- 2021年07月26日 15:41
伊丹アイホール存続をめぐる議論
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これは一見、市民中心の施設の用途転換で良い策のように見えるが、慎重に考えなければならない。第一に、現在はクライミングが流行しているので市民の注目を引く転換案に見えるが、長期的にはどうだろうか? 公共施設は、10年後、20年後の伊丹市の未来や、子どもたちへの教育の展望を見据えて運営の良し悪しを考えなければならない。もし、伊丹市が今後、クライミングを市民活動の象徴とし、全国的に評価の高い施設運用とするならば、その案も良いものになるだろう。今後の伊丹市にとて、演劇活動とクライミングのどちらが発展に寄与するのかを正面から議論すれば、どちらの案が採用されても実りがあるものになると思われる。しかしながら、現在出てきている情報は、短期的な資金運用についての議論だけであり、もしクライミングの流行が終わってしまったとすると、その施設にはなんの蓄積も残らない危険がある。そのため、長期的な視野を持って公共空間のあり方を議論する必要がある。
第二に、すでに全国的に高く評価されているアイホールを潰してしまうことの損失の問題がある。現在、多くの地方自治体は市外・県外からの観光客の誘致に躍起になっている。コロナ渦でそれは途絶しているが、いずれ、自治体内部だけではなく、外部からも魅力的な地域づくりが求められる機運は高まるだろう。そのとき、アイホールの市外利用者の多さは伊丹市にとっても有益になる可能性はある。必ずしも「地元の施設」が「地元に閉じる」必要はないのである。むしろ、ここまで市外者からの利用があることをアドバンテージに変える手を考えることで、伊丹市の長期的な税収増につなげられるかもしれない。そう考えると、現在の問題解決方法は「アイホールの採算性を上げること」であり、用途転換だけが選択肢ではないことがわかる。
第三に、今回の議論が全国的な公共劇場の運営方針に影響を与える可能性がある。たしかに伊丹市単体で見れば、アイホールの採算性の低さは大きな問題ではあるが、質の高い文化事業を提供してきた点では非常に優れた施設である。文化には金がかかる。そのため、税収が低調になった時に、一番に切り捨てられるのは文化事業になりやすい。そして、残念ながら「文化事業の質」と「収益」は必ずしも比例しない。だからこそ、自治体によって公共の力で文化を支える必要があるが、その根幹がアイホールの用途転換により崩れてしまうかもしれない。
以上の3点から、アイホールの用途転換には慎重であるべきだと私は考えている。しかしながら、7月後半にニュースが出てから、すでに伊丹市は早ければ9月には報告を出すとしている。これはあまりにも拙速な判断であると思われる。
この問題については、「アイホールの存続を望む会」が署名活動を始めている。私もすでに署名した。



