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都議選を振り返って(武蔵野市選挙区から)

 7月4日に投開票のあった東京都議会議員選挙。定数1名の武蔵野市選挙区では五十嵐えりさんの圧勝という結果だった。しかし、政党として考えると不安要素を含んでいる。


■候補者の力

 20時に投票が締め切られ、NHKの特番が始まり、すぐに当確が五十嵐えりさんに出された。選挙期間中の各種データを見る立場であり相応の手ごたえを感じてはいたが、ここまで早く当確が出るとは驚きだった。

 これは候補者のストーリーに多くの人、それも、立憲民主党支持者以外にも支援が広がったことが要因だろう。他党、無所属の議員の支援をいただいたことは大きな力になったが、それだけではなく、「うちの子どもが不登校で」「昔トラック運転手をやっていた」「いじめを受けた経験がある」など自身の経験から話しかけられることがあり、これまでに政治に関心がなかったような人から注目されたことが、今回の票へと結びついたと考えられる。候補者の力だといえる。
 他の選挙区でも、政党への風よりも候補者の力が結果に結びついているところが多い。

■自民は逆風だけか

 一方で憂慮しなくてはならないは、既成政党への信頼だ。

 マスコミでは、都議会第一党にはなったが自民は低調、立憲民主とは堅調と伝えられている。
 確かに武蔵野市選挙区だけで見ると、自民党候補者が得た得票数は、前々回、その前よりも減らしている前回とほぼ同じ票数だ。前回は公明党の推薦がなく、今回は直前とはいえ推薦があったのにも関わらず、ほぼ同じ票ということは実質的にかなり減っていることを意味している。

 このあたりの分析は、部外者には分からないが気になるところだ。街頭演説や事前のチラシを見る限りでは、候補者ではなく、その父親の選挙のような印象を受けてしまい誰の選挙か分からない印象を持った。自民党への逆風よりも、この影響はなかったのかも聞いてみたい。

■都ファは無党派からの支持

 自民に対して、前評判では勢いがなくなったと報じられていた都民ファーストが善戦する結果となった。武蔵野市選挙区では、自民候補を、わずかとはいえ上回ったことは、その象徴的な結果と思えてしまう。

 朝日新聞が無党派の投票先を調査したところ、『都民ファが25%と最も多かったが、前回の35%より減らした。共産は16%、自民15%、立憲15%だった。立憲は、前回の民進の10%を上回ったものの、共産や自民とほぼ同じだった』と報じている。

 投票率が前回よりも大きく減り、投票総数は7,035票減っているので一概に比較できないが、無党派の票がかなり鈴木候補に流れ、小池知事の人気も加わって今回の票に結びつたように思える。
 同じく朝日新聞の調査では、小池知事支持者層の投票先は、『都民ファ31%、自民27%』と報じているが、小池支持票が武蔵野市では自民には流れなかったのかもしれない。特定の組織もなく国政の基礎票もないなかでのこの得票数は、大きな意味を持ちそうだ。

■立民の課題

 一方で立憲民主党はどうか。武蔵野市選挙区では早々と当確を出せたが、他の選挙区では、想定した程の議席は得られなかった。堅調というより、伸び悩みと言ったほうがしっくりくる。

 その要因を考えると、上記の無党派からの支持が大きく流れなかったと思えてならない。自民は嫌だけど、立憲も嫌だという有権者の思いを受け止められていない現実がここにある。さらに既存の政治、政党は信頼できないという思いも受け止めきれていないから支持率が上がらないではないか。

 立憲民主党の議員数は、7議席から15議席まで伸ばしたとはいえ、共産党に続く5番目だ。政権交代を目指すのであれば、都議会第一党、少なくとも対抗できる勢力になることが必要だ。そのためには、他党との協力を得るだけでなく無党派からの支持拡大が最重要となる。さらに力を持つ候補者の育成も必要。このことが明確になった都議選と思えてならない。

●過去の得票数(武蔵野市選挙管理委員会から

▼平成3年(投票総数58,494)
1 五十嵐えり 立憲民主党 26,878
2 鈴木くにかず 都民ファーストの会 14,751
3 土屋ゆう子 自由民主党 14,706
4 遠藤ふみあき テレビ改革党 1,229

▼平成29年(投票総数65,529)
1 鈴木くにかず 都民ファーストの会 27,515
2 松下玲子 民進党 22,493
3 島崎よしじ 自由民主党 14,443

▼平成25年(投票総数50,586)
1 島崎よしじ 自由民主党 22,261
2 松下玲子 民主党 21,487
3 小川明弘 日本共産党 5,895

▼平成21年 (投票総数64,036)
1 松下 玲子 民主 35,581
2 オミノ 安弘 自民 21,707
3 本間 まさよ 共産 5,623
4 甘利 しんじ 幸福実現 396

【参考】
朝日新聞 無党派層の投票先、割れる 都民ファ25%・共産16%・自民15%・立憲15% 都議選出口調査(2021年7月5日)

※写真
上:街頭演説。誰も関心を寄せていない頃
中:不登校支援をしている民間団体でヒアリング。都政が目を向けていない現実を知る。このような政治が届いていない人たちへの支援強化がこれから求められる
下:当確直後の選挙事務所で


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