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警視庁内で女性の裸を撮影して逮捕された元警部「教祖様」と崇められていた

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裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火です。今回傍聴したのは東京地裁で行われた蜂谷嘉治被告人(63)の裁判です。罪名は特別公務員暴行陵虐というかなり珍しいもの。警視庁本部内で元警部の男が相談に訪れた女性の下着姿を撮影して逮捕されたと報じられた事件です。

被告人は薬物脱却のためのNPO法人を立ち上げ、薬物依存に悩む人達の再犯防止の手助けをしていた人物で、インタビューなどで違法薬物の現状を語るなど、メディア露出も多くありました。そうした活動を知っていたため、去年10月の逮捕を報じるニュースを耳にした時は何かの間違いではないだろうか…と思いましたけどね。

果たして真相は……。

まずは2020年12月25日に行われた初公判。

法廷の入り口には開廷の30分前から14人の行列です。大きく報じられた上に認否を留保しているというニュースの後に続報もなかったので気になっていた人が多かったのでしょう。

傍聴席に着席すると裁判官から次のような説明がありました。

裁判官「東京拘置所で職員がコロナに感染したということで刑務官は白い防護服を着ていますけど、濃厚接触者と認定された人は休んでいまして念のためにそういう処置となっています」

全身白装束でフェイスシールドに不織布マスクをした刑務官2人に連れられて蜂谷被告人が入廷です。

今にして思うと去年の12月の最終週、東京地裁はどの法廷もこんな感じで刑事裁判をやっていました。感染症程度で裁判スケジュールは止まらないのです。

「素っ裸の写真でも撮ってみるか」被害女性へ提案した罰


起訴されたのは、2019年7月16日14時2分〜17時53分の間に被告人が警視庁の応接室で被害女性(40)の上着の中に手を入れて乳房を揉み、服を脱ぐように申し向けて、乳房などを露出した被害女性の裸の写真を撮ったという内容。

罪状認否です。

裁判官「検察官が今朗読した起訴状に何か間違いはありますか?」
被告人「確かに被害女性を撮影したことはありました。しかし前後の行為、言動はありませんでした」
裁判官「弁護人のご意見は?」
弁護人「被告人が申し上げた通りで、本件は陵虐に当たりません」

と否認しました。

これだけだと事件の状況も分かりませんし、そもそもどの部分が罪なのか少し分かりにくいですよね。そのため本題に入る前に刑法195条の中身を。

【特別公務員暴行陵虐罪(刑法195条)裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、7年以下の懲役又は禁錮に処する】
と書いてあります。

余計ややこしくなりましたが、被告人の行為は「暴行又は陵辱若しくは加虐」ではないから無罪というのが弁護人の主張です。

検察官の冒頭陳述によると、被告人は1980年に大学を卒業して警察官になり、警視庁で銃器対策の担当をしていたといいます。2006年には警視庁愛宕署で薬物や拳銃の担当になり、薬物依存者や乱用者を対象としたセミナーを始めるようになったそうです。

池袋署組織犯罪対策課で薬物取り締まりを担当していた2013年には「NO DRUGS」という薬物乱用者やその家族が集まって現状を話し合う会を主宰。ところが、2018年に本件の被害女性とは別の女性とのトラブルがあり、警察官を退職。

2018年4月に再雇用され、薬物乱用者を集めてのグループミーティングなどを行っていたといいます。

一方、被害女性は2015年に被告人主宰のグループミーティングに参加し、定期的に通っていたとのこと。2018年4月から警視庁の応接室で個別指導が行われるようになり、最初は他の人も立ち会っていたのが、いつしか指導するのは被告人だけに。その個別指導の中で被告人は被害女性に肩を揉ませたり、弁当を差し入れさせたり、被害女性の胸を揉むようになっていたらしいのです。

そして犯行数日前の2019年7月。被害女性が薬物使用をほのめかすLINEを被告人に送信すると、犯行当日である7月16日の個別指導中に被告人は被害女性を叱責。そして被告人は「今回の罰は何にする?ダイエットが成功するように素っ裸の写真でも撮ってみるか」と言って被害女性を裸にして写真を撮ったといいます。

そして被害女性は7月19日にも個別指導に参加。7月22日に電話で警察官に被害を打ち明け、警視庁が調査をした後に逮捕に至ったというのが検察官の冒頭陳述になります。

この冒頭陳述を聞く限りは、犯行当日だけではなく以前から被害女性に対して何かが行われていたかのような印象を受ける内容ですよね。個別指導で胸を揉んだとか、ダイエットがどうとか、今回の罰がどうのとか。検察官も飛ばし飛ばし朗読しているのだろうけど、冒頭陳述だけではよく分からない事件です。

被告人が否認しているので、同意していない検察官の証拠が多数。裁判官に証拠を見せることが出来ないこともあって、この日は30分程で閉廷でした。

続いて2021年2月15日に行われた第2回公判。この日は被告人側が同意した証拠が3つだけ朗読されました。男性警察官によると、被告人のNO DRUGSでの活動はマジメなものであったと。そして「7月22日に被害女性と被害女性の夫から電話があり、精神的に参っているようだった」とのこと。被害女性の旦那さんからも警察に対して被害を伝える電話があったみたいです。

この日は10分程で閉廷。傍聴した時間より開廷前に並んでいた時間の方が長いけど、それは仕方ありません。次回公判で被害女性を呼んでの証人尋問が行われることになりました。

蜂谷被告は教祖みたいな存在だった

そして3月31日に行われた第3回公判。

被害女性の証人尋問です。性犯罪の被害者なのでビデオリンク方式で行われました。別室にいる被害女性とテレビ電話で繋ぐやり方で、法廷には被害女性の姿はなく、声だけが聞こえる裁判です。

まずは検察官からの質問。

検察官「被告人を初めて知ったのはいつですか?」
証人「6年くらい前です」
検察官「どんな機会からですか?」
証人「池袋署で…NO DRUGSという蜂谷さんが始めた薬物の再犯防止セミナーみたいなやつです」
検察官「どんな人が参加しているんですか?」
証人「えー…昔クスリで捕まった人やその家族が……自助グループなので」

言葉を選んで慎重に返答するタイプの証人で、質問に対して出来るだけ正確に的確に答えようとしているのが伝わる早口ながら丁寧な話し方です。

検察官「証人が参加するようになったきっかけは何ですか?」
証人「地元で危険ドラッグの件で任意同行されて……警視庁に電話で相談したら紹介されました」
検察官「証人と被告人、2人の関係は?」
証人「関係……?セミナーに参加する側と開催する側」
検察官「それ以外に会ったりする仲でしたか?」
証人「いいえ」
検察官「被告人はどのように接していましたか?」
証人「時には優しく、時には厳しくです」
検察官「証人にとって被告人はどんな存在でしたか?」
証人「難しいんですけど……お父さんとか…教祖様みたいな。いなくなったらイヤな人でした」

被告人を教祖様と崇めていたとは。もちろんNO DRUGSは宗教団体ではないけど、証人にとってはそれくらい絶対的な存在だったんでしょう。

検察官「2018年4月からは警視庁での個別指導に参加していたと。警視庁のどこですか?」
証人「玄関から入って…受付のすぐ隣の部屋です」
検察官「広さは?」
証人「…4畳くらいです」
検察官「部屋には何かありましたか?」
証人「大きめのテーブル…後小さめのテーブル…椅子5個です」
検察官「個別指導で被告人以外に立ち会う人は?」
証人「最初の一回はありましたけど、その後は蜂谷さんだけです」
検察官「個別指導を受ける人は何人いましたか?」
証人「2人の場合もあったし、3人の時もありました」
検察官「個別指導は今まで合計で何回参加しました?」
証人「140回とか……150回とか…です」
検察官「記録だと146回。間違いないですかね?」
証人「はい」

約16ヶ月で146回。単純計算で毎月10回弱行われていたことになります。

検察官「個別指導では何が行われていました?」
証人「ご飯食べたり…何か、ん〜…すごい色々なんですけど……蜂谷さんの肩揉んだりとか…」
検察官「元々は何をするための指導ですか?」
証人「薬物の再犯防止をするためだと思います」
検察官「実際にはご飯をその部屋で食べていた?」
証人「はい…お弁当買ってきて一緒に食べたりとか」
検察官「買ってくるのは?」
証人「私だったり、他の人だったり…」
検察官「お金出すのは?」
証人「私です」
検察官「請求しましたか?」
証人「お世話になってるので……私からいらないって言いました」

食事は被害女性持ちだったみたいです。

検察官「個別指導中、扉は開いてるんですか?」
証人「閉まってます」
検察官「不安に感じることは?」
証人「全くなかったです。蜂谷さんは……そういうこと絶対にやらないと信じていたので」
検察官「そういうことって?」
証人「胸を揉んだり…後は言いづらいですけど…」
検察官「そういうこと、セクハラなどを受けたことはありましたか?」
証人「ありました…胸を揉まれたり……色々あるんですけど…なんて言うか…」
検察官「答えづらいのであれば、紙に書けますか?」
証人「はい」

カサカサカサと鉛筆らしき物で何かを書く音だけがスピーカーから流れる静かな法廷。

検察官「それを①と呼びますけど、①をやれと言われた時はどんな気持ちでした?」
証人「すごく苦しかったですけど……。胸を揉まれてもイヤじゃなかったです」
検察官「イヤじゃなかったのはなぜでしょう?」
証人「蜂谷さんに捨てられたら生きていけないと思っていたからです」
検察官「どういうことですか?」
証人「尊敬していたし、大好きだったので」
検察官「恋愛感情ですかね?」
証人「…うーん…教祖様みたいな…」

再び現れる教祖様。薬物依存から助けてくれる頼りになる人だったのでしょうね。

蜂屋被告から口止めを迫られ、被害女性の心境に変化

検察官「犯行日の7月16日午前9時18分、被告人にLINEで『私には無理です。合法ドラッグに戻ります』と送っていますね。なぜですか?」
証人「蜂谷さんから電話があって、いい加減変われって。私が何も成長しないので…」
検察官「それに対して『合法ドラッグに戻ります』って送った理由は?」
証人「助けてくれると思って…」
検察官「7月12日には『蜂谷さん好きでした、ありがとう』とか『いい主婦になるからね』ってLINEを送っているのは?」
証人「もういいやって感情もあったし…かまって欲しい感情もあったし」
検察官「反応はありましたか?」
証人「電話がありました…いつもみたいにふざけた話をして…。それで1時間リビングを掃除して、その写真を送ってこいと」
検察官「写真は送ったんですか?」
証人「はい。綺麗になった後のリビングの写真を送りました」

部屋を片付けて生活を正すという意味があるのでしょうか。個別指導の時間だけでなく、電話などでも指示を出すことがあったようです。

検察官「それで7月16日の個別指導ですけど、どんな服装でしたか?」
証人「ノースリーブの紺のカットソー、白のタイトスカートにトレンカです」
検察官「お互いが向かい合って椅子に座ったと。被告人は何をしていましたか?」
証人「ん〜…ちょっと休憩取らせて下さい」

思い出しながら喋っているから途切れ途切れなのかと思っていたけど、体調が悪いだけなのかも知れませんね。

ここで一旦15分間の休廷となりました。

そして裁判再開。

検察官「向かい合って座って、被告人は何をしてましたか?」
証人「ケータイでゲームをしていました」
検察官「あなたは何をしてましたか?」
証人「反省文を見てもらうためにゲームが終わるのを待っていました」
検察官「何の反省文ですか?」
証人「合法ドラッグに戻ってやるというLINEが酷かったので…それについてです」
検察官「被告人は?」
証人「ゲームやりながら、読んでいいよって」
検察官「読み終えてからは?」
証人「お説教をしていて…眠そうにしていたので、肩を揉みますかって私から言ったのか蜂谷さんから言ってきたのか…肩を揉みました」
検察官「その時に何か言われましたか?」
証人「今回の罰は何にするかと言っていました…お前の裸でも撮ってみるかと」
検察官「罰?」
証人「良くないことをした時、私のためになる罰があったんです…写経とか…体を動かすとか…」
検察官「裸を撮る理由は何ですか?」
証人「ダイエットの確認だ、と」
検察官「あなたはどうしました?」
証人「断れないのかなと思ってトイレに行きました。脱ぐしかないのかなって…」
検察官「断ろうとは思わなかったんですか?」
証人「断ってしまったら蜂谷さんが相手にしてくれなくなるかな…と」

イヤだけど被告人に不機嫌になられたら困るという板挟み状態。

検察官「トイレから戻ったら被告人は?」
証人「ちっちゃいテーブルと壁の間で…スマホを持って構えていました」
検察官「それで?」
証人「カメラテストって言っていました…私の左側に来て…私の胸を揉んでいました」
検察官「時間はどれくらいですか?」
証人「10分か…15分だと思います」
検察官「その後は?」
証人「脱げ…みたいなことを言われて…服を脱ぎました」
検察官「脱いだ物は?」
証人「カットソーとスカートとトレンカです」
検察官「身に付けていたのは?」
証人「ブラジャーとパンツです」
検察官「あなたが自発的に脱いだのですか?」
証人「それはないです」
検察官「なぜそう言い切れるのですか?」
証人「そもそも写真を撮られるのは大嫌いですし…う〜ん…ん〜、目をつぶって横になってしまってるんですけど…」
検察官「ん?もう一度訊きますね。自分から脱いだはずがないと言い切れる理由は何ですか?」
証人「裸になりたくないので……容姿とか現実を見るのが病的に嫌いで…だから裸の写真とかありえなくて…」

それで前、後ろ、横など被告人の指示通り動いて写真を撮ったという。ただし、撮影の途中から記憶が曖昧だとも述べていました。イヤな体験過ぎたのか、体調が良くなかったからなのか。

検察官「その写真はどうなったのですか?」
証人「蜂谷さんがLINEに裸の写真を送ってきました」
検察官「その写真はどうしましたか?」
証人「全て消去しました」
検察官「なぜですか?」
証人「こんな写真持っていたら怖いので…誰かに見られたら蜂谷さんがマズイんじゃないかと思ったからです」

バレたら教祖様の立場がヤバいと思って自主的に全消去。

検察官「その3日後、7月19日に行った個別指導が最後。なぜ行かなくなったのですか?」
証人「心と体に負担が…。平衡感覚がなくてすぐ転んだり、ちゃんと喋れなくて…」
検察官「思い当たることは?」
証人「7月16日が精神的にすごいダメージで…。ああ、現実だったんだなぁって」

ショック過ぎて後で被害に気付いたみたいです。

検察官「それで警視庁の組織犯罪対策5課に電話をしたと?」
証人「はい…20日か21日の夜中に電話して全て話しました…」
検察官「警察に相談した後、被告人から連絡ありましたか?」
証人「電話が掛かってきて、すごく優しい声で『俺にも家族がいる、部下もいるNO DRUGSのメンバーもいる』って…。ま、結局言わないでくれみたいな…」 

どうやら被告人は口止めするよう迫っていたみたいですね。

検察官「それで消去した裸の写真は復元したと?」
証人「はい…私の弟に全て話して復元してもらいました」
検察官「なぜですか?」
証人「被害届を出すためです」
検察官「すぐに被害届を出そうと思いました?」
証人「思いませんでした。教祖だった蜂谷さんがまだ自分の中にいて、尊敬している自分もいて…コロコロ変わるので…」
検察官「結局、被害届を出すことにしたのはなぜですか?」
証人「蜂谷さんがウソをついていると聞いたからです…全部ひっくり返ってしまって。教祖だと思ってた人がつくようなウソではなかったんで、限界だったんだと思います」

どういうウソを被告人が言っていたのかはハッキリしなかったけど、話の流れから被害女性を傷付ける保身のウソだったのでしょう。

検察官「最後に言いたいことはありますか?」
証人「私の心も殺して…家族も傷付いて…それなのに反省もしないでウソをつい……」

と、ここで泣き出す被害女性。たまらず裁判官が15分の休廷に。

15分後、弁護人からの質問と思いきや、検察官と裁判所職員がバタバタ…。どうやら、被害女性が泣きっぱなしらしい。写真を撮られた辺りの質問で「目をつぶって横になってしまっているんですけど」と答えていたのは現在の状況だったのかも知れませんね。かなり体調も悪そう。

ということで、証人尋問は異例の途中で終わり。再び裁判所に出廷してもらい続きを行うことになりました。

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