- 2021年06月28日 21:34
我慢するのが好きな日本人に、「楽しむ」という発想を持ってほしい -「賢人論。」第141回(後編)樺沢紫苑氏
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みんなの介護 幸福ということで考えると、先生のYouTubeチャンネルで、アメリカでは高齢者の幸福度が高いというデータがあることを紹介されていました。その背景についてご説明いただけますか。
樺沢 幸福度と年齢を調べたデータを見てみましょう。アメリカなどの諸外国は、年齢とともに幸福度がどんどん高まっていきます。だからリタイアメントしたあとの70歳ぐらいの人たちの幸福度が非常に高いんです。日本は35~44歳ぐらいがピークで、幸福度は年を取れば取るほど下がっていくんです。
実際にアメリカでは、リタイアメントすると、キャンピングカーみたいなのを買ってアメリカ中を旅しながら悠々自適に楽しんでいる高齢者がたくさんいるんです。だから、リタイアメントはむしろ楽しみであるというのがアメリカ人の捉え方ですね。「忙しくてできなかったことができる」と、ご高齢の人ほど人生を謳歌するわけです。
日本人は我慢するのが好きで、楽しむという発想がないんですよね。リタイアメントして時間がたっぷりあるわけですから、習い事など、何か今までやりたかったことに取り組んでいくことをしないと、毎日普通に生活しているだけだとつまらないし、幸福度は上がらないんです。年を取っても、やりたいことをやっていいんですよ。
みんなの介護 日本人の高齢者の方で、すごく楽しそうに意気揚々と暮らされている方ってそこまで多くないと思います。それは例えば、アメリカと比較してどのような意識の違いがあってそういった結果になってしまっているのでしょうか?そこから脱却するために必要な要素には何がありますか?
樺沢 趣味に関して言えば、65歳でリタイアしてそこから何か始めても遅いんですよね。なぜなら脳というのは、高齢になると新しいことを吸収するのがものすごく大変なんです。逆に若いときにやっていたものだとすぐに記憶が復活します。ですので、元気なうちに趣味やスポーツなどの楽しみを見つけてほしいですね。
『精神科医が見つけた 3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法』の一番最後の章に「遊ぶ」というのを入れました。普段から皆さん「遊ぶ」というのが下手なんですよね。好奇心さえあれば、お金をかけずに遊ぶ方法もたくさんあります。例えば、本を読むのも、図書館で借りてくれば、ただで読めるわけですし。老人ホームだと、本がたくさん置いてあるはずです。
あと最近だとネット配信で、動画や映画が安く見られます。またB級グルメのお取り寄せみたいなのでも、何千円かで結構楽しめます。「お金がないから楽しめません」みたいなことをおっしゃる人がいるんだけども、それは楽しみ方とか遊び方というのを知らないんですね。もっと皆さん遊びというものに対して貪欲になってほしいというのが私からのメッセージです。
高齢者に限らず、若い人もゲームやテレビ、スマホばかりをやってないで、スキルを磨くことも大切です。能動的娯楽と受動的娯楽というのを『精神科医が見つけた 3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法』にも書いています。スキルアップが伴う能動的娯楽というのが脳トレになるんですね。将棋や囲碁、楽器の演奏あるいはスポーツなどはものすごく脳にいい娯楽なんですね。
ゲームやテレビというのは、ただ座っていて見るだけ、やるだけなので、受け身の娯楽です。これは脳をあまり活性化させない。時間つぶしの娯楽ではない、能動的な娯楽というものを、若いうちから楽しめるようになっていってほしいなと思います。
みんなの介護 我慢が好きな日本人というところでは、一つの会社に縛られて定年まで生きるというこれまで日本人に多かった生き方がコロナ禍で変わりつつあります。そのあたり先生はどのようにお感じでしょうか。
樺沢 コロナ禍で自粛の必要性が出てきたことから、自由な時間がものすごく増えた人が多いと思います。そこで大切になるのが時間術です。今までの人生の中でやりたかったことや時間がないからできなかったことは必ず誰でもあると思いますので、せっかくのコロナ禍をそういうことができるチャンスととらえましょうということです。時間の使い方で人生が変わります。例えば何かを学ぶ、新しいことを始める、ということをしない限りは、今までと同じ人生が続いていくだけです。
みんなの介護 ちなみに、高齢者の介護問題に向き合う人におすすめの映画やアニメなどの作品はありますか?
樺沢 そうですね。『長いお別れ』という作品がおすすめです。山崎努が主演の映画で認知症が少しずつひどくなってくるお話です。もともと父親と疎遠だった娘たちが、父が認知症になってから、家族というものがむしろ結集していきます。認知症というと、ものすごくネガティブなイメージを持ちますが、この映画の中では、病気があったおかげで家族が協力するようになってマイナスの面だけではないですよということを描いています。



