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【パンデミックと東京五輪】「『今さら引き返せぬ』は致命的な間違い」社会学者や経済学者も五輪中止求める~第7回女性たちの抗議リレー

東京オリンピック・パラリンピックに反対する女性たちの抗議リレー「私たちが止めるしかない東京オリパラ」の第7回が13日夜、行われた。社会学者や経済学者などがリモート参加。「オリパラへの反対や抗議の声がきちんと報道されていない」、「『せっかくやってきたのだから引き返せない』ではなく、勇気ある撤退をして欲しい」などの声があがった。

次回配信は20日20時。福島市では21日からソフトボールの試合が始まる予定だが「反対運動に遅すぎるということはない」と抗議リレーを続ける。

【「民意反映した報道して」】

 富山大学非常勤講師の斉藤正美さん(社会学)は「話したいことは2つです。1つは政府が五輪を利用しようとしていることをわすれないでおきたいということ。五輪の興奮のなかで全ての政治的問題を忘れて総選挙を行って勝ちたいということ。もう1つは、自衛隊も五輪を利用している。マスメディアの皆さんは政府や自衛隊の広報にならないようにがんばってくださいね、ということです」と語った。

 「オリパラへの反対や抗議の声をきちんと報道するのが、民意を反映した公共性のある報道だと思います。日本のなかでそれをやっているのはスポーツ紙くらいでした。一方、海外メディアは抗議の声を大きく取り上げています。理由や背景もきちんと正確に報道しています。日本のメディアは非常に偏っている、民意を反映していない公共性のないメディアだなとしみじみと思いました」

 オリパラの開会式では、航空自衛隊「ブルーインパルス」の展示飛行が予定されている。斉藤さんは自衛隊広報の場になると危惧しているという。

 「オリパラが開催されるとすれば7月23日が五輪開会式。8月24日がパラリンピックの開会式。その日に自衛隊のブルーインパルスが都内上空を飛ぶ予定になっている。自衛隊広報のような報道になるんじゃないかと非常に危惧しています。実は今年4月、初めて富山にブルーインパルスが来て展示飛行をしました。爆弾が落ちるようなすごい音で怖い想いをしました。恐怖を感じるようなものでした。そのときの地元メディアの報道を全部確認しましたが、どれも『コロナ禍で元気をもらえた』、『楽しかった』というものでした。ひとつのテレビ局だけが『戦争で使われなければ良いな』ということを伝えていました」

 「自衛隊はエンターテインメント戦略をしていて、テレビのバラエティ番組にもよく出てきます。エンターテインメント化して親しみを持たせようという戦略。五輪もそれに利用される予定なんです」と斉藤さん。「果たしてメディアが礼賛報道するのかどうか。しっかりと報道してくださいと言いたいです」と発言を締めくくった。

オリパラ開会式で展示飛行する予定の「ブルーインパルス」。富山大学非常勤講師の斉藤正美さんは「自衛隊広報のような礼賛報道になるんじゃないか」と懸念を口にした

【「勇気ある撤退を」】

 英語の「Better late than Never」という言葉を掲げたのは経済学者の中山智香子さん。オリパラ反対運動に遅すぎるということはない、と強調した。

 「遅くてもやらないよりはまし、という意味です。『こんなタイミングになったのだから遅すぎるよね』ではなくて、『遅くてもやらないよりはやった方が良いんだよ』ということを改めて確認したいです」

 なぜ日本は五輪開催を止められないのか。

 「『ここまでやってきたのだから、せっかくやってきたのだから引き返せない』。これが五輪に限らず、日本という国がしばしば致命的な間違いを犯すときにある現象なんです。戦争しかり、原発しかりです。メンツというマッチョなおじさんの発想だけでなく、経済的な発想から言って、巨大な投資をしたのだから回収したい。無観客になるとどれだけ損をするという投資回収という発想。それよりもホストとしての責任を考えるべきです。そもそも(感染拡大の)責任など取れるのでしょうか。首相が辞めても責任を取ることににはなりません。引き返す、勇気ある撤退をする方がずっと良いと思います」

 中山さんは「命と経済は本来、二者択一ではないはず」と指摘する。

 「生存(命)を大事にしたら経済が回って行かない、経済を立てようとすると命や生存が脅かされると。緊急事態下でこのことを問わざるを得ない状況になりました。今や命すら守れない、経済も立たないという状況になり、ビッグイベントに何とか頼ろうとして他の全てを犠牲にするということが起こっています。12日から東京は緊急事態宣言下にありますが、民意が(五輪開催に)ついていっていません。オリパラ中止に向かっていこうよと改めて確認したいです」

 もはや、経済効果など期待できないというのが中山さんの見方だ。

 「無理矢理探せばあるかもしれないですが、そんなに大したものになるはずがないです。感染が拡大してネガティヴなファクターが出てくる方が圧倒的にマイナスになると思います。」

社会学者や経済学者らがオリパラ開催に「NO」を掲げた抗議リレー。経済学者の中山智香子さんは「勇気ある撤退を」と求めた

【排外主義強まる懸念】

 米モンタナ州立大学教員の山口智美さんは、2年前の体験から日本の無責任体制を指摘した。

 「学生を日本に連れてくる授業がありました。オリパラを一つのテーマにし、東京都のオリパラ準備局で担当者の話を聴きました。学生はアジア女性資料センターにも行って勉強してきたので『ホームレスの人はどうなってしまうのですか?』、『LGBTについてはどうなんですか?』などと様々な質問をしました。しかし、回答のほとんどが『担当じゃないので答えられません』でした。学生たちはある意味、日本文化を大変良く学べました。『五輪後に施設はどうなってしまうのですか?』という質問にも『そんな先のことは分かりません』。この無責任体制はいったいなんだろうと印象に残りました。都職員だけでなく、国のトップまでもが無責任。そんな状態が顕著に出ている五輪になっていると思います」

 山口さんはオリパラ開催で排外主義が強まることへの懸念を口にした。

 「最近、赤坂エクセルホテル東急でエレベーターを日本人と外国人とで分けたという話がありました。そういう排外主義が五輪強行でより酷くなるのではないかと危機感を抱いています」

 そう考える背景には、自身が帰国時に接した〝水際対策〟があるという。

 「1カ月前に帰国していわゆる水際対策を通過しましたが、書類をチェックする人やスマホアプリのインストールをチェックする人など、言葉を聴く限りでは外国籍の人であろう人々が多く働いていると思います。恐らくワクチンを接種していないと思います。危険が大きい職場で安い時給で搾取して外国籍の人たちやマイノリティの人たちを使っているという状況はとんでもない。原発労働のあり方と似ているのではないかと思います。五輪をやっている限りは外国人やマイノリティへの差別から抜け出せない。オリパラ反対を訴える時にも、外国人は入って来るなというような排外主義ではない反対運動を模索したいと思います」

(了)

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