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わずかに上昇幅を拡大した消費者物価指数(CPI)は基準改定でホントはマイナスか?

本日、総務省統計局から6月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は先月統計で+0.1%と1年2か月振りの上昇となった後、今月も+0.2%と上昇率をわずかながら拡大しています。他方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は▲0.2%と下落しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

6月の消費者物価0.2%上昇、2カ月連続プラス
総務省が20日発表した6月の消費者物価指数(CPI、2015年=100)によると、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数は101.7と前年同月と比べて0.2%上がった。2カ月連続でプラスだった。上げ幅は5月の0.1%を上回った。携帯電話の料金値下げで通信料が大きく下落したが、原油価格の上昇でエネルギー項目で広く上がり、全体を押し上げた。

エネルギー全体では4.6%上昇し、上昇幅は5月(4.2%)から拡大した。ガソリンは17.9%、灯油は21.4%上がった。電気代は1.7%低下したが、原油価格の上昇に伴って5月(マイナス2.9%)と比べて下げ幅が縮んだ。 自然災害の増加などを受けた値上げにより、火災・地震保険料が16.4%上昇した。国産品の牛肉を含む肉類は0.3%上がった。5月と比べても0.4%上昇した。米国や中国での需要増やアルゼンチンによる輸出停止で、牛肉は世界的に供給不足の状態だという。

一方で通信は15.5%下がった。特に携帯大手各社などによる料金引き下げが続いている影響で、携帯電話の通信料は27.9%下がった。下げ幅は5月と同じだった。20年6月に需要が高まり価格が高騰していたマスクを含む保健医療用品・器具は、昨年の反動もあり1.0%低下した。

いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。


まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは0.1%の上昇でしたので、やや上振れたとはいうものの、ほぼミートしました。引用した記事にもあるように、基本的には国際商品市況における石油価格の上昇という押し上げ要因がある一方で、政策要因、というか、政府からの強い圧力により、通信料(携帯電話)が下落しています。6月統計の前年同月比上昇率で見ると、エネルギーが+4.6%上昇し、ヘッドラインCPIに対して+0.35%の寄与があります。

とくに、エネルギーの中でもガソリン価格の上昇が大きく、+17.9%の上昇率を示し、ヘッドラインに対して+0.34%の寄与を持っています。他方で、通信料(携帯電話)が▲27.9%下落しており、ヘッドラインに対して▲0.54%のマイナス寄与を示しています。この携帯電話通信料の要因がなければ、ヘッドラインCPIの上昇率も+0.5%超の上昇を示していると考えられます。ただ、東京で再び緊急事態宣言がでましたし、先行きは、オリンピックなどとともに、まったく不透明ながら、国内需要の高まりとともに物価も着実に上昇幅を拡大する可能性が十分あります。

ただし、1点だけ注意すべきは、CPIの基準改定です。というのは、本日公表されたCPIは2015年基準ですが、2020年基準への改定スケジュールがすでに総務省統計局から明らかにされています。これに従えば、7月9日にすでに品目別ウェイトが明らかにされており、今後、8月6日に本日好評の6月統計も含めて遡及改定され、新しい2020年基準の7月統計が8月20日に公表される運びとなっています。

この新しい2020年基準ウェイトに従って試算された結果が、ニッセイ基礎研大和総研などからリポートで明らかにされています。どうしてもラスパイレス指数には上方バイアスがあることから、基準改定によりコアCPIの前年同月比上昇率で▲0.3%程度の下振れが予想されています。ですから、今日公表された6月統計の+0.2%は、ホントは、実力マイナスなのかもしれません。

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