- 2021年07月02日 20:17
電流によるアニサキス殺虫に成功 熊大と福岡の水産加工会社らが新技術
1/2巨大な電気エネルギーを利用する「パルスパワー」を使って魚身の内部にいる寄生虫アニサキスを殺虫する新技術を、熊本大学と福岡市の水産加工会社ジャパンシーフーズらの共同研究グループが開発した。
熊本大学の浪平隆男准教授とジャパンシーフーズの井上陽一社長は2日、オンラインで報道関係者など向けの発表会を開き、「冷凍・加熱以外でアニサキスの殺虫を可能とする世界初の技術」と説明。
「刺身の鮮度を保ったまま食中毒被害を防ぐことが可能になる」と力を込めた。
予防の手段は冷凍か加熱のみ

アニサキスは寄生虫(線虫)の一種で、幼虫はサバやアジ、サンマ、イカなどの魚介類に寄生する。寄生している魚が死亡すると内臓から筋肉(魚の身)に移動。これらを生で食べてしまった場合、食中毒が引き起こされる。
予防のためには−20℃で24時間以上の冷凍、もしくは70℃以上、または60℃で1分の加熱による殺虫を行う必要がある。
刺身などの生食の場合、冷凍による殺虫を行うと品質が低下。義務付けられている「解凍」の表示により、客の買い控えにつながるケースもあるという。
アジやサバの業務用刺身の製造販売を行うジャパンシーフーズでは、ブラックライトを利用した目視による除去も行っているが、完全な除去は不可能であり、大量生産には不向きであるという課題があったという。
アニサキス食中毒の報告件数増加で刺身の売り上げが減少
厚生労働省や内閣府食品安全委員会によると、2007年には6人だったアニサキスによる食中毒の患者数は、2020年には396人と増加傾向にある。
ジャパンシーフーズの井上社長は「アニサキスの認知拡大によって報告件数が増加した結果、刺身が敬遠され、売り上げが減少している」と説明する。
また、飲食店や魚介類販売店が提供したものが原因でアニサキス食中毒が発生した場合、食品衛生法に基づき、営業停止などの行政処分が取られることもある。
こうした背景から水産業界の大きな課題となっているアニサキス。「日本の伝統文化である刺身が全て一度冷凍したものになってしまう」と危機感を抱いた井上社長は魚の品質を低下させずに、アニサキスを殺虫する手段の開発を進めてきた。
瞬間的な超巨大な電流「パルスパワー」に着目

同社が着目したのは、熊本大学産業ナノマテリアル研究所が研究していた「パルスパワー」だ。
同研究所の浪平准教授によると、パルスパワーとは瞬間的ではあるが繰り返し得られる非常に巨大な電力のこと。
日常生活で使用されている直流や交流といった電気の流れ方では、長時間使用することができるが、電力は低い。一方、パルスパワーは電気を圧縮することで、メガワットを超える巨大な電力をマイクロ〜ナノ秒レベルで瞬間的かつ繰り返し得ることができる。
浪平准教授らはパルスパワーを「第3の電気エネルギー利用形態」と位置づけ、産業実用化を目指し研究。「今まで電気エネルギーができなかったことができるようになる」と説明する。
ジャパンシーフーズは2017年度に熊本大学と共同研究契約を締結。共同研究グループは翌18年度に経済産業省の「戦略的基盤技術高度化支援事業」に採択され、助成を受けながらパルスパワーの技術を応用したアニサキス殺虫装置の開発を進めた。
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