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【ウォルマート】、ITを中小店へおすそ分け!古いチェーンストア理論は今すぐ捨てろ?


■ネット通販最大手のアマゾンが独自に開発したレジなし技術をライセンス供与しているように、世界最大手のチェーンストアが世界最先端ITを中小零細企業に有料でおすそ分けをすることを決めた。

ウォルマートは28日、ウォルマート・ペイやスキャン&ゴーなど同社が開発したITを小売店などにライセンス制で提供することを発表した。

その一環としてECプラットフォーム支援の「アドビ・コマース(Adobe Commerce)」と提携し、クラウドベースでサービスを提供していく。

ウォルマートは中小小売店に小売のサービス化である「ラース(RaaS:Retail as a Service)」にサービス化したソフトウェア「サース(Saas:Software as a Service)」で支援することで新たな売上チャネルを作ることになる。

つまりウォルマートはこれまで蓄積してきた流通ITを他社に提供することで、モノを売るだけでなく、テクノロジー系サービス企業として脱皮していくのだ。

ウォルマートはここ数年、莫大なIT投資を行っている。最近でも今年1月、これまでの設備投資額に36%上乗せして投資することを発表した。

ここ数年、店舗数を減らしながら新規出店投資を減速し、投資比率で最も大きくなっているIT等への投資をさらに加速させるのだ。

一方、今回の発表により世界最先端となるITで投資回収を図ることにもなる。

例えばサムズクラブ全店で導入されている、お客が商品バーコードをスキャンしながら買い物を行いアプリ上で決済することでレジを素通りする「スキャン&ゴー(Scan & Go)」が他社でも利用可能となる。

サムズクラブの競合であるコストコが、スキャン&ゴーを採用することも考えられるのだ。

ウォルマートの成長戦略の柱となっているネットスーパーのカーブサイド・ピックアップでも中小のスーパーがそのノウハウを利用できるようになる。

その一つがAIを使った代替品の選出だ。

 ネットスーパーでは注文時にすべての注文品に対して代替品のチェックボックスがあり、チェックしておけば該当商品が品切れの場合、例えば注文したオレンジジュースの代わりになる商品が送られてくることになる。

オレンジジュースの代替品といってもアップルジュースに代わることはなく、同じブランドで容量の大きいものや品質の高いものが選択される。

品切れが多く代替品が多くなれば、アップグレードされた商品であってもお客の満足度は低くなる。カーブサイド・ピックアップでは、受け取り時に代替品の確認を行うことになる。

提案した代替品が気に入らなければその場で返品ということになり、顧客の満足度は下がるばかりか、店側にとっても大きなコストが発生する。

しかしネットスーパーの倉庫と兼用する売り場では、セール時に品切れが生じやすく代替品が不可避となる。

ネットスーパー展開で代替品率を下げるだけでなく、顧客が受け取れるベストの代替品をチョイスすることが求められるのだ。

ピッカーの勘に頼った代替品の選択では、人によってばらつきがでるどころか、いつまで経っても問題の解決に至らない。

この問題を解消するため、ウォルマートでは代替品の選択に人工知能(AI)を利用し、顧客の受け入れ率(customer acceptance)を100%に近づけているのだ。

ウォルマートは最近、AIを利用して代替品の受け入れ率を97~98%に向上させていることを発表している。AIのディープラーニング(深層学習)がサイズやタイプ、ブランド、価格、購買履歴、消費者の嗜好、在庫など100近くの変数を考慮して代替品を決定しているのだ。

つまりネットスーパーの注文品をピッカーが売り場でピッキングする際、欠品していれば自動的に次に入手可能な最適なアイテムを提案することになる。

精度を高めた学習アルゴリズムによってピッカーは指示された商品をピッキングすれば良いだけとなるのだ。

例えばチェリーヨーグルトが売り場になく、顧客も注文時に代替品にOKを出しているのなら「同じブランドのストロベリー等の違う味を選べばいいか」もしくは「より高価なブランドのチェリーヨーグルトをピッキングするのか」などすべてAIが判断するのだ。

つまりこういったAIを利用したクラウドベースのITサービスまで他社提供することになる。

 同時に中小零細小売店はアドビ・コマースを介してウォルマート・マーケットプレイスでの出品が容易になるのだ。

 他社に提供できる流通ITやその料金はまだ不明だが、中小企業を対象にしていることから利用可能性の高いITであり、料金もそれほど高くもないはずだ。

 アマゾンがリアルでの出店を加速するのとは逆にウォルマートはまるでIT企業化しているようだ。

トップ画像:ウォルマート・カーブサイド・ピックアップで注文品を返品するIT&オムニチャネル・ワークショップ参加者。ウォルマートでは欠品時の代替品チョイスをAI利用しているが、こういったネットスーパーITも他社が利用できるようになるのだ。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。ネット記事にはいまだにチェーンストア理論で理屈展開する方を見受けます。車で例えればチェーンストア展開はかつてエンジンだったわけですが、それがエンジンの一部になっただけだという主張です。「チェーンストア理論におけるハイブリッド理論」とか体裁よく横文字を使いながらも馬の頭数を増やす馬車思考は止めてもらいたいです。米国での最新事例から分かることはチェーンストアはすでにエンジンではなく、車輪の一つという考えです。

ウォルマートはここ2年、店舗数を減らしています。しかも売上は伸びているという、従来チェーンストア理論ではあり得ないことが起きています。その一方で同社のクローズド・ループで広告代理店のような事業で売上をあげていこうともしています。ネットスーパーなどに対応したデマンド・サイド・プラットフォームを利用してメディア化するのです。そしてウォルマートが開発した流通ITを他社も利用できるようにするということ。日本の大手流通企業でも考えられないことをやるのです。

 モノを少しでも安くし国民大衆の生活を少しでも豊かにするという考えのチェーンストアは終わりました。DX以前に、考え方のトランスフォーメーションが求められているのです。古い理論は今すぐ破壊しなさい、捨てなさい!

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