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宇宙ビジネスに続々参戦 IT大手企業が「宇宙プラットフォーマー」を目指し熾烈な覇権争い

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世界の富豪による「宇宙投資」が盛んに

宇宙投資に拍車がかかっている。2020年のベンチャーキャピタル(VC)の宇宙投資は1兆円に近づき、前年の約6300億円を大きく上回った。レイターステージへの大型投資が特色であり、コロナ禍においても勢いは衰えていない。

グーグルが2014年に実施した小型衛星を用いた画像サービスを提供するスカイボックス社買収、2015年にイーロン・マスク氏が率いるスペースXがインターネットブロードバンド衛星「スターリンク」への投資がトリガーとなり、VCの宇宙投資は2015年に2200億円に跳ね上がり、以降伸び続けている。

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2015年は英国の衛星通信企業であるワンウェブ社が、550億円の資金調達をした年でもあった。

宇宙ベンチャーにとってM&Aは、次の成長を見越した投資の出口であり、2020年は初めて20件を超えるなど顕著な増加傾向が示されている。さらに、昨年後半からはSPAC(特別買収目的会社)で上場を目指すベンチャー企業が次々と出てきている。

今年4月には、スマートフォンに直接接続できる衛星モバイル事業を展開するASTサイエンス社が、宇宙旅行ビジネスを手掛けるヴァージンギャラクティック社に続き米国で2番目の上場企業となった。

さらに、英国の量子暗号衛星企業のアーキット社がSPACでの上場を目指すなど、宇宙ベンチャーのSPACは米国外にも出てきている。

宇宙への投資は、2000年にアマゾンのジェフ・ベゾス氏が宇宙産業に参入したことに始まり、現在ではイーロン・マスク氏やビル・ゲイツ氏などが参入。現在では、フォーブス誌にランキングされる資産1000億円以上の世界のビリオネア約3000人のうち、20人以上が宇宙に投資している。

日本では、ソフトバンクの孫正義氏がワンウェブ社に、楽天の三木谷浩史氏がASTサイエンス社に投資し、スタートトゥデイの前澤友作氏が月周回旅行をするためにスペースXのスターシップをチャーター購入している。

IT大手企業も参入「宇宙プラットフォーマー」の熾烈な覇権争い

ビリオネアの宇宙投資とともに、IT巨大企業の宇宙投資も2000年以降、本格的に始まってきた。

昨年は、世界の小型衛星の打ち上げが初めて年間1000衛星を超えた。スペースXは脅威のスピードでスターリンクを打ち上げ続け、現在の打ち上げ総数は各社合計で1700衛星以上となった。

今後は、すでに200衛星以上を打ち上げているワンウェブ社や、アマゾンの衛星インターネット事業「プロジェクト・カイパ―」が進行することによって、多数衛星による“通信メガコンステレーション”が構築される見通しだ。

Getty Images

宇宙開発に勤しむ各社は、携帯電話など従来の地上ネットワークでは接続が困難な地域に、高速で信頼性の高いブロードバンドの接続を提供することで、全地球のコネクティビティを実現しようとしている。

スペースXは12000衛星、ワンウェブは648衛星、アマゾンは3236衛星を打ち上げるスケールの大きな事業を計画しており、スペースXは段階的にではあるがサービス提供をすでに始めている。

また、宇宙を舞台にグーグル、マイクロソフト、アマゾンなどIT大手企業の競争も加熱している。

グーグルは今年5月、スペースXのスターリンク向けにクラウドサービスを提供する契約を締結した。

スペースXはスターリンクの地上局をグーグルのデータセンターに設置し、グーグルクラウドを通じて、インターネット接続、クラウドベースのインフラ、アプリケーションの利用といったサービスを法人顧客向けに開始する。

マイクロソフトも昨年、スペースXのスターリンクのネットワークを自社のクラウドサービス「Azure(アジュール)」に接続する計画を発表している。

また、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、2018年からすでに衛星を活用するサービス「AWSグランドステーション」を提供している。今後、人工衛星カイパ―を用いたサービスでAWSを強化していくようだ。

衛星通信事業への参画による「衛星プラットフォーマー」を目指したIT大手の取り組みは、米国企業のみならず中国のテンセントやアリババ、韓国のハンファなど米国外でも巨大なエコシステムを構築しつつある。

宇宙旅行や衛星データ利用で新たな市場が創出される

ジェフ・ベゾス氏は2000年に、「宇宙に何百万人が住んで働く」という構想を掲げ宇宙開発に参入した。

イーロン・マスクはその2年後、2002年に「人類は複数惑星の住人になる」ことを目指し宇宙開発に参入して以来、火星居住という壮大なビジョンの実現に向けて挑戦を続けている。

さらに昨年、スペースXの有人宇宙船クルードラゴンが就航したことで、政府主導による宇宙飛行士ミッションのみならず、今後は宇宙観光、映画撮影、チャリティなど民間宇宙飛行ミッションが実施されていくだろう。

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クルードラゴン4機をチャーター契約して、来年初頭から民間の宇宙飛行士を次々と送る計画を進めるアクシオンスペース社は、NASAとの契約のもと2024年に国際宇宙ステーションに商業モジュールを接続、さらに2028年を目標に独立した商業宇宙ステーションを建設することを発表している。

さらに、ヴァージンギャラクティック社やブルーオリジン社は、サブオービタル(準軌道)宇宙旅行を計画しており、こちらも近日サービス提供が始まる。

ブルーオリジン社による初の有人飛行は、今年7月に予定されている。初号機の1席はオークションで販売されたが、ジェフ・ベゾス氏も兄弟で搭乗することが発表されたこともあり約30億円で落札されたことが話題を集めている。

こうした動きは、商業宇宙飛行の始まりということができ、「宇宙旅行」という人類の夢をかなえる新しい市場が今度拡大していくだろう。

一方、小型衛星は私たちの日常における社会インフラになっている。複数の小型衛星を連結させ「衛星コンステレーション」を構築することで、膨大な地球観測データが取得できる。

衛星で取得した宇宙ベースのビッグデータは、AIの活用や地上の多様な情報と結びつき、第一次産業、自動走行、インフラ管理、海上状況把握、地盤変動モニタリング、遠隔監視、災害対策など、さまざまな産業において新たなソリューションを生み出していくだろう。

そして、価値あるビジネスの創出、地球のデジタル化、スマート化に貢献し、デジタルを活用した従来型事業を変革する「DX」や、「データエコノミ―」の拡大を促進していく。

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