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アベノミクスはリスク後退の流れに乗ったもの

 日本ではアベノミクスへの期待から、円安株高が進んでいるとされているが、何度も繰り返すようだが、これはあくまで円安の流れを加速させた要因に過ぎない。昨年からの円安の動きは、欧州の信用不安の後退が大きな要因になっている。

 欧州中央銀行(ECB)は1月25日に、1月30日から返済が可能になる2011年12月の初回の長期リファイナンス・オペ(LTRO)で供給した4892億ユーロについて、278行が合計1372億ユーロを返済すると発表した。この金額は事前予想の1000億ユーロをも上回ったようである(ロイターの記事より)

 2011年12月8日のECB政策理事会で、流動性を供給するため期間36か月の長期リファイナンス・オペ(LTRO)を新設した。12月のLTROによる4892億ユーロの資金供給により、銀行の資金繰りが楽になり、さらにその資金はいずれ国債に向かうであろうとの期待もあり、それがユーロ圏の国債市場を支えた格好となった。

 2012年からにユーロ危機が収束を迎えつつあるのは、このECBによる長期の資金供給策もかなり影響していたとみられる。その資金の返済額が大きいということは、ユーロ圏内の銀行の資金繰りもそれなりに解消に向かいつつあることの現れとも言えよう。

 これを受けて 欧州銀行間取引金利(EURIBOR)先物は、2013~2015年のすべての期間で価格が低下し利回りが上昇した。1年物ユーロ圏無担保翌日物平均金利(EONIA)は0.22%と6か月ぶり高水準をつけたそうである(ロイター)。

 ドイツの2年債利回りは0.28%まで上昇し、米国の2年債利回りを約2年ぶりに上回った。オーストリアとベルギー、オランダ、フランスの2年債利回りも上昇した。これにより、歴史的な超低金利時代が終焉に向かう可能性が強まったと言える。

 28日にドイツの10年債利回りは1.7%近辺に上昇、英国の10年債利回りも2.1%と再び2%台に乗せてきた。米10年債利回りも28日に一時2%に上昇した。これに対して、スペインやイタリアの10年債利回りは低下基調となっている。

 欧州のリスク後退の動きについては、いまだ疑心暗鬼という方も多いと思われるが、少なくとも最悪期は脱してきていることは確かではなかろうか。ところが、それを示す証拠というか兆候がなかなか見当たらず、今回のLTROでの供給資金の返済の動きがひとつの象徴的な動きと捉えられたものと思われる。

 東洋経済オンラインの「為替は日本の金融政策で自由に動かせない」との記事で、野口悠紀雄氏が昨年1月から最近にかけてのドル円とイタリアの10年国債のグラフを合わせたグラフを掲載していた。これを見れば、ほぼ動きが連動していることがわかる。つまり欧州の信用不安に対しての市場の見方は、イタリア国債の利回りの動きでも示されており、それとドル円の動きが連動していたのである。11月以降の円安ピッチが多少速くなっているが、これはアベノミクスの影響もあったことも確かであろうが、その間のイタリアの国債利回りも低下を続けていたのである。

 今回の円安はどこまで進むのかは、アベノミクスの行方次第とか日銀の追加緩和次第とかではなく、欧州の債務危機の解消の動き次第ということになる。昨年までの急激な円高そのものが、そもそも国内要因によるものではなかった。日銀の緩和が足りなかったとの説もあったが、これは今回の動きを見ても後講釈に過ぎないであろう。アベノミクスで円安、そして株高が起きたと連想すると、今後の日銀への圧力がおかしな格好で掛かる懸念もある。あくまでアベノミクスは世界的なリスク後退のの流れにうまく乗ってきたもの、と考えておいた方が良さそうである。

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