)や「月イチ・イチ郎」という名のYouTubeチャンネル にて、2025年の大阪・関西万博との接続も意識して、東京オリンピック・パラリンピックは、水墨画その他の日本のアートなどに代表される日本的無常観(余白・空白への意識)を前面に出しつつ、「積極的無観客主義/アスリートファースト全面推し」で開催すべきだと主張してきた。

この主張に対しては、政治・行政に近い人からは、「朝比奈君、主張は確かに分かるが、政権としてはオリンピック開催を何としても実現したいわけで、無観客カードは最後まで取っておいて、追い込まれたら切ると思うよ」と言われることが多かった。確かに、今年の早い段階から無観客カードを切ってしまって、批判が集中して中止に追い込まれたら困る、という政権中枢の心情は理解できる。

【承】

ただ、ここは、やはり「無観客による安心感」を「日本的無常観」と結び付けつつ、積極的に政権や日本の姿勢を打ち出すべきだったと感じる。それが、政治の役割であり、国民に訴えかけて反応を見極めるという基本的コミュニケーションなしには、つまりは信頼なしには、政治は立ち行かない。

哲学・メッセージの欠落というデメリットを一番痛感したのが、開会式である。数々のアトラクションを見ながら、改めて、政治における抽象的思考とその発出の重要性を強く意識した。今回のオリンピック・パラリンピックでは、そのことが決定的に欠けていたため、開会式の演出には物凄く苦労したのではないかと愚考する。

今回の開会式では、敢えて言えば、哲学として「多様性の大事さ」を旨としていたとの説明があるわけだが、正直、そのメッセージは、どこの都市で開催していてもIOCとして出さねばならないもので、いつでもどこでも同じだ。日本がオリンピック・パラリンピックをホストするという意味、東京大会全体を通底する哲学・理念が、今回は全く感じられず、それらを象徴する機会とも言える開会式は、とてもぼんやりとしたものとなった。

順不同にはなるが、ドローンによる地球の演出、市川海老蔵の歌舞伎、森山未来のダンス、MISIAの国歌斉唱、真矢みきが大工の棟梁になった木やり歌、イマジンの合唱リレー、ピクトグラムの実演、、、と、書き出すとキリがないほど、一つ一つの出し物は豪華で見ごたえがあったものも少なくないが、全体を通して観ると何とも退屈であった。

完全なる事実かどうかは分からないが、週刊文春に出た暴露記事には、元々の開会式の案がいびつな形に変わって行く過程が克明に記されている。そこに書かれている様々な愛憎や政治の横やりなどからくる圧力も、事実であれば、確かに開会式全体に通底するメッセージ不足を生み出した要因であるとは思う。

しかし、そうした面白おかしい残念なプロセス以上に、そもそも、この東京オリンピック・パラリンピックには、哲学・メッセージが無かったことが痛手だ。哲学がなければ、それを具体的に表象しようにも元がないので、開会式のぼんやり感は、最初から約束されていたようなものだと言っても過言ではない。

【転】

では、開会式の混乱が象徴しているように、この東京オリンピック・パラリンピックは失敗と言えるのだろうか。連日の日本勢のメダルラッシュを見て、そう言い切れる人は少ないであろう。開催への懸念をあれだけ煽っていた各メディアが急に態度を変えて大会を盛り上げているさまを「手のひら返し」と揶揄する向きも多いが、裏を返せば、日本選手の凄まじい活躍ぶりが、メディアの態度を変えてしまったとも言える。

まだ日程の約半分を終えたところだが(7月30日17時現在)、日本勢は金メダル数で15個と、過去最高のアテネ大会や前回の東京大会(16個)と並びつつある。テレビはもちろん、各種SNSでもオリンピックの話題が飛び交い、国民の多くは、反対論はどこ吹く風で、手に汗を握って画面を見つめている。

我々は、このことから何をどう理解すればいいのであろうか。一言で言えば、日本選手の活躍から「スポーツがくれる勇気」を得て、我々一人一人が「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」べきであり(日本国憲法前文)、そこに向けて、個人として、社会として、思い切ったチャレンジをすべきであるということに尽きるのではないか。より丁寧に書けば、一度は、オリンピック的には没落したとも言える日本スポーツ界が「復活」した姿勢に学び、特に経済面での再興を真剣に意識するべきではないか、と強く感じる。

良く知られた話ではあるが、前回の64年の東京大会の金メダル獲得数(16個)や総メダル獲得数(29個)を一つの頂点として、日本はジリジリと獲得メダル数を減らしていった。88年のソウル大会(金メダル4個・総メダル数14個)、96年のアトランタ大会(金メダル3個・総メダル数14個)と、一時はどん底状態となった。特に90年代は、バブル経済崩壊後の後遺症の長さから日本では「失われた10年」とも呼ばれていたわけで、経済的な日本の存在感の低落と比例するかのように、オリンピック・スポーツにおける存在感も凋落し、「残念な国」感が半端なかったとも言える。

その後、わが国は、幅広い分野に競技強化費を重点的に投下し、最新のスポーツセンターを整備するなどして選手強化につとめ、若い世代の人口はどんどん減っているにも関わらず、獲得メダル数を増加させてきた。

特筆すべきであるのは、繰り返しになるが、すそ野の広がりだ。金メダル数で過去最高だった先述のアテネ大会(16個/04年)や、総メダル数で過去最高だったリオデジャネイロ大会(41個/2016年)でメダルを獲得した競技数は、それぞれ11~12分野であるが、今回の東京大会では、現時点で既に10分野となっている。既にメダル獲得が確実になっているフェンシングやボクシングなどを考慮すれば、過去最高の競技数になるのは確実であろう。

【結】

かつて、世界の時価総額ランキングにおいて、上位30社中の21社を日本企業が占めた時代もあった(現在は0社)。世界のGDPの2割弱を日本が占めたこともあった(現在は5~6%程度とされる)。その後の凋落は改めて言うまでもない。アカデミアにおける論文引用数、出生率・出生数など、国際的にみて激しく低落してしまっている分野は残念ながら少なくない。

特に日本企業の競争力などを、低落状態から復活させていくためには、まさにオリンピックでの復活を印象付けている「幅広い分野」でのすそ野の向上が必要なわけだが、様々な分野から、新たなベンチャーが、世界に伍せるようなメガベンチャーになっていくようにすることが望まれる。新しい分野での日本の若手・起業家などの活躍が鍵だ。

(特に日本復活のため、次代に向けてのベンチャー企業育成に関心がある方は、昨日アップされたJB pressでの私の論考も読んで頂けると幸いである。)

しかし、現状は、残念ながら、未だに多くの日本人が、既存の枠組みにしがみついて何とか逃げ切ろうとしてジリ貧に陥っているように見えなくもない。優秀な学生が徐々にではあるが、就職先にベンチャー企業や起業そのものを選ぶなど、希望の萌芽も見え始めているが、逆に、チャレンジ精神というよりは「安定しているから、親が勧めるから」などの理由で多くの学生が医学部を選んでいる現状があるなど、残念な面も多い。

経済・企業などを例にとって考察を加えたが、一般的にも、東京オリンピック・パラリンピックから学ぶことはとても重要だ。反面教師も含めてになるが、特に日本の政治や経済の分野において、しっかりとした哲学をもってメッセージをはっきり周囲に伝えつつ、復活・復権のための戦略策定への取り組みと惜しみない努力をすることが、個人としても社会としても今求められていると感じる。

確固たる哲学とチャレンジ精神をもって、資金や人材の投入を惜しまない姿勢が大事であると、日本選手のガッツポーズやうれし涙を横目に見ながら感じているのは恐らく私だけではないと思う。開催まで、そして開会式でもまだ、先述のとおり混乱を極めた東京オリンピック・パラリンピックではあるが、日本選手の活躍から学べることは大きい。

単に結果に一喜一憂するだけでなく、感情面からのエネルギー注入、そして、再興のための戦略や努力についても学ぶことが大切だ。我々一人一人の「始動」(=リーダーシップ)が今、問われている。

筆頭代表CEO
朝比奈 一郎

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