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  • 2021年07月26日 09:36 (配信日時 07月26日 06:00)

第45代米大統領が犯した7つの〝大罪〟- 斎藤 彰(ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)

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米国の新旧大統領交代から、6カ月を経過した。この機会に、トランプ前大統領が残した“負の業績”を整理し直してみることにする。それは「7つの大罪」と言ってもいい深刻なものだった。

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1. デモクラシー蹂躙

自由主義諸国がよって立つデモクラシーは、3つの要素によって支えられている。すなわち、人民による統治、言論・報道・集会の自由、そして法の支配だ。

ところが、彼は在任中、これらを軽視し、無視してきた。

最たるものが、昨年大統領選挙結果の受け入れ拒否だ。バイデン民主党候補との戦いに敗れ、ホワイトハウスを去って半年以上たった今も、機会あるごとに、支持派集会で「選挙を奪取された」との根拠なき主張を繰り返している。

在任中、政権批判を受け入れず、CNNテレビ、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズなど有力メディアの報道を頭ごなしに「フェイク・ニュース」ときめつけ、主としてトランプ政権の主張を受け流すFox Newsテレビを足場に客観性に乏しい自説を展開してきた。

白人警察官の暴行による黒人死亡事件に関連し、ホワイトハウス前広場で開かれた抗議集会では、一時、軍投入による鎮圧の意向を国防長官、統合参謀本部議長に打診するなど緊迫した場面が伝えられた。その一方で、選挙結果を覆すために、暴徒化した熱烈支持者による連議事堂乱入にエールを送った。

有力誌「Foreign Affairs」は最新号で「彼はホワイトハウスの4年間を通じ、政敵の強制連行や収監を主張し、白人至上主義者に対し人種差別抗議集会での暴力を呼びかけ、リベラル派判事、連邦捜査局(FBI)、自ら任命した司法長官、政府倫理局、その他、自らの政治的意思に従わない組織や個人に対する戦争を仕掛けた」と厳しく批判した。

実際、大統領自らが平時において、これほど先頭に立ってデモクラシーの根幹を揺さぶったケースは、途上国はともかく、他の先進諸国において、前例がないだろう。

2. コロナ禍軽視と危機拡大

彼は退任後、比較的短期間でワクチン接種が進んだことについて「自分が開発を急がせたからだ」と自画自賛のコメントを繰り返した。しかし、これは事実誤認も甚だしい。ファイザーなどのトップ薬品メーカーは、昨年春に国内感染が急拡大する以前から開発に着手していた。トランプ政権の初期対応の遅れにより、事態が深刻化してきたため、大慌てで各薬品メーカーに開発・製品化を急がせたというのが実態だ。

それまでの大統領のコロナウイルス問題に対する言動は、目を覆いたくなるほどの無知、偏見、怠慢をさらけだしていた。

米国内での感染者が伝えられ始めた昨年2月、ホワイトハウス記者団の質問に対し「感染者はたった数人だ。心配ない」「春になれば終息する」「(感染拡大を警告する)CDC(連邦疫病予防センター)の言い分は信用できない」などと一笑に付し、その後さらに状況が悪化し始めてからも「夏休みまでには収まる」「レーバーデー(9月)連休中にピークを過ぎる」「サンクスギビングデー(11月)までには終わる」などと分別のない自説を伝播させてきた。

この間、猛烈な勢いで感染が広がってからも、CDCが指導する「3蜜」回避措置を無視し続け、各地で開かれた支持派政治集会にはひんぱんに姿を見せ、マスクを着けないまま長広演説を繰り返した。

結局、自らも感染が確認され、緊急入院、集中治療を余儀なくされたが、退院日にホワイトハウスに戻った際、待ち受ける報道陣の前で、それまで着けていた自分のマスクをバルコニーから投げ捨てるというハプニングまであった。

超大国の最高指導者として、コロナ感染抑制の範を示すべき人物が、無責任極まりない振る舞いを見せ、大きな話題となった。

こうしたコロナ失政の結果、全米の感染者数3370万人、死者も60万人という桁違いの世界最悪記録をもたらした。中国に比べ人口では4分1以下ながら、感染者数で中国の約300倍、死者数も110倍以上という“大惨事”に至らしめた。

アメリカが突出した保健衛生上の深刻な苦況に追い込まれた背景には、複数要因があるものの、トランプ政権の当初からの怠慢が果たした役割は甚大だったと言わざるを得ない。

3. 国論分断

彼は、大統領就任前から伝播させてきた特異な主張、すなわち「トランピズムTrumpism」をホワイトハウス入りしてからもトーンダウンさせるどころか、政策に反映させ、国論の分断に拍車をかけてきた。

「トランピズム」とは、反移民主義、極端な保護貿易主義、政府・官僚機構無視、反エリート主義、デマゴーグ主義などを特徴とし、多くの低学歴労働者、農民層の支持をベースにしてきた。

そのこと自体を打ち消すべきではないが、問題は、大統領の立場で、事実と異なる虚言を繰り返し、国民世論を混乱に陥れたことだった。本人が在任中にツイッターなどを通じ発したあからさま虚言や不正確な発言回数は、実に3万573回(ワシントン・ポスト紙調査)にも達した。

その結果、トランピズムの代弁者と評されてきたFox Newテレビなどの影響もあり、国民の半数近くが、歪曲された現実を受け入れてきた。

その一つが、昨年11月大統領選挙の「大規模不正」説であり、今なお、共和党支持者の6割が「トランプ再選」を信じているほか、連邦議会共和党下院議員の実に7割が「大統領選挙は奪取された」と主張し続けている。

さらに、コロナ感染対策についても、多くの支持者が大統領在任中のトランプ言動を信じ切り、マスク着用を頑固に拒否し続けてきたため、南部を中心にデルタ変異種の感染が再び広がり始めている。

つい最近では、ワクチン接種についても、トランプ支持州を中心に、接種の徹底を呼びかけるバイデン政権のPR作戦を「個人の自由の侵害」だとして頑固に反対する動きが広がりつつある。彼を支持する右翼団体は、バイデン政権が軍施設や大規模公共施設にも協力を呼びかけ、ワクチン接種の徹底策を打ち出したことに対し「ナチズムを想起させる暴政」との極論を展開するなど、国論の分断に拍車をかけさせている。

前大統領の主張に“囚われの身”となったかたちの野党共和党は、民主党政権が打ち出す政策や法案にことごとく反対、一国としてのまとまりのある政治が機能マヒ状態に陥っている。その責任の大半が、彼個人の言動にあることは否定できない。

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