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気仙沼市に住む人々は「復興」になにを思うのか ―― 日本災害復興学会・気仙沼市車座トーク

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宮城県気仙沼市。水産業で有名なこのまちも、地震や津波によって甚大な被害を受けた。東日本大震災直後、このまちではいったいなにが起きていたのか。そしておよそ1年半の間に、どんな動きが生まれ、このまちに住む人々はいま「復興」になにを思うのか。望ましい支援のかたち、復興のあり方とはなにか。気仙沼復興協会にて、気仙沼市に生きる人々と日本災害復興学会が語り合った。(構成/シノドス編集部・金子昂 )

永松 こんばんは。皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。

日本災害復興学会は5年ほど前に、復興についての経験や知識を学問として確立させ、よりよい復興を実現することを目標に設立されました。わたしたちはこれまで被災地に出向き、地元の方と車座トークを開催するなどの社会貢献活動を行ってきました。今日は気仙沼市で活動をされていらっしゃる皆さんに、震災や復興についてお話を伺いたく思い、お集まりいただいた次第でございます。

わたし自身、研究者として、復興の知識や災害の記録を伝えていく使命を持っていると同時に、いち人間として、復興のためになにができるか、日々自問自答をしてまいりました。被災地が抱えている問題が、われわれの知識によって簡単に解決できるとは思っていませんが、皆さんと議論をしていくなかで、少しでも復興のヒントを得ることができるのであれば、研究者として、教育者としてわたしたちができる最大の社会貢献だと思っています。今日は、皆さんのさまざまな意見を伺い、実りある車座トークになればと思っております。どうぞよろしくお願いします。

■自己紹介

福留 本日司会を担当させていただきます、東北工業大学の福留です。まずは皆さまに、簡単な自己紹介をしていただきたく思います。

永松 改めましてこんばんは。関西大学の永松です。

中林 明治大学の中林一樹と申します。日本災害復興学会の副会長を仰せつかっています。わたしはもともと建築出身で、都市計画やまちづくりを研究していました。学問は一般的に、個性(個別解)を追求するよりも一般解を追求すると言われていますが、復興には一般解があるのだろうかとつねづね悩んでおります。今日は車座トークを通して、皆様からいろいろなことを教えていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 こんばんは。台湾の実践大学から参りました、陳と申します。台湾は日本と同じように、自然災害の多いところです。将来の台湾の防災、復興の参考にさせていただければと思っております。

千葉 気仙沼復興協会の千葉です。気仙沼復興協会は、震災後に緊急雇用創出事業として活動させていただいている団体です。わたしたちはみんな被災失業者です。もともと気仙沼に住んでいましたが、今回の災害でより愛着が増してきました。10年後、長男が20歳になるとき、気仙沼がどんなまちになっているのか、非常に楽しみに思っています。今日はよろしくお願いします。

小松 気仙沼復興協会の小松です。復興協会では、労務の仕事を担当しております。また、「港町の縫いっ娘ぶらぐ」という、仮設住宅にいるお母さん方とランチョンマットやエコバックをつくって販売する仕事もしております。

吉野 気仙沼復興協会OBの吉野です。三ヶ月前に、もともとの仕事であるサメ肉の加工を再開し、気仙沼復興協会をやめました。いままさに復興事業から産業への道筋を一生懸命たどっている最中です。

鈴木 気仙沼復興協会写真掲載部の鈴木です。おもに津波で流された住宅の写真や床板などを、元の持ち主に配送する業務を担当しています。

三浦 気仙沼復興協会でボランティア受け入れ部のリーダーをしている三浦です。被災者が立ち上がっていくために、災害ボランティアの皆さんをコーディネートする仕事をしています。

奥山 皆様お疲れ様です。気仙沼復興協会の奥山です。わたしは人材サービスの会社に在籍しているのですが、宮崎県企業人材支援協同組合を通して復興協会と連携し、労務関係の仕事をお手伝いしています。

堺 こんばんは。気仙沼プラザホテル支配人の堺です。よろしくお願いいたします。いま震災の特需で、観光客や視察団体がたくさんいらっしゃっています。この特需期が終わったとき、気仙沼市の観光業はどうなってしまうのか、日々考えさせられております。今日は、新しい糸口が見つかるきっかけになればと思い、参加をさせていただきました。

塚本 気仙沼復興協会福祉部の塚本です。気仙沼のすべての仮設住宅を月に1回は周って、住民の皆様の悩みごとを聞き、解決のお手伝いをしています。ちなみに前職は気仙沼のリアス・アーク美術館で勤務していました。現在、美術館も再開しています。気仙沼の歴史や文化が俯瞰できるような展示がありますので、ぜひ足を運んでみてください。

守屋 気仙沼市議会議員で、気仙沼復興協会のサポーターをしています。守屋です。よろしくお願いします。

福留 改めましてこんばんは。東北工業大学の福留です。春まで新潟大学で、中越地震の復興に携わっていました。この機会に意見交換をさせていただければと思っております。

■空間(市街地)ではなく中身(まち)で

福留 では、意見交換会に先立ちまして、復興学会から中林先生と永松先生に、本日の車座トークの話題提供をしていただきたいと思います。

中林 最初に日本災害復興学会が設立された経緯をお話させていただきます。

これまで災害研究では、予防と災害直後の対応が中心となっていました。しかし、これからは復興についても十分に研究をし体系化していく必要があります。そもそも日本の法律体系は、復興について大きな不備があります。現在、各市町で復興計画が作成されていますが、災害対策基本法にも救助法にも「復興計画を作成しなさい」とは明記されていません。そのため、どのくらいの被害を受けたときに復興が問題となり、復興計画を作成する必要があるのか、これまでただ経験の積み重ねによってのみ判断されてきました。このような背景から、学問的に、また法制度的に整備を進めていく必要があるということで、日本災害復興学会が設立されました。

復興というと、思い浮かぶのは、89年前に起きた関東大震災後に展開された帝都復興事業です。この時代における復興の最大の課題は、「空間」でした。この時代は、女性が生涯に産む子ども数は6人ほど。当時の日本は、人口が増加し、国全体も近代化を目指している、いわば発展途上の国でした。ですから、最新の技術で最新の都市計画を実現すれば、地方から都市へと人口が集まってくるだろうという、いわば予定調和的な復興論が成立していたのです。

しかし現代の日本は、少子高齢化によって人口が減少していく時代です。そのとき課題となるのは、空間(市街地)をつくるのではなく、むしろ中身(まち)をどのように復興していくかでしょう。しかし現在、国は、空間をどのようにして戻していくかを重点に事業やお金を投じています。どんなまち、どんな暮らし、どんな生活を実現するかが抜けてしまっているんですね。気仙沼復興協会の皆さんの活動を伺っていると、皆さんの取り組みこそが、この地域の新しい公共の担い手としての役割を担っていらっしゃるのだと思います。このような素晴らしい取り組みを他の地域にも広げて行き、持続可能な社会を再生していくことが求められているのではないでしょうか。

ここで99年に台湾を襲った921大地震の復興の例をご紹介します。台湾では、高齢化の進む農山村地域の復興を、都市との交流を軸に展開しました。これは、いまでいう「農の六次産業化」で、エコツーリズム、グリーンツーリズムなど観光を主軸に、農山村地域を活性化しようという取り組みです。新しい地域での連携、共同の体制をつくり、協働の取り組みで地域を復興させていく。台湾ではこれが実践されているんです。

気仙沼復興協会は一般社団法人と伺いましたが、南三陸町でも3月末に、一般社団法人として「福興町づくり機構」を立ち上げました。わたしはこの団体に副理事長として関わっているのですが、やはり一番大事なのは、産業の復興や職の復興をどのように展開していくかです。いまこのような活動は、それぞれの被災地で芽吹きつつある状況だと思います。広域な被害をもたらした東日本大震災ですが、各被災地が上手に連携することで、1+1が2ではなく、2.5くらいになるのではないかと思っています。

学会としては生まれて10年も経たないため、十分な実績はありませんが、こうした車座トークを通して、いろいろな意見を伺いながら、半歩でも復興に役立てればと思っています。

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