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【読書感想】サッカーと独裁者

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サッカーと独裁者 ─ アフリカ13か国の「紛争地帯」を行く

  • 作者: スティーヴブルームフィールド,実川元子
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2011/12/10
  • メディア: 単行本
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出版社からのコメント

《サッカーから見えるアフリカの光と闇》

内戦や貧困、政変が続く一方、経済発展が目覚しく、サッカーの世界的スター選手を輩出し、大陸初のワールドカップを成功させたアフリカ。各国が政治的、社会的に抱える問題が、当地のサッカー事情に反映されているのではないか? 本書はそのような目論見から、ナイロビ駐在の英国人ジャーナリストが、エジプト、スーダン、ソマリア、ルワンダなど13か国を縦断し、激動の情勢と驚愕の真相に迫った、傑作ノンフィクションだ。

アフリカ諸国においては、サッカーが人々に未来への希望を与え、ときには分裂していた国を一つにまとめる力さえあることが、本書を通じて理解できる。サッカーで読み解かれたアフリカは、「暗黒大陸」といった古いイメージと異なり、若い「チーター世代」による新たな一面も見せる。アフリカの政治や社会はたしかに複雑で多様であるが、私たちに理解しがたいものではないし、より親しみが感じられるだろう。

残念ながら、貧困や飢餓に苦しむ人々は多く、紛争はいつ解決されるか予想もつかない。しかし汚職撲滅のために身を挺して戦っている政治家や、サッカー代表チームの強化のために、報酬なしで奮闘している監督の姿は、アフリカ諸国が独裁体制や部族対立を乗り越える可能性を感じさせる。



この「出版社からのコメント」には、「しかし汚職撲滅のために身を挺して戦っている政治家や、サッカー代表チームの強化のために、報酬なしで奮闘している監督の姿は、アフリカ諸国が独裁体制や部族対立を乗り越える可能性を感じさせる」と書かれているのですが……僕がこの「サッカーを通じてみたアフリカ」から感じたのは、そういう「希望」じゃなくて、「この混迷は、そう簡単には収まらないだろうな……」という苦い現状でした。


サッカーを通じて、人気取りをしようとする政治家、まともに集まることすらできない「代表チーム」、酷いコンディションのスタジアム、八百長、文字通りの「代理戦争」になってしまう隣国同士の試合、観客の暴動、選手の年齢詐称、「ドログバのようなサッカー選手になる」ことだけが唯一の希望の子供たち……


アフリカの多くの国は、開発が遅れてしまったために、アメリカを中心とする「先進国」の都合で政権が入れ替わっていくことも多いのです。

酷い独裁者でも、「赤(共産主義者)ではないから」という理由でアメリカに支持され、長期間政権を維持する、なんてことも少なくない。

彼らは、民衆の不満をそらすために「サッカー」を利用する。

おかげで、「重要ではない親善試合の結果」で、監督はどんどんクビになるし、実力的に上回るチーム相手に「勝たないと、罰を受ける」ことになってしまう。

 週末になるとアフリカ全土で人々は、地元のバーや衛星放送が観られる掘立小屋に集まり、英国のサッカーの試合を観戦する。イングランドのプレミアリーグは英国がアフリカに輸出する最大の商品だ。応援しているサッカーチームをたずねたら、アフリカの人々は地元のチームよりも英語のチーム名をあげるだろう。大半はマンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、アーセナルとリヴァプールという四大チームのどれかをあげるにちがいない。だが、生の試合を観戦したことがある人は一人もいない。


アフリカの大部分の国では、国内リーグより、テレビでイギリスのプレミアリーグを観て、贔屓のチームを応援している人が多いそうです。

そりゃ、試合のレベルを考えると、「プレミアリーグのほうが面白い」のは間違いないのでしょうけど。

「まず自国のリーグを応援しながら、海外リーグに憧れる」というのがサッカーファンだと思い込んでいたので、アフリカでの「グローバル化」は、かなり意外な感じでした。

「サッカーの国際試合が、紛争に発展することもある」にもかかわらず、普段、人々が観て応援しているのは、マンチェスター・ユナイテッドやチェルシー。

日本でも「CSで海外サッカーばかり観て、Jリーグに関心の薄いサッカーファン」は少なくないと思うのですが、それでも、「国内リーグのチームのユニフォームは売られておらず、みんなプレミアリーグのシャツを着て応援している」なんて国の話を読むと、ちょっとせつなくなります。

こうして「情報」や「映像」はグローバル化していくのに、現実の格差は、そう簡単には埋まらない。

同じ試合を、スタジアムで観る人もいれば、家の大型テレビでビールを飲みながら観る人もいる。

そして、アフリカで、生命の危機に怯えながら、観ている人もいる。

著者にとっては、プレミアリーグがアフリカの人々とコミュニケーションするための共通の話題にも、なっているんですけどね。


その一方で、同じアフリカでも格差があって、エジプトのように近代化された国もあるのです。

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