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「子育ては富裕層のぜいたくに」日本の"少子化対策"は超少子化を加速させている

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日本政府の家族関係支出の対GDP比は、国際的に見て非常に少ない。日本大学文理学部の末冨芳教授は「低所得層やひとり親だけでなく、中高所得層まで追い詰められている。このままでは少子化はさらに加速するだろう」という――。(後編/全2回)

※本稿は、末冨芳・桜井啓太『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

財布を持つ手
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yuliya Padina

子ども・家族への少なすぎる政府投資

(前編から続く)

「子育て罰の厳罰化」を行う菅政権のままで、日本は大丈夫なのでしょうか。図表1は、財務省の研究機関である財務総合政策研究所で、東京大学の山口慎太郎教授が報告した資料から引用したデータです。政府による家族関係支出が増えれば、出生率が増えることをあらわしています。

出典=財務省財務総研「人口動態と経済・社会の変化に関する研究会」第2回資料 山口慎太郎「家族政策が出生率に及ぼす影響」(2020)
出典=財務省財務総研「人口動態と経済・社会の変化に関する研究会」第2回資料 山口慎太郎「家族政策が出生率に及ぼす影響」(2020)

日本政府の家族関係支出の対GDP比は国際的に見て非常に少なく、少子化も深刻な状況であることが確認できます。この状況を鑑みるに、日本政府が取るべきなのは児童手当の特例給付の廃止ではなく、所得にかかわりなく子育て支援全般を手厚くする政策ではないでしょうか。あらゆる子どもに基礎的な児童手当を支給しつつ、児童手当と教育の無償化を低所得世帯に手厚く加算し、高校無償化や大学無償化の所得制限緩和をしていくことが必要なのです。

児童手当の特例給付廃止に否定的なのは、私だけではありません。財務省・財務総合政策研究所で少子化対策について提言している研究者たちの多くが同じ意見です。先のデータを発表した山口慎太郎教授は、東京新聞のインタビューで次のように答えています。

「日本の少子化はもはや単体の政策で効くような状況ではない。個々の政策ではなく、少子化対策のパッケージとして捉え、経済的な負担を取り除く必要がある。児童手当や保育所の整備を含む支援策が、合計特殊出生率を上げたとする実証研究は世界中にある」

〔「世界的に見ても貧弱な少子化対策 日本は子育て支援増額を」(東京新聞2020年11月30日)〕

児童手当の特例給付廃止は、超少子化を加速させる

また、中央大学の山田昌弘教授は、同じく東京新聞に次のようにコメントしています。

高所得世帯向けの特例が廃止されれば、若者世代がもらえたはずの手当がなくなるんだと萎縮し、第2子、第3子はやめておこうとなる。少子化対策には完全に逆行する。予算を削るのではなく、全体を底上げすべきだ。〔「児童手当、高所得世帯の廃止を検討 『夫婦の合計』に変更、対象絞り込む」(東京新聞2020年11月14日)〕

とくに、家族経済学の第一線の研究者である山口慎太郎教授は、記事の中で「日本は世界的に見ても少子化対策にかけるお金が貧弱」と指摘しておられます。今回の児童手当の特例給付廃止は、そもそも貧弱な子育て世代への財源を削ってしまうという意味で、少子化対策に逆行するどころか、超少子化を加速させてしまう愚策です。

日本は児童手当等の現金給付政策が弱い

私も、義務教育段階での政府の教育支出と家族関係支出との関係を国際比較したことがあります(※1)。図表2は政府からの家族・教育関係支出(子ども1人あたり・米ドルベース)を棒グラフであらわしたものです。棒グラフの一番下の黒とグレーの部分が児童手当・扶養控除などの現金給付策(税優遇策による家計への税控除含む)となっています。

出典=財務省財務総研「人口動態と経済・社会の変化に関する研究会」第2回資料 山口慎太郎「家族政策が出生率に及ぼす影響」(2020)
出典=財務省財務総研「人口動態と経済・社会の変化に関する研究会」第2回資料 山口慎太郎「家族政策が出生率に及ぼす影響」(2020)

山口教授の示した家族関係社会支出の図(図表1)と同様に、6~11歳段階でも日本の子どもへの政府支出は少ないことがわかります。だからといって棒グラフの白い部分で示した政府支出教育費が国際的に見て手厚いかというと、そのようなこともないのです。日本の6~11歳の家族・教育関係支出は6万4050ドルと、比較可能な国の中では中程度にすぎません。

また、政府が支出する教育・家族経費の中で教育費が占める比率をあらわしたものが図表2上の折れ線グラフです。子どもに対する政府支出のうち教育費の比率が0.76と教育に偏っており、児童手当等の現金給付政策が弱いという特徴が確認できます。

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