- 2021年07月19日 15:32
危機感は理解できるからこそ~「知的財産推進計画2021」に思うこと(前編)
1/2数日前の主催者の呼びかけで週末に急遽行われた「知的財産推進計画2021」*1の読み合わせ企画。
さすがにその場で読んで即興でコメントするのは荷が重い・・・と思って、直前に一通り目を通してみたのだが、毎年出されていたペーパーとはいえ、自分が政策提言のフロントから離れてからはきっちり目を通していなかったこともあって、あまりに様変わりした本文のテンションに戸惑い、本文と具体的な方向性とのギャップに戸惑い、さらに未だに越えられていないコロナ禍の真っ最中に2年続けて「コロナ後」というサブタイトルを付けてしまう感覚にも戸惑い、結果、その衝撃を押し隠せないまま本番突入、と相成ったために、”やたら愚痴っぽいコメンテーター”の体になってしまったことは、率直にお詫び申し上げたいと思っている*2。
元々「知的財産戦略本部」という組織自体が、世紀の変わり目に官邸の肝入りで設けられたもので、その組織が、本来の所管官庁の枠を飛び越えて「計画」を打ち出すわけだから、その中身が技巧的な立法技術から離れた”骨太な政策”であるべきなのは当然のことだと思うのだが、そうはいっても、自分が一応目を通していた2017年の知的財産推進計画*3までは、データ・AIの知的財産法による保護の話だとか、知財紛争処理システムの話、といったように、一応は立法に向けた議論の道筋が見えるような中身で構成されていたのがこの「計画」であり*4、だからこそ、渉外活動に軸足を置く企業の知財実務家たちも、毎年のカレンダーの中に「推進計画」の公表を組み込んで、その一言一句に注目していた。
それが、2018年くらいから大きく風向きが変わってくる。
それまで知財戦略本部の大きな調整マターだった「柔軟な権利制限規定」の話や「特許訴訟システムの見直し」といった話が一段落し、あるいはそれぞれの所管官庁下での議論に移行したことで、新たな切り口を見出す必要があった、ということなのかもしれないし、旗を振れどなかなか進まない「イノベーション」に痺れを切らした関係者が、より大上段の議論を仕掛けようとしたという面もおそらくはあったのだろう。
特に今年の推進計画に関して言えば、冒頭の
「新型コロナの拡大によって明らかとなったのは、正に日本の「デジタル敗戦」という現実である。」(3頁、強調筆者、以下同じ。)
というフレーズを皮切りに、
「従来から日本企業は優れた技術とアイデアを保有しているとされていたにもかかわらず、その社会実装について見ると、時代の変化のスピードに十分追い付いていない。プロダクトアウトの発想を捨て、進むべき「グリーン」と「デジタル」が実装された社会を実現するために、我が国の技術とアイデアを活用していくことが必要である。」(4頁)
「こうした現状に鑑みると、もはや、日本は「イノベーション後進国」であると言っても過言ではない。日本の産業や経済が生存競争に勝ち残るため、第6期科学技術・イノベーション基本計画に盛り込まれたイノベーションの創出に向けた政策の方向性を踏まえつつ、日本の知財創造・活用活動を喚起する必要がある。」(7頁)
と随所に危機感を滲ませる記述が盛り込まれており、議論に参加している政策担当者、関係者たちの思いは伝わってくる。
ただ、いかにそれが危機感に裏打ちされたものだとしても、「じゃあ、それを『知財』というツールを使ってどう解決するの?」という素朴な疑問に答えられなければ、「知的財産推進計画」という看板を掲げる意味は乏しくなる。
渾身の力を込めて書かれている(ように見える)「事業戦略、経営戦略における知財の活用」だとか、「資本市場にアピールするための知財情報の活用」にしても、事柄自体はもう10年以上も前から言われていることで*5、それでも結局はここまで浸透していないのが現実。
- 企業法務戦士(id:FJneo1994)
- 企業の法務担当者。法律の側面からニュースを分析。



