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裁判官から見た法曹人口増大と法曹養成制度改革〜その2

(昨日の続きです)

(意見その3)

法科大学院と合格者増加による修習生のレベルの格差の大きさには、驚きより不安を覚える。「競争させれば良いものだけが残る」という実証されていない幻想だけで運営されているとしか思えない。

(坂野のコメント)

現役裁判官の御意見です。

法科大学院制度と合格者増により、優秀な志願者が増えてその結果優秀な修習生が増えてくれたら良かったのですが、「(レベルの格差の大きさに)不安を覚える」と書かれていることから、裁判官から見てもこれは問題だと思うほどレベルの低い司法修習生が相当程度裁判修習にきていることが窺えます。

従来の500人よりも4倍に増加された合格者+法科大学院制度なのに、現場の実務家から見て問題があると思わざるを得ないレベルの司法修習生が(不安を覚えるほど)存在するということは、法科大学院制度の失敗を端的に示しているように思います。

このことだけからも、司法試験合格者を増やせば法曹の人気が回復して優秀な人材が集まるはずだという法科大学院関係者の根拠レスな主張が、妄想レベルの誤りであることは明白でしょう。

また自由競争至上主義を幻想である、と一刀両断しているところも、いまだ幻想に包まれ目が覚めない学者の方々よりも、よほど現実をきちんと見ておられる方なのだなと感じます。

(意見その4)

毎期修習生が就職困難に直面している。地方では地元で就職しない限り大都市部での就職は圧倒的に不利である。司法改革の最大の問題点は、無計画で急激な法曹人口増大にあることは明らかである。

(坂野のコメント)

司法修習生の就職難は極めて深刻であり、一括登録時に司法修習生の約1/4が登録できませんでした。その後1月に登録された方もそこそこいらっしゃいますが、それでも多くの司法修習生が登録せず(できず)にいるようです。

そもそも、司法制度改革審議会では、何の根拠もなく、今後は、法的問題が多様化・高度化し多くの問題が生じることが見込まれる、ということを大前提に司法制度改革を組み立てていったようです。しかし、裁判所データブックを見ても、その見込みは誤りで会ったことは明らかになっています。大阪弁護士会でも、知的財産問題や医療過誤などの専門相談制度を設けており、法的問題が多様化・高度化し多くの専門的な法的需要が生じているのであれば、専門相談は大賑わいとなるはずですが、現実には、一般相談よりはるかに少ない相談しかないのが現状です。さらにこれから日本は少子化に向かいます。法的問題が今までの2倍・3倍に増えるとはとても思えません。

それにも関わらず、司法制度改革審議会でそう決まったのだからと、前提の狂った計画を遂行し続けるのは、賢き者の取る途ではないでしょう。素直に、見通しの誤りを認めて軌道修正すべきです。

(続く)

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