- 2021年07月08日 13:22 (配信日時 07月08日 11:15)
「ワクチン一辺倒で大混乱」五輪有観客にこだわる菅首相に向く自民党内の冷たい視線
1/2苦戦というよりも事実上の自民党の敗北
7月4日に投開票された東京都議会議員選挙(定数127)で、自民党は33議席で第1党を奪還したものの、過去2番目に少ない獲得議席数となり、自民党と公明党を合わせて過半数(64議席)を獲得するという目標には届かなかった。自民党に協力した公明党は、候補者全員(23人)を当選させた。それゆえ自民党の責任は重い。
東京都議選から一夜明け、記者団の質問に答える菅義偉首相=2021年7月5日、首相官邸 - 時事通信フォト
一方、地域政党の都民ファーストの会は獲得議席の大幅な減少が予想されたにもかかわらず、踏ん張って31議席を取って第2党の座に就いた。候補者の調整を行った立憲民主党と共産党はともに議席を積み増し、それぞれ15議席と19議席を獲得した。
こうして見ると、苦戦というよりも事実上の自民党の敗北である。都議選から一夜明けた5日午前、菅義偉首相は厳しい表情を見せて「過半数を実現できなかったことは、謙虚に受け止めたい」と記者団に語った。
内閣発足以来、菅首相は注目の与野党対決で負けばかり
都議選は国政選挙の先行指標と注目され、今回の都議選も秋の衆院選の前哨戦として与野党とも国政選挙並みの態勢で臨んだ。しかし、結果を残せなかったため、衆院選への不安が広がっている。
たとえば、2009年の都議選では自民党が48議席から10議席減らし、公明党と合わせても過半数を獲得できなかった。代って第1党として名乗りを上げたのが、34議席から54議席に増やした民主党(当時)だった。この後の衆院選では、民主党(同)が300を超える議席を獲得して大勝し、政権交代を果たした。自民党は野党に転落した。
2013年には前年に政権を奪還した自民党が、都議選で候補者全員を当選させて圧勝し、39議席から59議席を獲得した。これに対し、民主党(同)は43議席から15議席と半分以下に議席を減らした。そして直後の参院選では、自民党が大勝し、「安倍長期政権」の流れを作り上げた。
政界には「選挙で敗北が続くとその恐怖感が伝染する」というジンクスがある。菅政権は今年、山形県知事選(1月24日)、千葉県知事選(3月21日)、静岡知事選(6月20日)といずれも敗北し、4月25日に北海道(不戦敗)と長野県、広島県で行われた衆参3選挙でも全敗している。
菅首相は自身の内閣発足以来、注目された与野党対決の選挙で負けてばかりなのである。
「五輪無観客」を訴えた都民ファーストの会に票が流れた
菅首相はワクチンを武器に新型コロナ対策を徹底し、東京オリンピック・パラリンピックを成功させ、その勢いに乗って自民党総裁選と衆院選に打ち勝ち、首相を続投する野心を抱いている。このまま終わってしまったのでは「つなぎの首相」と揶揄されるだけだからだ。
しかし、今回の都議選では、感染者が増え続けるなかでの五輪開催に対し、東京都民が不安を抱き、「五輪無観客」を訴えた都民ファーストの会に票が流れた。「五輪中止」を求めた立憲民主党と共産党も獲得票を伸ばした。
都議選敗北の結果を受け、自民党内からも「五輪無観客」を求める声が強く出てきた。自民党幹部には「五輪開催中はワクチン接種の効果で高齢者の重症患者が減り、病床の逼迫は避けられる」という楽観視する向きもあるが、国民の大半は感染者数の増大に一喜一憂している。これにはメディアの責任も大きいが、残念ながらそれが現状だ。
それに現状では、国民の15%しか2回の接種は終わっておらず、いわゆる集団免疫は期待できない。しかも接種をめぐっては「職域接種」に予想を上回る申請が殺到して受付停止となるなど混乱が続いている。
自民党や公明党からも「無観客」を求める声が出ている
菅首相はこの難局をどう乗り切るつもりなのか。菅首相は五輪の「有観客」にこだわっている。いまのところ、収容人数の50%が5000人以上となる大規模会場は無観客とし、それ以外は観客を入れる方針だという。これに対し、自民党や公明党からも「無観客」を求める声が出ている。菅首相には、自身の鼎の軽重が大きく問われていることを自覚してほしい。
※写真はイメージです - iStock.comTom-Kichi
菅首相はワクチン接種の大号令で新型コロナに打ち勝とうと懸命だ。これまでの記者会見での発言にも「勝つ」という言葉が何度も出てきた。しかし、ウイルスに勝つというのは人間の思い上がりに過ぎない。ウイルスなどの病原体に対しては、正面から戦うのではなく、ワクチンや治療薬を使って感染を巧みにコントロールする必要がある。
ウイルスはしたたかだ。人間の思考が及ばない動きをする。ワクチンを駆使してこの地球上から根絶できた感染症は、天然痘(疱瘡、痘瘡)ぐらいである。大半の感染症は根絶できないと考えるべきだ。
菅首相が五輪に失敗すれば、自民党は衆院選に敗れる。そうなれば立憲民主党など旧民主党勢力の思うつぼである。10年前の東日本大震災や福島原発事故での旧民主党政権の大混乱を思うと、立憲民主党などの野党に政権を与えてはならない、と沙鴎一歩は考える。
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