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映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』田中圭が演じる西方仁也さんが明かす長野五輪の金メダル秘話

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©2021映画「ヒノマルソウル」製作委員会

1998年の長野オリンピック、日本中を沸かせたスキージャンプ団体の金メダル。その陰で活躍した西方仁也さんら25人のテストジャンパーの知られざる物語を描いた映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』が6月18日から公開されている。

同作で田中圭が演じる西方さんは、94年のリレハンメルオリンピックには日本代表として参加するも、ケガの影響もあり長野オリンピックには落選。テストジャンパーとして日本選手を支えた。西方さんに当時の思いや五輪の重みについて聞いた。

『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』で描かれたテストジャンパーたちの物語

ーご自身が主人公として描かれる『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』を見た、率直な感想を教えてください

長野オリンピックは、選手、テストジャンパー、見守る協会のスタッフ・役員の全員が1つにまとまって団体戦で金メダルが取れた大会です。団体戦のメンバー自体は4名ですが、その4名に金メダルを獲るのにどのくらいの人が関わり、努力してきたか、たくさんの人がいてメダルを獲得できたってことを、みんなで分かち合えたのがこの作品だということですよね。

ーリレハンメル五輪では結果を残して、次の長野大会こそ、という思いは強かったと思いますが、五輪の特別さというのは…

いや、リレハンメルオリンピックは団体では銀メダルだっただけで、個人戦では8位でしたから。僕はもっと頑張りたかったし、長野への思いは大きかったですよね。「絶対出たいな」という思いはあったし、出る自信もあったけど、一方で「4年後か、ケガせずに出場できるかな」という不安もあって。結果的にケガをして諦めることになったんですけど、『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』で描かれている裏話があって、それが20年以上経ってから映画化してもらえたことは嬉しいです。

ー団体戦の4人だけでなく「全員で獲った」という言葉は印象的です

選手たちはそのことをわかっていて、自分たちだけではなくテストジャンパーがいたから獲れたことと思っているんじゃないでしょうか。団体戦の日、セレモニーがあって選手たちはそこに顔を出すんですけど、終わった後に斎藤(浩哉)くんと岡部(孝信)くんがテストジャンパーの宿に金メダルを見せに来てくれた、っていうこともありました。

僕は前のリレハンメルオリンピックは選手として出場しましたが、長野ではテストジャンパーで参加してくれって言われて。内心、「テストジャンパーなんてやっても面白くないよ」と思いつつも、2週間後には次の大会があったので調整としても参加しようと。ただメンバーの中にはトップ選手から高校生までいろんな人がいて、2週間を通してそんな集められた人が少しずついい形になって、団体戦の時にすごい天気が悪くなって重要な役割を与えられたっていうドラマですよね。

©2021映画「ヒノマルソウル」製作委員会

「自分たちがいて金メダルが獲れたんだぞ」と誇らしげなジャンパーたち

ー長野五輪に選手として参加できなかったことを振り返ってみて、どんな風に捉えていますか

長野の前の年の夏にケガをして、12月のシーズンインに間に合わなかった時点でダメだなと思っていました。その後に違う病院に行って出会った先生に原因を突き止めてもらって、完治したんですけど。もっと早く行ければ良かったな、という悔しさもあって。そんな体験があるので、ケガした後輩には「ちゃんと病院に行きなさい」「いろんなところで診てもらった方がいいよ」って言っています。

そんな悔しい思いをして、国内戦で調整してテストジャンパーとして長野オリンピックに参加できたという流れですよね。ジャンプの時にスタートに座っていると、各国の選手が来るんです。顔を見ると知っている選手も多くて、「前のオリンピックに出場した選手がテストジャンパーをやっているんだな」って思われている気がして、すごく屈辱的じゃないですか。「俺だって飛んだらお前たちには負けないからな」って思っても、そんな時こそ出番がない、という。

©2021映画「ヒノマルソウル」製作委員会

―なるほど。映画でも描かれているように、団体戦は天候悪化で一時中断し、競技が続行できなければ1本目での順位で終了することになっていました。

「テストジャンパー25人がジャンプ成功できれば競技続行」という条件でのテストジャンプはどのようなものでしたか?

団体戦の時だけが天候が悪くて、関係者全員のどうにかしたいっていう思いや、テストジャンパーの思いが重なって生まれたドラマなんだろうなと。

プレッシャーもありましたよね。誰かが転んだらそこで仕切り直しになって、続けられない可能性もあった。実は25人が飛んだ後には天候が回復することが予測できていて、そこまで繋げたいって裏話があったそうなんですけど。

ーそういう様々な関係者の思いや、テストジャンパーの飛行があの金メダルに繋がったんですね

個人的には「悔しいな」「いいな」と思います。だけど、あの苦労の中で獲り得た金メダルは僕らの貢献もあったのですごく嬉しかったですね。最後にテストジャンパー全員で撮った写真があるんですけど、みんないい顔してるんです。みんな力があったし、「自分たちがいて金メダルが獲れたんだぞ」っていうような誇らしげな顔つきをしていました。

共同通信社

ー天候にも左右されるスキージャンプですが、選手としての難しさはどんなところにあるんでしょうか

やっぱり飛ぼうと思っても飛ばないんです。ゴルフと一緒で、飛ばそうと思うと力が入ってしまって飛ばない。右に曲がる、左に曲がる。頭を叩く。ジャンプも毎回同じことをやろうとしているのに、少しずつ変わってるんです。

どれくらい正確に飛べるようにするかがジャンプで、選手によってタイプは違うんですけど、僕は3本飛んで1本目が練習で2本で成果を出すといったイメージを持っていました。

―作品で描かれている、原田雅彦選手との関係がとても良いなと思いました

ずっと長い間ライバルとしてやってきて、リレハンメルでは団体銀で終わって、個人でもお互い金は獲れなかった。なので、長野では何としても金、と臨むつもりだったんですけど、僕は調子が良かった年にケガをして、原田くんがそのシーズンは調子が悪かったけど間に合わせて。結果的には僕はテストジャンパーとして参加して、天候の影響もあって表と裏で「共同作業」のような形で金メダルが獲れたと思っています。

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