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「クリスチャン婚活」から見えてきた世界の結婚観の一断面 - 波瀬邦生

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「クリスチャン婚活アプリ」を使ってみたら……(c)mina6120 / Pixabay

 結婚相手を探すためのオンラインサービスは、「マッチング・サービス」「デーティング・サービス」と呼ばれている。日本ではエウレカ社の提供する「ペアーズ」が最大手だ。かつては「出会い系」などと揶揄まじりの扱いを受けるビジネスだったが、若者の間で抵抗感が薄くなるにつれ利用が拡大した。サイバーエージェントの調査によれば、市場規模は600億円を突破し、2023年には1,000億円、2026年には1,600億を超えると予測される「成長産業」である。世界規模でいえば、エウレカ社の親会社である米Match Group社の提供する「Tinder」などがよく利用されている。

 ここで筆者の属性を明かしておこう。京都大学大学院後期博士課程を満期退学し、現在はキリスト教学に関する博士論文を執筆中の独身中年男性である。いわゆる「高学歴ワーキングプア」だ。複数の非正規雇用の仕事をかけもちしながら辛うじて生活している。

 そんな筆者だが、遡ること4年前の6月、天啓のごとく「婚活せねば!」と思い立った。統計の問題として、母数の大きいグローバルな市場に投入されれば、地球上の何人かは目にとめてくれるのではないか――水の上にパンを投げよ――賢者ソロモン王の語録にある通りだ(コレヘト書11章)。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、いざ尋常に勝負である。

 とはいえ、いざ「グローバル婚活」を始めようにも、何から始めればいいかよくわからない。そこで、まずは英語でクリスチャン専用の婚活サービス「Christian Mingle」「Christian Cafe」など、検索上位に来るマッチング・サービスに片っ端から登録したのである。

「入力必須」だけでも十数項目

 婚活開始にあたり、まず驚いたのは登録項目の多さだ。基礎情報として入力必須の内容だけでも十数項目ある。たとえば、子どもの有無、一人暮らしか否か、喫煙・飲酒の頻度、身長、体形、民族、学歴、職業といった一般の婚活サービスによくある項目に加えて、未婚か再婚なのか(キリスト教では正当な理由なくしての離婚は罪となる)、信仰を持っている教派、現在出席している教派、教会への出席頻度、一緒に祈る友人が欲しいだけなのか、または真剣に結婚相手を探しているのかなどと続く。

 さらに以下のような信仰に関わる質問が補足事項として聞かれている。

• 同性愛は罪ですか?

• 女性のためにドアを開け、荷物を運ぶ男性についてどう思いますか?

• 周囲に信仰を表明していますか?

• 男性が家の主であるべきだと思いますか。

• あなたは信頼し過ぎ/疑い過ぎのどちらですか?

• 飲酒についてどう思いますか?

• 結婚するまでセックスを控えますか?

• 教会での何か役割を担っていますか?

 登録した翌朝、さっそくスマートフォンに3件もの通知が届いた。3人もの女性が筆者に関心を持ったのだ。さすがはグローバル市場である。期待しながらサイトを開いて見てみると、それはケニアのナイロビ在住の女性だった。「ケニアの女性」との恋愛可能性が自分の人生に開けるとは、まさに神が与えてくださった機会かもしれない。

 その後も、数カ月に一度くらい、フィリピンやインドネシア、カザフスタン、エジプト、エルサルバドル、アメリカ、インド、ペルー、マダガスカル、イギリスと、世界各地の女性との二言三言の挨拶や多少のチャットが続いた。一度、最寄駅で会いましょうと言われたこともある。結果、待つこと1時間、指定された場所で立ちすくむ破目になった。

 また別のある日、再び通知が鳴った。筆者はアフリカでは大人気なようで、ザンビア、モザンビーク、南アフリカなどから興味や好意を意味する「ウィンク」やチャットが飛んで来ていた。もはやアフリカへの移住も考えねばなるまい、と思い始めていたが、よく聞いてみると、色が薄く金を持っていれば、誰でもよいのだという。アジア人は「名誉白人」なのだ。

 女神のように美しく聡明なインド女性が連絡をくれたこともあった。修士号を持ち、編集の仕事をしている女性だった。わりと会話も続いたので、これはもはやインドへの移住をも考えねばなるまい、と思っていた矢先に、彼女から「ぜひこれを読んでほしい」と課題図書を言いつけられた。読むのが面倒でしばらく返信に困り放置していたら「もう連絡しないから」とチャットが来た。

 そんなわけで筆者は未だ独身である。

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