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ロック・イン・ジャパン・フェスティバルの中止など

 石破 茂 です。

 来週23日金曜日から東京五輪が開催されますが、世の中は不気味なほどに静かで、五輪開催に向けた高揚感も熱気も全く感じられないような気がするのは私だけでしょうか。

 57年前の1964年(昭和39年)の東京五輪の時、私は鳥取の小学校2年生だったのですが、街中に三波春夫の「東京五輪音頭」が流れ、多くの盆踊りでもこれが踊られ、メインストリートである若桜(わかさ)街道を走る聖火リレーに私たち小学生は動員されて、日の丸の小旗をちぎれんばかりに振ったものでした。

 敗戦後まだ19年、「もはや戦後ではない」と経済白書に記された昭和31年から8年が経ち、高度経済成長期に入ってはいたものの、日本はまだまだ貧しい時代でしたが、人々は一様に明るい未来を信じ、都市にも地方にも希望と活気が満ちていましたし、それは1970年の大阪万博、1972年の札幌冬季五輪まで続いていたように記憶しています。

 あの時と今とでは社会の雰囲気が全く異なるのは、コロナ禍だけが原因ではないのでしょう。

 今回の東京五輪の立候補に当たっては、そのファイルに「この時期の東京は温暖で、アスリートにとって理想的な環境」との記述があり、これを積極的にアピールしたようですが、誰がどう考えても8月の酷暑の東京は「理想的な環境」ではないでしょう。

 これが何故アスリートファーストなのか、疑問を持った人は多くいましたし、この時期が選ばれたのは、本当に理想的な10月には他の国際的スポーツ競技の開催の予定が既に多く入っており、放映権を持つメディアがその時期を嫌ったのがその理由であることを多くの人が知っていたと思われます。

 しかしそれを口にしようものならば「国民的な行事である五輪開催にケチをつけるのか!」と批判され、この時期の開催に多大の利益がかかっている大手新聞やテレビなどのメディアから黙殺・無視されるということになるだろうと、口を噤んでしまった人も多くいたはずです。

 それでも開催決定当時の猪瀬東京都知事が言っていたように「旧来の施設も最大限に活用し、史上もっともお金をかけない」「打ち水や簾など、日本古来のエコの思想・技術で酷暑の大会を乗り切り」「日本人の繊細なホスピタリティを世界の人々に発信する」大会になることを期待して自らを納得させた人も居られたかと思いますが、実際はその思いからは大きくかけ離れたものになってしまいそうで、残念な気持ちが致します。

 オリンピック・パラリンピックを開催するにあたっては、せめて来日したアスリートたちが、嫌な思いをすることなく、一つでも二つでも良い思い出を持って、日本に対する好印象を抱いて帰国してもらいたいと切に願います。

 茨城県ひたちなか市で8月に開催予定であった国内最大の音楽イベント「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル2021」が、県医師会からの要請に十分には応えられないとの理由で急遽中止となった件は、法的にどのように整理すればよいのか、理解に苦しんでおります。

 茨城県は緊急事態宣言から外れており、緊急事態宣言等に伴い中止した公演のキャンセル費用の全額を補助するJ-LOD Live補助金の対象とはなりません。では、発生する損害は任意で中止を決めた主催者がすべて負担することになるのでしょうか。医師会に中止を強制する法的権限はなく、主催者はこれに従う義務も負わないので、法的にはそのような整理になりそうですが、どうにも釈然としません。

 観客を半分に削り、従来よりもステージを大幅に減らして野外で行うフェスティバルを何故開催してはいけないのか、納得できる説明が必要です。

 あまりに思い入れが強いと、それによってなされた決定や行動に対する人々の理解が得られなくなってしまうのは、今回の飲食店に対する金融機関からの働きかけとその撤回の件も同様です。

 経済再生担当大臣は、ご本人が述べた通り、強い危機感でこれを決めたのでしょうが、かつて銀行に勤めていた者として言えば、お客様である飲食店に対して「お宅は規制を順守しておられないようなので融資を引き揚げます」などと言えるはずがありません。

 民間は権力の回し者でも密偵でもないのであって、いかに使命感や危機感に基づくものであってもこれを取り違えてはならないと、自重自戒を込めて強く思ったことでした。

 今週は「理不尽 観光を殺すのは誰か」(岩崎芳太郎著・あさ出版)からいくつかの示唆を受けました。鹿児島商工会議所会頭である著者は、同県最大の観光グループを率いる実業人で、かねてよりその主張には傾聴に値するものが多くありました。保守の立場でありながら、時の政権の政策や姿勢に対して是々非々で臨む主張にこそ、我々は謙虚に学ばなければならないのだと思います。

 東京も梅雨明けし、これからしばらくは暑い日々が続きそうです。子供の頃、梅雨明けと臨海学校がほぼ同時期で、「梅雨明け十日」と言うように、本当に夏らしい安定した天候の中で思い切り山陰海岸を泳ぐのがこの上ない喜びでした。あのような嬉しさをもう一度味わってみたいものだと心より願います。

 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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